8MAN.TOKYO

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live on the other quantum. 地球によく似た並行した世界に住んでいます。 https://8mantokyo.weebly.com/

最近の記事

公衆電話

F山に登り始めるとしばらく森の中を歩く。 頂上が見えない山道は変化に乏しい迷路を歩くようだが、前方から電話の呼び鈴のような音がしている。 公衆電話だ。 こんなところに公衆電話?緊急電話として使うためだろうが、その電話が鳴っている。 森閑とした森を汚すような音は何か自分の罪のような感覚を感じさせられる。たまらず受話器をあげてしまった。 「おひとりですか?単独ですと色々危険性が高まります。昨今この山に気軽に登頂しようとして、怪我をされたり迷って遭難救助となるケースもございます。お

    • エレキテル

      近頃、御侍様のお屋敷にはエレキテルとかいう奇妙な仕掛けで料理を作る木箱があるってえんだけど知っとるか? 何でもよお、その箱に生の野菜や魚を入れ、木箱を叩くと、勝手に熱くしてくれて、頃合いになると「ちん」とか音が鳴って、美味い料理がええ塩梅にいっちょでき上がりてえんだから世の中も便利になったものだなあ。 しかしよう、その木箱を使うにはエレキテルがいるらしく、手回しで溜めるのがてえへんらしいぞ。 まあ、長屋住まいの貧乏人には関係ねえ話だがよ、いつでも温かいおまんま食えるつうのは羨

      • 小鳥ちゃん

        小鳥型のAI「小鳥ちゃん」が商品化され、今年度の小学1年生から貸与され始めている。 空を飛ぶことができるので自動でずっと寄り添うセキュリティカメラとして、登下校時の安全のため周囲を監視し、交通事故から未然防止に期待されている。 子供の今いる場所を把握することができるので親はもちろん安心。不審者情報も“小鳥ちゃん”は入手するので、リスクのある帰宅経路を避けさせる行動も起こせる。 子供たちと言えば、そんな防犯機能はおかまいなしに自分のペットとして可愛がっているので、情操教育の面で

        • 糞尿リサイクル

          下水道技術の革新によって、人の糞尿は新たな資源として注目されている。 糞尿からバイオガス、肥料、さらには貴金属を再生する技術が開発されているのだ。 そもそも江戸時代では大切な資源として利用されていた。 回収された排泄物は、バイオガスプラントで変換されエネルギー源として利用される。 また、肥料プラントで有機肥料に変換され農地で化学肥料からの転換がはじまっている。 さらに、繊維質の成分はトイレットペーパーに生まれ変わる。最初は抵抗感があった人々も、排泄物が貴重な資源であることを理

          空からの花見

          絨毯型のドローンが普及してから花見は空からが一般的になっている。 桜の下から眺めるというのもいいものだけど、空から見下ろすと美しさはより別格と人気。 空からの花見は遠くまで見通すこともでき清々しい。 それに、混雑を避けて桜を楽しめるのはもちろん、競争になってしまう場所取りの必要もない。 ただ、酔って絨毯を踏み外すと大変なことになるのでくれぐれも注意が必要である。 また、料理や飲み物が絨毯の上からこぼれて下で花見している人に降り注ぐ事例も起こっており、今後は規制されそうだ。

          空からの花見

          ガジェット“磁衛代”

          爪に貼り付けるだけで便利な機能が使えるガジェット“磁衛代”が人気だった。 手をかざせば、重力変動を起こしその先にあるものを移動させたり、自分の体を宙に浮かせたり、電磁波によって物を温めたり、さらに修練を積むと人間の思考を変化させることもできるようで子供から大人まで大流行した。 しかし重大な事故も発生してしまい、この画期的なガジェットを使用するためには、幼児から専門の学校で教育を受けなければならなくなった。 学校卒業後も師匠に就いてマンツーマンツーマン指導が義務。 適格性が認め

          ガジェット“磁衛代”

          特殊な質屋

          うちの店は人間様の寿命を扱っている質屋でございます。 10年単位で質に入れていただく事が可能で、つまり余命を担保にお金をお貸しするわけでして、お客様の年齢で質種の年数の上限とお貸しできる金額は変わります。 どうしても貸し倒れというものがございますから、お年を召した方よりも若いお方の方に多く目にお貸し致しております。 20代の方だと30年という方もいますけど、悩ましいお年頃ですからね。 質流れになったものをお求めになるのはお年寄りです。 やはりこの世に未練が色々とおありでしょう

          特殊な質屋

          新品種 巨大な野菜

          果物の品種改良が進み巨大なサイズも珍しくなくなってきた。 青森県のとあるホテルのエステでは、りんごをすりおろしたジュースで水浴ができるサービスをはじめたそうだ。濃厚なビタミンを直接肌から摂取できるとのことで人気らしい。 沖縄では本物のバナナでバナナボート。沈まないようにする工夫に苦労して実現したものの意外に硬いのが問題。 栃木県のイチゴ狩り農園では、子どもたちが巨大なイチゴの山を登っている。日が経つと柔らかくなって足が潜り込むのがまた楽しそうで、体中ピンク色にして笑顔。

