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そのとき、私の読書魂が爆発した

私の趣味は本を読むことです。

趣味は何かと聞かれて悩んだ末に出てくる定番のセリフであるが、私の場合は本気で読書が趣味だ。

きっかけはJ.K Rowling女史が書いたHarry Potterの第1巻である。小学校3年のときだった。
周りのあらゆる音という音が消え、私は文字通り彼女の作り出すHarry Potterの世界観に吸い込まれていった。読み終わった頃、私は本気でホグワーツがあると信じ込んでいた。

そして1週間で、当時発売されていたシリーズ全巻を読みきった(当時は『ハリーポッターと謎のプリンス』までが発売されていた)。まさにHarry Potterに「はまっていた」。

J.K RowlingとHarry Potter役のDaniel Radcliffeにファンレターも書いた。自分の思いの丈を綴れるだけの英語力がなかった当時の私は、英語の先生に頼んで手紙の英訳を頼んだ。そして忘れた頃に返事がきた。とても嬉しくて友達に急に電話をかけたのをよく覚えている。
J.K Rowling女史からの返事はプリントされたものだったが、宛名は確かに"Dear Reina"となっていた
Daniel Radcliffeはサイン入りのA4モノクロ写真がきた。今でも部屋に飾っている。

以降たくさんの本を読むようになった。本を選ぶ際の第一条件はHarry Potter1冊分と同じくらいの厚さであること、外国のファンタジーものであることだった。

そのうち図書館にある外国文学はほとんど全て読み尽くしてしまい、私はとうとう日本文学にも手を出した。
第1号は南総里見八犬伝シリーズである。これはよく覚えている。図書館の、あまり生徒が入ってこないようなコーナーに、それはひっそりとあった。

それからは、三島由紀夫やら村上春樹やら東野圭吾やら宮部みゆきやら夏目漱石やら誉田哲也やら伊坂幸太郎やら村上龍やら上橋菜穂子やら遠藤周作やら司馬遼太郎やら太宰治やら坂口安吾やら、とりあえず思い出せるだけ書き出してみたがとにかく読んだ。読みまくった。

そして今、私は日本ではない国にいる。
日本文学でも外国文学でもなんでもいいが、日本語の本に日々飢えている。

そんな中、敬愛する作家の一人、塩野七生先生のインタビューを見つけた。
昨年末に発売された『ギリシア人の物語』第3巻、そして最終巻の発売とともに、塩野先生にとっての「最後の」歴史エッセイ刊行にあたってのインタビューだ。

塩野七生が「最後にベッドイン」に選んだのは、もっとも若くボーダーレスな男!--『新しき力』刊行記念インタビュー 前編 

塩野七生「私は惚れる男、選ぶ男には自信がある」--『新しき力』刊行記念インタビュー後編

胸を打たれた。
心が震えた。

2,500年を「生きた」だけあって、こちらにまである種の安心感を感じてしまうほどの大人の余裕が終始感じられ、先生にはもう本当に頭が上がりません状態。

自分の中にある芯と覚悟を大事に持っていて、それでいて刺激的な言葉選び。今回インタビュアーとして担当したのは、長年塩野七生先生の編集に携わった伊藤幸人氏(現・新潮社取締役)であるが、これまでに築き上げられた信頼関係が垣間見える言葉のキャッチボールにも心地よいものを感じる。

インタビューの内容は昨今話題になっているAIにまで及び、そこから出てくる塩野先生、伊藤氏の引き出しの多さにも舌を巻く。
さらに両氏の信頼関係ゆえに、インタビュアーの伊藤氏は塩野先生の言わんとすることを確実に汲み取っており、それがさらに内容も深めている。

このようなインタビューを読んで、本を読まずにはいられるだろうか、否。

実家の父の書斎にある『ローマ人の物語』全巻をもう一度通しで読みたい。なんなら今回の『ギリシア人の物語』の宣伝もばっちりだ。読みたい。

そういえばあの本も読みたい。この本も読みたい。実はずっと手帳の余白にことあるごとにメモをしてある、あの本たちを読みたい。

こうして私の中でくすぶっていた読書魂は満を持して爆発した。

そして私は、インタビュー最後の塩野先生と伊藤氏のやり取りを一生忘れない。

塩野:…死んでこそ生きる。私は自分、塩野七生を捨てるわけですよ、書くごとに。
伊藤:そうすることで対象が生きる。生かす。
塩野:そう。そしてその対象を生かすことによって、私がまた生き返るわけ。…
(敬称略)(インタビュー後編より)

reinakb

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