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これから始める海外進出 #5海外向けWebサイト構築で気をつけるべきこと

「海外向けのWebサイトってどうやって作ればいいですか?」

という質問がよくあります。そして、「日本のWebページを翻訳するだけではダメですよね?」「デザインもすっきりさせた方がいいんですよね?」と続くのですが、そもそも、海外向けWebサイトって

企業情報を伝える「コーポレートサイト」

商品情報を伝える「ブランドサイト」

どっちのことを言っていますか?と聞くようにしています。そして、「ブランドサイト」についての質問だった場合は、

「日本のサーバー上に構築するのはやめておいた方がいいですよ。
 中国向けは特に。」

とお伝えしています。今回は、その理由を実体験とともにお伝えします。

■なぜ日本のサーバー上だと意味ないのか?

日本の中小企業の多くは「コーポレートサイト」「ブランドサイト」をお待ちかと思いますが、そのほとんどが日本のサーバー上に構築されていています。そのため、海外からアクセスしようとした場合、読み込み時間が非常に長かったり、繋がらなかったりすることもあります。

下図は日本のサーバー上に構築された、当社の「ブランドサイト」の読み込み時間です。日本:2.16秒に対し、アメリカ:23.30秒です。ちなみに、日本で最もポピュラーなレンタルサーバーを利用しています。サイトのサイズや、訪問者がどのような回線を利用しているか(3G回線など)にもよりますし「速度・パフォーマンス改善」はそれだけで一つの業界があるくらいなので、門外漢の私が言うのもなんですが、まぁ、何も特殊なこと(CDNによる高速化など)をせず普通に利用してたらこんな感じです。

日本サイト分析
弊社ブランドサイトの読み込み時間(国別)

2017年のGoogleの調査では、モバイルページの読み込みにかかる時間が1秒から3秒になると直帰率(最初のページだけ見てサイトを離れてしまう割合)が32%増加、10秒まで遅くなると123%増加すると報告されています。また、表示に3秒以上かかるページからは53%のユーザーが離脱しているそうです。

直帰率

つまり、アメリカからのアクセスに23秒超もかかっている当社の日本のサイトは、英語ページを作ったところで、かなり高い直帰率だろうと予測でき、あまり作り込んでも意味がないと言う訳です。

ちなみに、下図は、米国のレンタルサーバー上に構築された、当社の「ブランドサイト」の読み込み時間です。1.78秒とかなり早くなってます。(日本からのアクセスが少ないため日本:0秒となっています)

米国サイト分析

#4中国と米国市場は〇〇が必須! でも触れていますが、近年成功している小売店は、日本でも海外でも、オムニチャンネルが当たり前ですし、バイヤーもブランド側(メーカー側)のWebサイトやECサイトを必ずチェックします。消費者も、実店舗で商品を目の前にしながらスマートフォンで情報検索や価格比較をするため、Webサイトの情報は、売上に大きく影響します。だからこそ、商品の顔となる「ブランドサイト」は非常に重要なのですが、読み込みが遅いと見てもらえない訳ですから、それ以前の問題なのです。

実は、当社もだいぶ昔に日本のサーバー上に置いた別ブランドのサイトを「とりあえず英訳しよう」と、英語ページを追加したことがあります。

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しかし、見事にほとんどアクセスがありませんでした(涙)海外バイヤーに「商品情報はWebサイトで全て確認できます」とURLを伝えても、「カタログ送って」と返信され、不思議に思いながらWebサイトと全く同じ情報をPDFで送っていたのですが、今から思えば「メチャメチャ開くの遅いサイトだな!」と思われていたのではないかな~と想像します。

■中国語ページは全く意味が無い

一方、中国では2017年6月に新たにサイバーセキュリティー法が施行され、ネットの規制が非常に厳しくなりました。有料のVPN(Virtual Private Network)を利用することで、なんとか海外のサイトにもアクセスできていましたが、香港、新疆ウイグル自治区の問題などで、去年からは、今まで使えていた有料VPNサービスも使えなくなってきています。(VPNの説明は長くなるのでここでは割愛させて頂きます)下図は、2021/10/7 現在、日本のサーバー上に構築された、当社の「ブランドサイト」に、日本と中国(上海)からアクセスした時のモバイル画面の比較です。右側が中国からのアクセス画面なのですが、ずっと中央が真っ白なままで読み込めません。24時間ほどこのままの状態で我慢すえば、やっと1ページ読み込めたそうです(笑)ひどい。。。

比較
左:日本からアクセスした画面 右:中国からアクセスした画面

つまり、中国本土からは、海外のサーバー上に構築されたサイトは見れないに等しいので、中国語ページを作っても、存在しないのと一緒。中国に限っては、日本のサーバー上にある限り「コーポレートサイト」も「ブランドサイト」も、どちらも意味がなさそうです。

■では、海外向けWebサイトってどうすればいいのか?

私は、実体験から、「ブランドサイト」に関しては、現地代理店などと組んで、現地の人たちに作って運用してもらうのが一番成功への近道だなと感じています。

一般的に、海外向けWebサイトは、

「Google翻訳を使うよりは、翻訳会社に依頼した方がいいし、ネイティブのライターを入れた方がもっと良い。情報多寡な日本的なものよりは、グローバルに受け入れられるシンプルなデザインの方がいいし、現地の人が心地よいと感じる画像や色使い、言い回しなど、いわゆるローカライゼーション(現地化)を意識できるとさらに良い」

と言われています。しかし、日本人が現地のWebサイトを見よう見まねで作ったところで、やはりどこか違和感を感じます。私たちだって、一見流暢な日本語で書かれたWebサイトでも「海外サイトっぽいな」と感じると、一気に不信感が増しませんか?

ビジネスは、「信頼」がないと成り立ちません。

下手に作るくらいなら、やらない、もしくは、全部現地の人に任せる、という選択肢もありかと思います。

ちなみに、「コーポレートサイト」に関しては、中国向け以外であれば、進出国を決めた上で、現地で広く使われている言語の翻訳ページを、日本のサイトに追加するのは有効だと思います。(進出国の決定については #3無料のJETRO最強ツールが絶対オススメ をご参照ください)日本のサーバー上に作っても、「どんな企業か知りたい」「信用できる会社かどうか知りたい」と目的を持って見に来るので、多少読み込み時間がかかっても、読んでくれると思われます。

ただ、進出国を決めずに、「どの国に需要があるか把握したいので、主要な言語で浅く広く展開したい」という目的で、多言語化を進めても、翻訳コスト、運用更新コストを考えると、あまり現実的ではないと思います。

これから海外マーケット進出を考えられる企業様から、すでに海外展開されている企業様まで幅広くサポートしております。お気軽にお問い合わせください。

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