見出し画像

【私と本】チョコレートから眺める歴史など

 チョコレート(カカオ)関係の本を探して読んでいる。歴史や文化と合わせて書かれているものもあり、それらからキリスト教が伝来したルート、鉱山資源(銀など)が流通したルートに重なるところが多いことを知った。
 神への捧げものとされた時代から、貨幣として流通などし、その後健康増進のため薬品として利用されていたカカオが、嗜好品となり固形のお菓子(板チョコレート)として親しまれ、現在のように様々に展開されるまでをなぞっていくと、なんと手間と愛情のかかった食べものだろうと驚く。これを知ってからは私も愛と敬意をもって食べている。

 いくつかの過程を経て、固形のチョコレートが誕生したのは1847年。もとは薬局であったのちのフライ社のジョーゼフ・フライ氏であったという。1828年にオランダにおいてヴァン・ホーテンがカカオマスからカカオバターを取り出す技術を編み出して以来、脂肪分を抜く(脱脂)ということに焦点があてられてきたが、薬学に長けたジョーゼフのアイディアは「追油」であった。搾油しないカカオマスにココアバターを追油し、砂糖を加えて練り上げることで風味がよく滑らかな舌触りと、成型や型抜きのしやすさなどが得られた。このアイディアの発端が「ホメオパシー」から来ているというのを読んで興奮した。なるほど!

 イギリスを代表するココア・チョコレートメーカーであるフライ家、キャドバリー家、ロウントリー家はいずれもクエーカー教徒だったあたりから、商品の開発についてや急速に進む産業化から生まれる格差を埋めるための社会福祉に係る事柄に対応していく姿勢も書かれていて、飽きずに読み終えることができた。

 また、イエズス会がメキシコのコレジオにおいて2つのカカオ農園を経営していたことなどにも触れられている。イエズス会と言えば日本へ初めてカトリックの教えをもたらした修道会として知られている。2019年11月、38年ぶり(1981年2月ヨハネ・パウロ二世来日)の来日となった教皇フランシスコは初のイエズス会出身のローマ教皇である。色々と言われることも多いイエズス会だが、カカオの流通や栽培においても顔を覗かせているとは興味深い。

画像1

 このように色んな過程を経て、いま私たちが口にできるカカオ(チョコレート)って一番おいしいんじゃないだろうか。尊い。

チョコレートの世界史-近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石-

この記事が参加している募集

読書感想文

サポートを頂戴しましたら、チョコレートか機材か旅の資金にさせていただきます。