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一人寝の夜

知的障害が分かってから出来た友人には、基本的に障害の事は話していない。
二人例外が居るがあとの人には黙っている。

 障害が判明した頃、一時期はもう人に心を開けないかもしれない、と思った時期もあったが、良い人に囲まれ心を閉ざす事なく済んだ。

 だが、恋人はもうこの先作れないのだろう、と諦めている。

 友人関係であれば障害を黙っていても問題は生じないが、恋人に言わない訳にはいくまい。

 知的障害者だからこそパートナーが必要なのだ、と障害の症状が出ると感じる。
一番大きな症状は物忘れだ。
 仕事の様にスケジュールを共有したり、買い物リストを作成して共有すれば多少は防げるのだろう。
他にも地図が読めず目的地に着けない、何%オフが計算出来ないせいで、スーパーで右往左往する。
そんな事もなくなるだろう。

 また二次障害の問題もある。
私の場合は抑うつで、発症してしまうと落ち込む期間が続く。
この兆候が現れた時に相談してしまえば抑うつも発症しない可能性が高い。

 でもこれだけ珍しい上に理解され難い障害もそうそうない。
 しかもADHDも合併している。
 片付ける事が出来ず散らかった部屋を見渡す。
 自分でもげんなりする。
ここに知的障害が加わる。
 生来の不眠症も加わる。
 うんざりだ。

 自分さえうっちゃいたくなるものを誰が好んで引き受けるだろうか。

 知的障害者だからこそパートナーが必要なのに、知的障害だからこそパートナーを得られない。
そんな矛盾にやきもきしてしまう。

 誰かにそっと寄り添えたら。

 そんな私にしなだれかかるように知的障害が覆い被さってくる。
 一人寝の夜には頼んでもないのに不眠症が添い寝をしてくる。

 こんな私に健常者の殿方が入り込む余地はない。

 今夜も夜が始まる。
 眠れぬ夜の友であるはずの眠剤は裏切ってばかり。
今夜も一人きりの長い夜になりそうだ。


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