見出し画像

とても運がいい

 五島列島の北端の小値賀(おぢか)島。2019年の9月にはじめて訪問して、すごく記憶に残った。17の島々で成る「小値賀町」本島の小値賀島から東に2kmほどのところには野崎島があり、この島は「長崎と天草地方潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつになる。

 また行きたいとおもっていたところ、友人が興味を持ち行ってみたいということで話が合い、2020年12月半ばに計画をした。待ち遠しかった。

 友人たちとは住んでいる場所が違い、それぞれ使い良い航路で計画していたのだが、出発の3日前くらいから天候があやしくなってきた。寒波がきていたのだ。友人たちが使う船はとても大きなフェリーなのに、それでも欠航の可能性があると聞いて気が気じゃなかった。自分の航路も変更した。

画像1

 何とか、小値賀島に行くことができた。先についていた友人たちの船は相当の揺れだったらしい。到着の次の日が野崎島へ行く予定にしていて、今度は野崎行きの船の心配をしながら、とっておいた宿にチェックインをする。前回気に入った宿。ああ、また泊まれるなんてうれしい。

 航路を変更したわたしが小値賀島に着いたのは午後14時近く。すこしだけ小値賀島内をまわって、夕飯まで宿で休む。翌日の野崎行の船が出るかどうかの決定は船の出発時刻30分前くらいまで粘るそうだ。気をもんでそわそわしながらも、近くの焼き鳥屋で食事をとって、お風呂を済ませて床についた。

画像2

 町営船「はまゆう」は朝7時25分発。野崎島はほぼ無人島のため、お昼ご飯の準備がいる。船が出るかわからないまま、パン屋さんでパンを買って、港に行く。野崎島では、沖ノ神島神社を訪ねるトレッキングを申し込んでいたので、ガイドの方と合流する。この時点で船が出ることがわかり、3人で思いきり喜んではしゃいだ。

 ありがとう船長さん。以前、久米島で「はての浜」行きの船が出なくて、仕方なくビーチごっこをし、でも諦められなくて午後からぎりぎりのところで船長さんが船を出してくれたことがあったのを思い出す。「船長さんってすごいね!」「ありがたいね!」と感謝しつつ、野崎島に向かう。

 野崎島に着いたら雪が降っていた。滞在時間は7時間、トレッキングは約5時間を予定するコースだ。入島の際の説明事項をひと通り受けてから、さっそく歩き出す。我々3名、ガイドが1名の計4名。目指す場所は「沖ノ神島神社」「王位石(おえいし)」です。

 以前も書いたが、この島には野生のニホンジカが暮らしている。その他は、野鳥やよそから入ってきたイノシシ。ガイドの方が言うには、ニホンジカも随分数が減っているんだそう。数年間生態などの調査をしていたが、ここ数年はできていないとのこと。そして、季節は冬なので、野生動物には食糧確保が厳しい時期である。

画像8

 野崎島のことや、小値賀島のいろいろを教えてもらいながらひたすら目的地を目指す。山道で、寒くて、すぐに息が上がる(普段から運動していない2人に限る)。ときどき「キャッ」と高い声がする。鹿が警戒するときの鳴き声という説明を受ける。ガイドの方は、目も耳もよくてすぐに鹿をみつけたり、自生する植物のことを教えてくれたりする。

画像3

 当たり前だが舗装されていない道(というか)をひたすら歩く。ぐらぐらする石や、落ち葉で滑らないようにと慣れない歩き方で疲労が増す。でも行きたいのだ。がんばる。

 歩きはじめて3時間程、やっと、やっと、目的地に着いた。「沖ノ神島神社」の創建は飛鳥時代と言われる。小値賀島にある「地ノ神島神社」と向かい合うようになっている。まずは手を合わせて感謝をする。

 社殿の裏手にそびえ立つ「王位石(おえいし)」と呼ばれる巨石。この石のそばでは方位磁石がきかなくなるとか、昔々はてっぺんの横石で神楽を舞ったとか、色んな伝説があると聞いた。人工物なのか、自然の成り立ちなのか、どちらかもわかっていない。どちらにしてもすごいとしか言いようがない。ほんとうに大きい。海側から見上げ、裏にまわってまた見上げる。ここでしばらく瞑想などしたいくらいだったが、もうひとつ訪ねたい場所があったためあまりゆっくりもしていられない。後ろ髪を引かれながら、あとにした。

画像4

画像5

 来た道を戻り(きつい)、一度「野崎島自然学塾村」で休憩となる。ここは1985年に閉校となった小・中学校の校舎を利用していて、簡易宿泊施設として活用されている。手洗いを済ませ、お昼ご飯をとる。朝から買ったパンである。寒い…用意してくれていたストーブにあたりながら、あったかいものが欲しいねなんて言っていると、ガイドの方が「普段こういうことはしないんですけど…」と言いながら湯気の立つコーンポタージュを持ってきてくれた。わたしたちが飛び上がってでうれしがったのは言うまでもない。

 ひと休みしたら、最後の目的地「旧野首教会」に向かう。煉瓦造りの教会で、1882年の木造教会堂のあと1908年に鉄川與助氏の設計施工により建てられた。2020年9月の台風10号により、建物内外がいくつか被害を受けてしばらく公開中止となっていた。計画の時点で公開時期は未定だったのだが、11月11日から再開されていて、この点でもラッキーをもらっている。

 船の出航に合わせて港に向かう。港のある野首の集落で、最後にまた鹿に会った。

画像7

 船は行きと帰りで島をぐるりと見られる航路になっている。また「舟森集落」を眺める。こちらにもいつか行きたいのだ。

 小値賀島に戻り、歩き疲れた身体を休め、夕飯に出かける。宿で疲れを洗い流し、床につく。ところでこの宿の寝具が、とてもきもちがいいのだ。初日の夜は冷たい風がびゅうびゅう吹いていたが、この布団だけでとてもあったかで、ぐっすり眠れた。枕もいい。どこの寝具だろうか。我が家にほしい。

画像9

 翌日も雪が降っている。チェックアウトまでのんびり過ごし、最後の食事をちゃんぽんで締めくくった。おいしかった。

 3日間、いちばんおいしかったのは、野崎島で出してもらったコーンポタージュのスープだというのが、全員一致の意見である。

画像9

画像10


サポートを頂戴しましたら、チョコレートか機材か旅の資金にさせていただきます。