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こうさこ

 チョコレートのテイスティングでは、自分が知っている中から味わいの重なるものを選び出す。フルーツ系の酸味で苦味を含んでいるとグレープフルーツをイメージするし、甘みと香ばしさとコクが感じられると、ローストナッツが思いだされる。そんな感じで、味を見ていく。
 そんなある日、パウダリーな質感を持つ軽いテクスチャに、「口砂香みたい」とおもってメモしたものがあった。
 数日して、ふと、「口砂香」のことをおもった。急に「口砂香」が一般的な呼び名かどうか、疑問が湧いたのだった。

 「口砂香こうさこう」は粳米を炒った粉と砂糖とを混ぜ合わせ型打ちしたお菓子である。呼称に疑問を持って調べてみて合点がいったのだけれど、落雁だ。
 こういう<打ちもの>と呼ばれるお菓子は日常的に食べるものでなく、お盆などに盛んに売り出されたりするのを横目で見るくらいであるから、意識したことがなかった。でもそういえば、こちらでは饅頭屋、和菓子屋の店頭には「口砂香」の文字がおどり、「落雁」と書いているのはほとんど見たことがないと思いあたった。

 そういうわけで、ネタ用に口砂香を求めて購入したのが今日の写真です。

 今回購入したのは『千寿庵 長崎屋』というお菓子屋さんのもの。ここの他のお菓子は食べたことがなかったけれどカステラも作っているし、商品数も多かった(カステラは福砂屋か梅寿軒を好む)。
 茶筒くらいのに入った口砂香は品切れというので、この小さなパッケージのもの(5個入り)を購入し、今朝お茶うけ(コーヒーですが)に開封した。

 味というとやはり、炒った米粉のふんわりした芳ばしい甘さに、砂糖のはっきりした甘味が重なる素朴なものだった。もち米でないことから、口どけはさらりと軽くて、あっという間にとけてなくなった。

クジラと尾曲がり猫だった

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 チョコレートのテイスティングをしていると、思いもかけない味わいが出てくることがある。今思いつくものをあげると、焼き魚の皮めとか、豚骨のようなワイルドな味わい、つまりまさかチョコレートがそんな風味を持つと想像もできなかったようなもの。
 体験してみると、それらのほとんどは決して不快なことはなく、他の味わいや風味と調和して、おいしい。

 そして今回のような和菓子フレーバーとか、焼き魚といったものをとらえたとき、ふと思うのが、これは私が体験したことのある味わいしか感じられていないんだよな、ということだ。
 日本と食文化を異にするよその国の人は、私が感じた味わいをなんて表現するんだろう、よその国の料理や野菜、果物といったものから作られる未知の味わいがあって、それは私にはどんなものに感じられるんだろう、そういうふうなことを考える。

 チョコレートのテイスティングのため、というのではないけれど、いろんな味を知りたいとおもった。

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今日の「洗濯」:カーテンを洗っている最中って、部屋の中が丸見えになっちゃって困りますよね。

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