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弥山登拝とそのテーマソング

 宮島に行くということで、弥山みせんに登ってみたいとおもっていた。ロープウエーがあるけれど、ここはやはり自力で登りたい。
 でも今回は、ひとりだというので不安もあった。わりとうっかりもののため、ケガなんかしちゃったりしたら困る。当日まで決められずに宮島に着いた。

 船が着いてから、まずは厳島神社に参拝する。鹿が歩いていた。鹿を見るのは野崎島以来だから、つい野崎島の鹿と比べるけれど顔つきも距離感もぜんぜん違う。雄のツノは切られているのかな? 野崎島の雄鹿は立派なツノがあるのが多かったから、なんとなくさみしい(写真は雌)。

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 厳島神社の参道で、人力車のお兄さんから営業をされてしまう。参拝のあとはどうするんですか、と訊かれ、弥山に登りたいんですと答えた。お兄さんは私を見て、装備はじゅうぶんだけど弥山は自分たちでも2時間ほどかかりますよなんて言われて、ちょっと不安になる。稲荷山よりもうちょいきついとも言われさらに不安になる。

 ひとまず写真を撮りながら、厳島神社をゆっくりと歩いて、紅葉谷公園に出た。やっぱり登りたいし、下りはロープウエーという選択肢があるから決心して歩きはじめる。
 弥山の登山コースは3つあって、どれを選ぶかといったらもちろんいちばんやさしい紅葉谷コース(約2.5km)である。緊張しながら歩き出すと、他にも同じ道を行く人が数人いて、すこしほっとする。でも少し歩くと、この数人はみんなロープウエーの乗り場の方へ行ってしまって、結局ひとりになった。

 この日はわりと寒かったのに、歩き始めて30分もしないうちに暑くて上着を脱いでしまった。無理のないペースでもくもくと歩くんだけど、稲荷山や大文字山のときと違って、他に登山者を見かけない。みんなロープウエーを使うのか、それとも他のコースを選んだんだろうか。
 歩いていると、ずっと頭の中で繰り返される音楽に気がついた。サビのところが何度も流れているのを感じながら、ひたすら歩く。

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 迷うような分かれ道なんかもなく、標識も適度にあって、安心しつつ、体力と相談して登っていく。少しずつ頂上に近づいていくのがうれしかった。もう登りきる前に汗だくである。
 11時くらいから歩き出して、13時前には頂上に着いた。さすがに気温が低いし、風が強くて背中をつたう汗がどんどん冷えて気もちがよかった。登ってよかったー! 誇らしい気もちで、頂上からの眺めや空気、達成感をしばらく味わう。あの音楽がまだ流れている。

 稲荷山と比べてどうだったか覚えていないけれど、野崎島のトレッキングよりは楽だった。下りは安全重視でロープウエーを選ぶ。乗り場に行ってチケットを買って、13時15分(だったかな)のロープウエーに乗り込むと、アナウンスが流れた。

——強風のため、この次のロープウエーから運休になります。

 風が強いのは頂上だからかとおもっていたけれど、それだけではなかったらしい。最後のロープウェイを逃さなくてよかった! ちょっとぐずぐずしていたら、下りも歩かなければならないところだった。
 宮島ロープウエーは、循環式と交走式の2種類を連絡運行するというもので、途中で乗り換える。まず獅子岩から榧谷かやたにの間が交走式(下りの話です)で、定員は30人で、大きい。榧谷で乗り換えて、紅葉谷まで行くのは循環式で8人乗り。これは観覧車のゴンドラくらいの大きさで、1分間隔で循環するため4、5人に分けて乗車させていた。乗る時に「風が強いので、ゆっくり走ったり止まったりするかもしれません」と言われた。

 ロープウエーは風を受けながらゆっくり下りていく。ずっと外を眺めていたら、なんと虹が出てきた。虹が大好きな私はすかさずカメラを用意して何枚も撮る。風が強いので雲が流れ、雨が降ったり日が差したりしていたけれど、冬場はあまり期待できないはずの虹が見られたことがうれしい。祝福されている気がした。

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 この日も私は食事をとらずに歩き回っていたから、下に着いたらまずあったかいコーヒーを飲みたかった。目についたスターバックスコーヒーに入って、たっぷりのアーモンドミルクラテでひと息ついた。残りの時間は宮島表参道商店街をぶらぶらして、土産物をあれこれ見たり、鹿の写真を撮ったりした。他にもいくつかまわるか悩んだけれど、実は(というか)2月にまた来る予定があるため、欲張らないことにした。

 帰りの高速船を予定より1時間早くして、ホテルについて大きなお風呂で疲れをとる。大きなお風呂ってやっぱりいいなあ。海の前で、露天もあって、ゆっくりできた。

 それで、弥山登拝のときのある音楽というのはYou Raise Me Upでした。頭の中でリフレインしていたのはオリジナルじゃなくて、私の好きなThe Baseballsというドイツのロックンロールバンドのもの。それで、全体の歌詞の意味はわかっていなかったので、お風呂から上がって調べたら今の私にぴったりとしていて驚いた。この旅のテーマソングとしてふさわしくて、忘れられない曲になった。

 2月の再訪がたのしみで仕方がない。


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