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「無理ゲー社会」を読んだら子供に優しくなれた

「無理ゲー社会」を読むきっかけは、タイトルが衝撃的だったからだ。

思春期•反抗期真っ只中の息子が、友人達の会話の中でよく使う言葉。

「そんなの無理ゲーでしょ!」

無理ゲーとは、難解すぎて攻略する事が難しい(または不可能な)ゲームの事らしい。

社会が無理ゲー?
どういう事なんだろう。

無理ゲーとかクソゲーとかヌルゲーとか、その違いすら分からないが、とにかくインパクトが強い。

なんなら誰か「ヌルゲー社会」とか執筆してくれないだろうか。

ぜひ読み比べてみたい。

私は残念な事に、何年も摂食障害から抜け出せず、社会から孤立したアラフォー主婦。

ネットニュースを流し読みするだけで、なんとなく理解した気になっている「下級国民」だ。

社会問題を知る為には、本を読んで勉強するしかない。
片田舎で平凡な毎日を過ごしていると、普段だったら絶対に作家や社会学者や哲学者と会える事なんてないが、本を読めば、そういった人達の考えを知ることができる。
 
よし、どんな無理ゲーが待ち受けているのか教えてもらおうじゃないか。

かくして私は「無理ゲー社会」を読むと決意した。

知らない社会問題がいっぱいあった。

リベラル、経済格差、メリトクラシー(能力主義)、ユニバーサル•ベーシックインカムなど。
ママ友との会話で「ねぇねぇ。メルトクラシーについて語り合おう。」なんて話し出したら、ドン引きされそうな単語が続々と出現。

しかし何故だろう。
引き込まれるように夢中になって読んでしまう。私の傍らには、第二の脳、スマホさんがいる。なんとも心強い。「意味を教えて。」
といえば、すぐさま「はいよ!」と教えてくれる。

一瞬、この本は、傑作SF小説なのか?と勘違いするほどだ。
どこの宇宙の話かと思いきや、なんと現代の地球で起きている(これから起こるかも)問題が星の数ほど書き記してある。

こんなにも多くの社会問題があったのか。

ほんの少しだが、私が患っている摂食障害についても言及している。

この競争がどれほど強力で残酷かは、拒食症で生命を失うたくさんの若い女性がいることからわかる。生き物にとってもっとも重要なのは「生存(食べて生き延びること)」だが、「美しくなければならない」という社会的•文化的圧力はときに生存本能をも圧倒してしまうのだ。
 こうした「美の呪縛」は、近年では「ルッキズム」と呼ばれている。社会がよりゆたかになり、誰もがより「自分らしく」生きられるようになれば、わたしたちはますます「外見の魅力」にとらわれるようになっていく。

引用:『無理ゲー社会』/ 橘 玲 より

初めて摂食障害を専門に診てくれる病院に行ったのは、もう10年以上も前のことだ。
その時に医師から言われた言葉を思い出す。
「拒食後に過食するのは生きたいと思っている証拠。本能が食べる事を求めているんだよ。」

この言葉は、いつも私の心の片隅に潜んでいた。自己責任でこの病気になり、ずっと苦しんできたが、容姿の魅力に自信がもてず自尊心を損ない、結果として健康を害することになったのは、こうした「外見の魅力」にとらわれる背景があったのかもしれない。

自分にのしかかる問題は、ずいぶんと興味深く読んでしまうものだ。

モテ/非モテ格差の拡大など、現代の若者はずいぶんと多くの問題を抱えているが、こうした社会問題に興味をもち、議論する場が増えて欲しいと思う。

まとめ


子供は親の言動をよく聞き、行動をよく見ている。もし私が何か失敗し、子供に悪い影響がでてきたらどうしよう‥なんてビクビクしていたが、無理ゲー社会を読んだら、そんな事は大した事ではないんだと思った。

これからは困難な無理ゲー社会が待っているのだ。

なんだか、しばらくは優しくなれそうな気がする。

毎日楽しそうに友達と遊び、運動をして、「自分らしく生きる」を体現しているように見える子供達。
彼らが「自分らしく生きる」事ができるのは、子供の頃のわずかな期間だけなのだろうか。

今はただそっと、彼らを支えてあげたい。

#読書の秋2021

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