りんちゃんと幻聴さん #03

「赤や黒や赤や黒、泥でできた身体, which is disgusting, I mean WTF? ダルいからって皿を洗わない理由にはならない（Oh wait a sec! I kinda did tho!）聞いてる音楽の歌詞から来るんだ。『食べかけのまま捨てたあの夢を』一体どうしようというのでしょう？（身幅42cmだって） Maybe it's because I've been speaking English a lot lately, だからぐらぐらする」

やあ、また来たよ。この前はりんちゃんとお母さんの話を少ししたけど、今日は幻聴さんはちょっと脇に置いといて、りんちゃんみたいなメンタルの疾患とか他の障害と一緒に生きている人々、そしてその人たちをケアする側の人々、その両サイドに立って話をしたいんだけど聞いてくれるかい？

家族。そう、たとえば家族。
もしきみが、りんちゃんみたいに突然パニック発作に襲われたりしたら、きみのご家族はどう反応するだろう？　心配して病院に連れて行ってくれるかもしれない。もし診断名がついたら、その病気について勉強して、きみへの接し方を見つめ直すかもしれない。最近は家族向けの団体なんかも多いから、そういうイベントに参加してくれるかもしれない。

でも、真逆もありえるよね。もちろんきみのご家族の性質次第なんだけど、ことによっては放置されちゃうかもしれないし、最悪怒ったり、きみをさらに傷つけるかもしれない。
それはとっても辛いよね。物理的距離、つまり一緒に住んでいるか否かにも関わるけど、家族って、近しいよね。りんちゃんのお母さんはよく「血は切れない」って言ってた。

りんちゃんの家族が愛に充ち満ちているのが皮肉なくらい、りんちゃんは複雑な家庭事情の子と仲良くなることが多かった。狙ってじゃないよ？
ひとりの子は、りんちゃんのおうちでお母さんの手料理を食べて泣いちゃったんだ。家族の手料理を食べた経験がなかったからみたい。
あとひとり、これは本当に気の毒だけど、親御さんが彼女の障害を理解してくれなくて、今ここで口にするのも嫌なくらい酷い仕打ちを受けて、絶縁してしまった、なんてこともあった。

つまり、家族や他の親族の反応、対応は本当にそれぞれってこと。
そしてその反応がきみにどう作用するかも、きみ次第なんだ。

前に、りんちゃんが文章を書くお仕事をしていた時、色んな意見があったって言ってた。
たとえば、きみがパニック発作か不安発作、まあ何でもいいんだけど、メンタルが大ピンチに陥った時、きみはどんなケアをして欲しいと思う？
りんちゃんは、構ってもらいたい、話を聞いて欲しい、そういうタイプだ。だけどね、ある人は「放っておいて欲しい」って言うし、またある人は「大ピンチが誰かにバレるの自体が嫌」って言う。十人十色って、このことだね。

だから重要なのは、きみのニーズと家族の対応がマッチするかっていうことになる。

ややこしいけど、もう少し話すね。
今度は逆に、きみの家族のメンタルが不安定ないしはピンチになったとする。
きみは、その家族に、何をする？　どうする？　どう接する？　どんな声音で話しかける？
想像してもらっても、当然また十人十色、答えなんてない。

だけど、りんちゃんは自分がケアする側に回ってみて、自分の家族の苦労を知ったってよく言うよ。
「よかれと思って」という理由での言動が、逆に家族を傷つけたり、つい腫れ物扱いしちゃって相手を不安にさせちゃったり、例を挙げればきりがない。それに正解も多分、ない。

ここまでの話を「家族」に絞って話したのには、一応理由があるんだ。
あのね、りんちゃんもりんちゃんのお母さんも、あるいはきみもきみの家族も知っておくべきことを、今から言うよ。

血が繋がっていても、常に身近に居ても、生活を共にしていても、家族は「自分」じゃない。

家族は「自分」ではない。
自分以外の「他者」の中の「血縁者カテゴリ」のメンバーなんだ。

だから、全部背負い込むことはない。ケアする側であろうと、ケアされる側であろうと、ひとりの人間が自力で立って生きるのは存外に難しいことだし、ましてそこに「他者」メンバーの「全部」まで引き受けて生きていくのは、正直「無理ゲー」ってやつだよ。

ある医者が、りんちゃんのお母さんにこう言ったことがある。

「お母さんは、りんちゃんではありません。自分の人生を生きてください」

こんな当然のことが、目から鱗だったって、お母さんは言ってた。家族だからとか自分の子供だからとか、そういうことじゃなくて、「ひとりの独立した他者」として見てもいいのか、って、お母さんはりんちゃんへの見方が変わったらしいよ。

うん、今日はこんなところかな。言いたいことは言ったし、また改めるよ。