買い物というのはむずかしい
私はいま、ワイヤレスのイヤホンが欲しいな、とおもっている。
主に通勤など移動の乗り物の中で使うためで、音質はそこそこでかまわない。本を読むのにまわりの音(電車内のアナウンス)を耳に入れないためのものであって、音がどうとかいうのはどうでもいい。いま使っているのはGLIDiC Sound Air TW-5000というもので、値段が手ごろで見た目が好ましいという理由で選んだ。不安だった着け心地も問題ないし、雑音は防げるけれど危険なほどまでの防音性はなく、満足している。だけどそろそろ充電がもたなくなってきた。
買い替えよう、とおもうのだけれど、選びだしたらきりがなくって真剣にやると3日くらいかかりそうなので、放っている。だいたい選択肢が多すぎるのだ。いまの世の中、こういったことが多すぎる。たくさんあるモノの中から、自分がイイとおもえるすてきなやつを選びたい、私はそういう質が強いから迷いだすとたいへんである。つまり優柔不断ということになる。
でも思うんだけど、買い物って基本的にはお金を使うことなんだけれど、こうなってくると時間も使うので、相当のエネルギーが必要になってくる。私にとって『時間』というのはすごく大事で、あまりこういうことで消耗したくないとおもっている。
そういうわけで、こまめに充電をしながらもう何か月もずるずると先延ばしにしている。
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先週末、宮島を再訪した。昨年12月はひとり旅だったけれど、今回は友人数人でのグループ旅。厳島神社などの参拝をしたあと、前回と違う道を通ったら帆布のお店が目に入った。閉まっている店も多かったけど(行政のアレで)、小さな看板にOPENの文字があって、ウィンドウ付近には色んなサイズの小物入れがディスプレイされている。あれこれ手に取ってみたくなった。
こぢんまりとした店内に入ると、女性の方が対応してくれた。小型犬が吠えていて、女性がその犬をなだめながらご自由にどうぞ、と言ってくれた。店内には控えめに商品が並べてあり(数が少ないということ)、大小のバッグがいくつかと、キーリングやブックカバーといった小物類があった。店の中央は作業台のようだった。
ウィンドウの小物入れは、よく見るとすべてのサイズ、色の組合せが違っていて、どんなふうに使いたいかとか、どの色がいいだろうとかいった迷いが発動してしまう。この店には私ともうひとりだけが入ったのだけれど(他の人は先へ行ってしまった)、数本並んでいた感じのいいキーリングの欲しい色が重なってしまった。友人が私に譲ろうとしたので、店の人に訊いてみると、いっぱいあるんですよと言って袋いっぱいのキーリングを出してきた。いつの間にか女性と犬はいなくなっていて、ご主人がそこにいた。
いっぱいある。笑
キーリングは好きな色を選べばいいだけだから、すぐに決まったのだけれど、小物入れが悩ましい。それでも今回はひとりではないからあまり悩んでもいられないとおもい、おみやげと自分用に、ふたつの小物入れとキーリングを購入した。
旅から帰ってきて、小物入れもキーリングも、もっとたくさん買えばよかったななどとおもっている。けちけちしたつもりはないのだけれど、どうしてもたくさんあることよりも、ちょうどいい、もしくはちょっと少ないくらいが落ち着くので、豪快になれないところがある。使い道がなかったときのことをおもうと、胸がいたむのだ。つくづく小心者である。
この店は、店舗販売のみをやっていると言っていた。作業台いっぱいのキーリングをみて友人と笑っていたら、ご主人が「やる気のないときにどんどん作るんですよ、何も考えないでいいから」とか言うからまたおかしかった。すごく小さな店だったし、店舗販売のみということはきっと他にも何かやっているんだろう。改装した古民家についてとか、アナゴの話(「宮島の人はあんな高いお金払って食べません」)など他愛のない会話をして、店をあとにした(そしてその足であなごめしを食べに行った)。
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欲しいものに素直な人というのがいる。私はこのように小心者がすぎるので、そういう人を見ると何かすがすがしい気もちになってしまう。ある種の羨ましさも感じる。
でも、自分の質というのはなかなか変えられるものでもないし、まあ変える必要があるのかというところでどうだっていいんだけれど、ときどき考え込んでしまうこともある。宮島で、もっとたくさん買うんだったとおもう一方、またこの店に行って買えたらいいな、などともおもうのだ。
こういう、"モノ"の買い物が苦手な一方、形として残らないものへのお金の使い方というのは思いきりがいいほうだとおもう。身軽なことが好きな私は、形はないけれど私の中に蓄積されていくもの、そういったものにお金を使うことに心地よさを感じる。私をゆたかにしてくれるもの。旅をすることや、学びのための講座みたいなものもそうだし、チョコレートというのも私にとってはよろこびと、体験や経験を得るためで、そういったもののほうにより価値を感じるのだった。
色んな色と形の小物入れ
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ところでイヤホンだけど、この記事を書くために遡ってみたら、購入したのは2年以上前だった。劣化が早いなと思っていたんだけど、早いのは時の流れのほうだったみたい。というわけで、いまのやつの新しい型にでもしておこうかな(イチから選ぶのめんどうだし)。
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