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駅に泊まる

北海道の倶知安くっちゃん町にある比羅夫ひらふ駅は、全国で唯一、駅舎の中で泊まることができる宿が存在します。
その名も「駅の宿 ひらふ」
今回はそんな比羅夫駅に泊まり、駅舎とともに一夜を過ごしてみました。

大自然の中にある小さな駅にその宿はあります

大都市の駅には「ステーションホテル」と言った具合に、駅ビルに直結したホテルが数多く存在します。
駅の宿はそれらとは異なり、実際に業務で使われていた駅舎のスペースを改装し、寝泊まりできる部屋が作られた宿泊施設です。

比羅夫という名前は飛鳥時代の将軍「阿倍比羅夫」に由来しています。
蝦夷地征伐を行うため、阿倍比羅夫は数回にわたり北海道の地に足を踏み入れたとされています。
阿倍比羅夫は蝦夷地統制の拠点として、羊蹄山の付近に行政庁をおいたとされていますが、どこに置いたのかは判明していないようです。
そんな比羅夫駅が開業したのは1904年。時は明治、北海道開拓時代です。
現在の熱郛駅から延伸した際に開業し、後に函館本線の一部となります。
現在、停車する列車は1日10本程度。2~3時間に1本のペースで列車がやってきます。
駅舎の一角には燃料として使う薪がたくさん積み重ねられています。
民宿の入り口です
丸太をくり抜いて作られた椅子。手作りです。
1階は暖炉とテーブルが置かれた、宿泊者の共有スペースです。
宿の周辺は羊蹄山を始めとするニセコ高原の山々がそびえ立ちます
至る所にサボや行き先看板
そして、鉄道写真が飾られています
部屋の中をキョロキョロするだけで楽しいです
宿の内装から、外のコテージまで、その殆どがオーナーの手作りです。
駅舎の外には、木のぬくもりを感じるログハウス調のコテージもあります。

そして、この宿最大の楽しみは、駅のホームでバーベキューを堪能できることです。
積雪がない暖かい期間だけですが、プラットホームの一角で、行き交う列車を眺めながら夕食をいただきます。
地元で採れた食材に舌鼓をうつひとときです。

予めお酒も準備しておけば、食もすすみます。

日が暮れゆくにつれて、宿の周りは虫の声と静けさに包まれていきます。

ライトの光が目立つようになり、乗客の数も次第にまばらになっていきます
誰もいない駅のホーム
最終列車が行った夜の駅は静けさに包まれます。

最終列車は21時半頃。
比羅夫駅の夜は早いです。

ちなみに、お風呂は露天風呂があり、なんと丸太をくり抜いた手作りの湯船があります。時間が経つと冷めてしまうため、早めに入るのがおすすめです。

翌朝、列車のエンジン音で目が覚めます。
始発列車は6時半。その後には1日1本だけの札幌行きの快速列車も到着します。
早朝の駅はまだ静まりかえっていて、鳥のさえずりと木々のざわめきが一際大きく聞こえます。

函館本線は北海道新幹線が札幌まで開通すると、並行在来線として存続せず、一部が廃線となる予定です。

この比羅夫駅も廃線区間の対象になっており、そう遠くないうちに列車が来ることはなくなってしまいます。

駅の宿ひらふは函館本線、比羅夫駅で下車。駅舎の中に受付があります。
車の場合、国道5号線から脇道に逸れて、坂を下った場所にあります。
なお、駅に至るまでに急な坂があるため、冬場に2WDで登るのは難しいとのことです。

オーナーさんの温もりと旅情をそそる比羅夫駅。
汽笛の音が聞こえるうちに、駅舎とともに一夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。


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