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【自由詩】風が教えてくれた


雨が降る夜は
必ずと言っていいほど
あなたの事を思い出す

窓を開けて
明かりを落とすと
風が
雨音と夜の湿気を運んでくる
その空気に満たされると
あなたの声や匂いが
時には触れた感覚さえ
よみがえってくるの


ダメねワタシって
いつも逃げてる
肝心な時になると
恐いのかしら
あなたはいつも励ましてくれた
君なら大丈夫
と言って押してくれた
でも
そんなあなたはもういない
分かってる
分かってるつもりだけど


あなたが突然いなくなって
もうどれくらいかしら
ワタシはあの時のまま
何も動いてない
動かせない
あなたが見たらどう思うかしら
たぶん叱られるわね
そうね
そんなあなたは戻って来ない
分かってる
十分に理解しているはず


みんなの言う通り
ワタシ恐いのよ
新しい一歩を踏み出すのが
いつも独りで泣いてるの
優しいあの言葉を待ってるの
あの日はもう戻らないのに
あなたはもう戻って来ないのに
分かってる
何度も自分に言い聞かせたわ
何度も


いつの間にか雨は止み
朝の空気がワタシをつつむ
そっと目を閉じた瞬間
風が
優しくワタシの頬を撫でた


誰かが
そっと背中を押してくれた
そんな気がした




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