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連載小説・タロットマスター RuRu
第一話 園絵琉々
「お疲れ様でーす!」
夕刻、オフィスでは女子社員たちの華やかな挨拶が飛び交う。
「お疲れ様でした〜!」
笑顔で挨拶を交わした園絵琉々(そのえるる)は、颯爽と更衣室へ向かう。
金曜日の仕事終わり、更衣室では女子社員達がウキウキと身支度を整えながら、この後の予定や週末の過ごし方について話が盛り上がっている。
「ねえ、琉々はどう?今日もダメ?」
隣にいた同期が、琉々に話しかけた。この後、グループで食事に行くので、その誘いのようだ。
「うん。今日も直帰です!」
琉々はキッパリと、それでいて嫌な気がしないよう、笑顔でそう返した。
「琉々ってば、いっつも週末NGだよね〜!絶対彼氏いるじゃん!そんなに厳しいの?彼氏」
いつもの話しの流れである。残念ながら、琉々はこの手の女同士の会話に全く興味がない。早々に着替えを済ませて、更衣室を出ることにする。
「違うってば!愛する猫様が家で待ってるの。じゃ、また来週〜」
軽くウインクして琉々は扉を閉めた。こうゆうことがサラッとできるのも、彼女のキャラクターならではである。
ドアの外まで聞こえる話し声を後に、カツカツとヒールの音を鳴らして歩き出した。琉々は、比較的に高いヒールの靴を好んで履いている。細い足首に着けているアンクレットは、唯一社内で仲がいい同僚の三根奈都子(みねなつこ)からの誕生日プレゼントだ。
園絵琉々は際立った美人ではないが、オーラというか、個性というか、少し目立つ容姿をしている。
アースカラーやモノトーンのコーディネートが嫌いなせいか、いつも華やかな色のファッションだし、髪型は、バシッと一直線に切った前髪に、毛先に少しカールがかかったボブスタイル。色も、会社で決められているギリギリのカラーリングである。その髪は、いつも艶々に整えられていた。くりんとした猫のように大きな目には、控えめにアイメイクを施し、薄い上品な唇には艶のある口紅を塗っている。当然、ネイルはいつも綺麗に整えられている。
会社を出ると、夏の蒸し暑い空気が一気に身体を覆い、呼吸のリズムが崩れた。フリルの付いた襟元に、うっすらと汗が滲む。
「ふぅ…」
呼吸を整えて、琉々は一歩を踏み出した。カツン、と、ヒールの音が街に響いた。
【続き・第二話】
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