weekly arekore... ④
#week 11 - 12
前回のあれこれからだいぶん時間が空いてしまった。
振り返って日々を書く間も惜しいほど、ぎゅうぎゅうに、ただ前に進んでいた。友だちとの言語も摂取するメディアも、英語がメインの日常にシフトしていったからか、日本語で文章を残そうという選択が薄れていた。それくらい没頭して日々を送っていたんだと思う。
とはいえ、決して器用とはいえない不慣れな言語の上で成り立つ日常は、自分が感じていること考えていることの繊細な部分をキャッチしないでぐんぐん進んでゆくから、どこか現実味がなくて置いてけぼりになってしまっていた。残り2週間の学期を、悔いなくやり切るためにも、忙しない合間に乱雑でも書き殴っていく。
Materials:
11週のスタジオ授業だったので今週木曜日、ついに最終発表だった。どんな発表をしたかは、日本語訳をつけて今度まとめてちゃんと出したい。
このスタジオは何しても面白がる視点をくれるアーティストの講師さんのおかげで、毎週行くのがたのしかった。課題の自由さゆえの苦悩はもちろんずっと付き纏ってたけど、フィードバックをもらうと創造が膨らんだ。3つの3週間課題を着々と進め、最終週に全部の発表・展示をする。締め切りを勘違いしていて最終日に大焦りで映像を制作した。友人の協力に頭があがらない。限られた時間の中でなかなかやり切れたと思う。練習していなかったせいでプレゼンでは大コケしたけど、映像は美しくて見飽きないと褒めてもらえた。
いちばん自分の力を注いでいる椅子デザインの進捗を、阻害しすぎない程度の力の入れ加減で、納得いくおわりをつくれたと思う。後日ちゃんとまとめよう。
Furniture:
目先の締切にあまりに焦って、椅子をつくる試みに何の意味があるのだろうか?とデザイン史を振り返っていた。どの時代も技術と社会の歩みに呼応し、生き物のように絶え間なく進化し続けるムーブメントの様子は、とにかく面白くて、未来に向かう今この瞬間も、デザインの文脈を編む小さな一部になれるのではないかということに心が躍る。目先に眩みがちな現代生活だけど、歴史はいつも私たちと共にあるということを思い出すと、力が湧いてくる。とにかく面白くて、自分の全力をかけて次なるデザインの歴史に参加したいと思える。
とはいえ、ここ数日はなかなかに苦しかった。いや、毎週絶え間なくなかなかにヘビーで苦しい。絶対弱気にならないで、積極性を失わないって誓って踏ん張り続けている。勉強になるけどいい具合に辛辣な講師のデザイナーから、個別で相談・フィードバックをもらう時間は、week6あたりから今週まで半泣きだった。やり切れてない自分に気づいているからこそ不甲斐なかった。毎週均等に力をかけ続けるのは相当な覚悟と犠牲が伴うな、と思う。
ふと落ち着いて考えてみると、椅子デザインという自分にとって初めての領域を、初めての環境と未だ心許ない言語力で学ぶということをしている。とても挑戦的なことなのだからこの苦しさは当たり前なのかもしれない。こんなに全力になれる、なりたい環境は滅多に出会えない。心からこの環境に感謝して、後悔を1ミリもしないようにやり切ろう。
自分がデザインする椅子は、フェルトを使うってはじめから決めていた。なんとなく、で手を出したけど遊牧民の生活と共に超ながい歴史と文化的意義を持つ羊毛フェルトは相当面白い。モンゴルの文化人類学の研究論文とかを読み漁ってどうにかデザインに解釈を落とし込もうなんてジタバタもしていた。めっちゃ面白い。けど結局今回は手に入る素材が限られているのもあり工業用フェルト(主にポリエステル)でいくことになった。フェルトの積層がなんだかすっごく好きで。薄い面が積もってソリッドになり、形になっていく、けれども本をぱらぱらめくるように、ソリッドに動きと空気感がある。そんな表現を目指して、week9から試行錯誤を繰り返してきた。
工業用フェルトの面白いところは、加工方法のバリエーションが豊富なところだ。手芸用の薄くて柔らかいフェルトから吸音パネルのような硬く頑丈なものまで。不織布の絡める方法や樹脂を追加するなどの調整で、分厚さ固さが自由自在に操れる。構造を支えるものも含めて全てフェルトで行い、メタルや木材で荷重に耐えうる構造にするようなupholstryにはしないと考えていた。
使う素材の種類を増やすと、本当に追求したいフェルト積層の表現に最初に目がいかなくなるのでは?と思って、薄いフェルト布のみでデザインし直してみることにした。中にファイバーグラスなど硬くて丈夫なシート状の樹脂を挟まなきゃ構造として成り立たないけど、今回はエンジニアリング的挑戦ではなく表現の追求を優先してよしとしよう。
ずっとグラフィックデザインばっかりやってきたから、こんな3Dを頑張るのははじめて。だから自分がものを作る時の作法を、毎日開拓している。スケッチから始めてペーパープロト、ちょきちょきして、壊して、資料を読み込んでまたスケッチ… (loop) 右も左も分からないから、正直前に進むのも怖いし、いいものなんて私にはつくれないよ、デザイン向いてないよ、なんて毎晩思う。けどそれと同じぐらいの力強さで、楽しんでいたり絶対見たいものを作ってやるんだという自分もいる。何かを生み出す苦しさは、人生で味わう苦しさの中でたぶん一番の栄養。
何かをデザインすることの最大の学びはプロセスで、没になったアイデアや形として立ち現れなかった思考・試行の全ては次なる種だな、とようやく思えてきた。これを頭の片隅に入れておくだけで、制作途中の試行錯誤でだいぶ心が軽くなる。
ちょうど36時間ぐらい前の、デザインなんて自分には無理だと堕ちていた時が嘘みたいに今はつくりきれる気がしている。きっと手を動かし続けないと、バッドからは這い上がれない。人と喋る気力と体力を全部セーブして静かに制作に当てる、なんてここ1週間の生活は、留学生っぽくないけどこれはこれでいい。明日も朝8時から素材の買い出しに行って、その後は深夜までスタジオにこもる。明日明後日は勝負だな〜、がんばろうと
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side story…
猫 miao miao
留学生活で一番嬉しかった出会いだった彼女と、呆気なく予想外にお別れの日が来た。老化と健康上の理由から急遽里親に出され、決定から24時間でキャンパスから姿を消した。あまりにも大きな存在だったから、消化もし切れずに呆然と日々を過ごしている。彼女について書きたいことが多すぎて、どこから始めたらいいのかわからないけど、絶対に文章に残す。いつまでも褪せずに、記憶の引き出しの一番最前列に居続けて欲しい、そんな関係性の猫だった。彼女と過ごした場所と空気がそのまま残るこのキャンパスに住む間に、あの出会いがなんだったのかを、わかりたい。
bye -
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