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宇多田ヒカル「Laughter in the Dark Tour 2018」

他の人がどうなのか 僕は知らないけど
僕の言葉の裏に他意などないよ
宇多田ヒカル / Play A Love Song


ちいさな頃からずっと敬愛している宇多田ヒカルさんのライブへ行ってきた。

1曲目は「あなた」。

ライブならではの情感というのはたしかにあると、思っていた以上に跳ねて滑るドラムの音を聴きながら思った。「SAKURAドロップス」のアウトロは桜が散っていく様子が目に浮かんだし、「真夏の通り雨」では夕立ちのあとに立ち昇る熱く湿った空気を感じた。

「道」を聴いていたら「亡くなった人は、様々なはたらきになって自分の前に立ち現われる」というむかし学校で教えてもらったことを思い出した。イッツアロンリーロード、バットアイムノットアローン。色んな感情が生まれて、言葉になる前に消えて、私は隣の人に気づかれないよう泣いた。

活動休止後の曲は、私個人の生活に重なり、迫ってくる。単語ひとつひとつは平易なものなのにとても美しい。その言葉、つながり。一つ一つこぼすものかと聴いた。

一方、活動休止前の曲はひとりひとりのもつ物語性をわきあがらせる。と思う。みたことのない風景をバックに自分の知らない誰かがそこで物語を展開していく感じ。「Prisoner Of Love」なんか聴いた勢いだけで物語一つできてしまいそうなぐらい。ああこういうところが好きだったと思い出した。

この曲を聴いていた頃、毎日会っていたあの子たちとはもう気軽に話せる仲ではなくなってしまったのに、ヒカルさんの曲は簡単に私をあの頃に引き戻す。

色んなことを思い出し、取りだして、見つめた。大人になったと思った。いいライブだった。

読んでいただきありがとうございました。サポートしてくださると本づくりが一歩進みます。