          新品種 巨大な野菜

          音声データによるLLM

          大規模言語モデルで遅れをとる日本は、国民が電話で行う会話を収集蓄積して学習データとする法案を可決した。 テキストベースのデータに比べて口語であるという特徴を活かし、より自然な会話を行えるようにしようというものである。 また、人間は文字化された確かな情報よりも、立ち話のような、つまり井戸端会議のような会話によって実は行動が左右されている実態もあるので、人間味を感じるAIの構築が期待されている。 一部でプライベートな会話が学習データに使われることへの懸念もあるが、それよりも、根

          音声データによるLLM

          落ち葉の活用策

          朝公園を散歩すると、ロボットたちが落ち葉をかき集め運搬していた。 落ち葉は栄養素に乏しいもので合ったものの、タンパク質やビタミンなどを生成する微生物が開発されたことで、食糧危機の解決あるいは薬の製造に役立つ技術だと注目されている。 冬になり降り注ぐ落ち葉は森の堆肥になり大切なものではあるが、住宅地や公園などではやっかいなゴミとして焼却もされていた。 落ち葉をかき集める作業をロボットに任せることで効率的に落ち葉を収集できる。 落ち葉をかき集めるのは人間がやる作業としては苦になる

          落ち葉の活用策

          電車の中のひとり時間

          月曜日がやってきた。 月曜日を迎えると気分が沈む人が多いのは、サラリーマンという職業が定着してからだろう。 特に通勤しなければならない人にとってはより不快な曜日となる。 仕方なく電車を利用し、会社へと向かう。 いやいや会社に行く人が多そうなのは車内の様子を見ればすぐわかる。 みんなゴーグルを着用して映像を見ている。 混雑した電車の中、他人が見えるだけで不快だからね。 みんなどんな映像を見てるんだろう。 出社した後すぐに業務をこなしていくために気分を上げる効果のあるもの? 自分

          電車の中のひとり時間

          町内会の清掃

          今朝は町内会の清掃だった。 年に2回、春と秋。このイベントの目的は、町内をきれいにしましょうということよりも、町内会会員の交流や団結を維持することらしい。 当然家事用ロボットを代わりに出席させるなんてもってのほか。 そもそも道路は行政職員のロボットたちがいつも巡回してきれいにしてくれてるので清掃の効果はない。 いつの世もそうだが若い世代には理解されない年寄りの勝手な意義ではあるが、取り仕切る町内会長が長老なので変わりようもない。 最後尾から目を光らせているから恐いったらありゃ

          町内会の清掃

          トイレ貸してください

          穏やかな日曜日の昼下がり、ちょっと眠くなっている時に玄関のベルが鳴った。 「す・み・ま・せ~ん」 という声も聞こえた。 玄関のドアを開けると、そこに、爬虫類型宇宙人。 噂に聞いていたあれかもしれない。 「なんでしょう?」 「オソレイリマスガ、トイレヲハイシャクシチャッテヨカンベカ」 「トイレ?普通のトイレ?」 「ハイナ。ワタクシデスネ、ダッピガハジマッテシマッタトヨ。ダッピニツカワシテーナ」 やはり噂のあれだ。急に来るらしく、外で人類に見られながら脱皮行為は恥ずかしいと聞いた

          トイレ貸してください

          洋服リサイクルの義務化

          所有する洋服はなるべくミニマムにする必要がある。 リサイクルが義務付けられ、それに伴い購入価格も上がったという理由もあるが、使い回しができるデザインと機能性で服を選ぶようになり、そもそもアイテムごとのバリエーションを抑えられるようになったからだと思う。 しかし下着はなんともし難い。繊維として、あるいは素材としてリサイクルはするものの下着という性質上リサイクルに出すのは気が引ける。 だから、じょうぶで長持し、暑さ寒さも薄くて軽い下着ばかりになったのは助かる。男だから、長い期間同

          洋服リサイクルの義務化

          他の星からの苦情

          他の星から苦情が届いたのが発端らしい。地球から届く電波がうるさいと。様々な電波を便利に使っていた。アマチュア無線、携帯電話、テレビ、ラジオなどなど。人間の目には見えないし感じることはできないけど、数十光年であれ届くものは届き、まるで騒音だというのだ。 おまけにこの電波に乗って届く情報を分析して地球を侵略することにもなるよという助言も。 これを機に個人のための電波利用は禁止されたわけです。 不便なこともあるけど、慣れてしまえば順応できる。この電波の問題で調査されて明らかになった

          他の星からの苦情

          就農ロボット

          “遊休農地”という言葉は死語になった。 農地は公共資産として国が借り上げAIロボットが農業に導入されるようになり、農作業の機械化・自動化が細かいところまでカバーされ、農業従事者の高齢化や労働者不足の問題は解消。結果的に、海外からの輸入食物への依存度は下がり日本の食料自給率は大幅に改善された。 米、野菜類、果物類の価格は下がり安定し、かつそれらから製造される加工食品で豊かな食生活が実現。広域的な野菜の流通には税が課せられるので、産地直送の新鮮な野菜中心になったのもうれしい。 美

          就農ロボット