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ミラクルショットをさがして

 親しい間柄での遊びのひとつですが、先日『コーヒーとチョコレートのおいしい組合せ』というお題が出されました。私が日頃からチョコレートチョコレートチョコレートチョコレートと言っているからです(たぶん)。これにはそれぞれの予算とかそういうのも提示されていて、あとは私の感性とか感覚とかコーヒーの具合とかそういうのも総合してかたちにするのです。遊びと言いつつも、てきとうに取り組むなんて甘い考えではいけないという何かしらの意図(圧力かも)みたいなのがひしと感じられます。

 ふだんテイスティングをするときの飲み物は水です。理由は(わざわざ言うことでもないかもしれませんが)他の飲み物の場合、それらの風味がテイスティングを阻害するからです。テイスティングが済んだチョコレートを、後日コーヒーと食べることはあっても、だいたい(おいしいナァ)とぼんやり食べているだけなんですよね。チョコレートのペアリングとしてはコーヒーの他に紅茶や緑茶などのお茶のあれこれ、そしてワインにウィスキーといったアルコール類と範囲は広くて、私はそういうたのしみ方をしてきませんでした。さあ、真剣にコーヒーとチョコレートの味わいを探ります。

 意識して取り組んださいしょの日、また私の思考はあっちこっちと寄り道をはじめました。「合う」とひとことに言ってもさまざまです。似た要素があるから合うのか、まったく違う方向性のものが補い合うことでぴたっとくるのか。それは人と人との関係性にも言えることだ… と思考が動いていきました。

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 私はあのひと(たち)のどういうところに惹かれているんだっけ。
 まず似てるところがあると惹かれやすいですね。友人関係、恋人関係、家族でもそいういうのは必ずあります。好きなものが同じか似ているとか、私がいいよと言ったものを気に入ってくれるとか、あるいはその人が好んでいる何かを知って私も好きになるとか、そういうことがあると嬉しいですね。話も弾むし、気もちも弾みます。「一緒だ!」っていう嬉しさ。共感もできるし、相手からもしてもらえるという嬉しさ。わかってもらえる、そういうのってつまり安心感にもつながります。私のなかにあるものと、その誰かのなかにあるものが共鳴する現象。
 それとは違って、自分にないものを持っているところへの魅力というのもあって、それも大事なポイントです。未知の世界のこと、その人と出会わなければ触れることのなかったかもしれない何か。他には、自分には到底できないようなことをしてみせてくれる感動。こういうのは憧れとかそういうことになるのでしょうか。これは例えば色の世界や星の配置なんかでもたびたび出てくる相補的な関係にも言えることです。
 こういうことを考えていくと、なにをもって相性がいいとか合うというのかわからなくなっていきます。

 わからなくなっていくのだけれど、私はなにかそこのひとつの点が気になります。そのちいさな一点を知りたい、見つけたい欲求があるみたい。似ている者どうしが重なり合う点、異質なものどうしが交わる点、それを見つけるためにはものすごくたくさんの情報や出会いが必要になってきます。

 人と関わるのが怖かった時期を思い出します。心が疲れていて、外に向かう気力がまったく持てなかったことがありました。そういう時期が無駄とかそういうことではなく、ある場合にはとても必要だし、そしてそこからにじにじと這い出して、外に出てこられたこともまたすばらしい体験でした。外側にあるたくさんの人や世界や知識に触れて、私自身が広がっていくのはおもしろいです。それがどんなものか知りたい、私もやってみたい、好奇心というのがどんどん刺激されて活性化し、わくわくします。外に出ると、そのぶん傷つくようなこともいっぱいありますが、またそれを補償する体験というのが必ずあるようにおもいます。傷つくのはとてもこわいけれど、その先にある宝物に出会いたい気もちの方が強いと、それを通して得た体験もまたより強い輝きを持っているみたいに感じます。

 この地上でいのちをもって体験できることは限られていて、せっかく生まれてきた私のたましいが体験したいことはなるべくさせてあげたいです。それがどんな欲求か、まだ知らない部分も私のなかにあるとおもいます。できるだけ自分とつながっていて、いっぱい泣いたり怖がったり笑ったりわくわくしたりびっくりしたりして、あーたのしかった! といって肉体から離れられたらいいなあとおもって生きています。

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 チョコとコーヒーのマッチングから、あれこれ考えてまたそこに戻っていきます。いまこの瞬間、目の前にあるチョコレートとコーヒーの味わいに意識をむけて、しっかりと味わってみると、また新しい気づきが起こってきてたのしい。こつこつたのしみながら見つけた一つひとつのちいさな点は、空に位置する星の輝きくらいうつくしいかもしれない。
 とくに必要とはいえないようなこと、人から見たら何にもならない無駄みたいなことに、時間やお金をかけるという行為を大事にしたいとおもっています。

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