ケーキで危ない目にあった話

職員室にて、担任に家庭科で作った口中の水分が奪われるケーキを渡そうとしたが
「身体中の水分が奪われますが、どうぞ」
と、とんでもない兵器と化した。

「僕、何か恨みを買うような事しましたか……?」
と、担任が呟くと、担任の隣の席でスマホを没収した生徒を叱っていた教員の声が止まった。

改めてケーキについての説明に務めたが
「命までは奪いませんので」
と、最終段階の安全性を序盤に主張した為に、私のケーキは「かろうじて命は残るものの身体は干からびる」という更に凶悪な代物と化した。

隣のスマホの持ち込みなど非ではない程の何か凶悪なものが職員室に持ち込まれている。

隣の教師は、その間も懸命に校内でのスマホの使用禁止を生徒に訴えかけていたが、傍で私の蒸発型兵器の残酷な性能が明らかとなった事で言葉がブレたのか
「学校でスモンは禁止だろ!」
と、スマホに加え、新たに校内でのスモンの禁止が下された。
その瞬間、向かいの離れた席に着いていた外国人講師のスモン先生が「え?」という表情で顔を上げた。

スモン先生が、我が校で禁じられた存在となった。
職員室は空気を読まぬ体育教師以外のほぼ全ての教員達が自分の机に視線を向け、妙に静まりかえった。

スモン先生の熱視線が隣の教員の背に注がれている。
私は今朝スマホが担任に見つかり、担任が口を開くより先に先手を打ちスマホを預けていたので、お礼の兵器と引き換えに返却を要求した。
しかし、スモン先生が気になりすぎて
「引き換えにスマットマンを……」
と、声帯が疎かになり、アベンジャーズの敵にいそうな謎の人物が職員室に登場を果たした。

スモン先生の後任に悪の組織の影が揺らぎ始めた。
奇しくも、「蒸発型兵器」と「スマットマン」という、不穏な二つのカードがこの学校に揃わんとしている。

「誰なんです、その人……」
と、いう担任の冷静な疑問が、隣の教師に致命的な一撃を与えたのか、お叱りの言葉は完全に止まった。

少しした後に、隣の教員は椅子を回転させ
「ちょっと気が散るのでやめてもらえます?」
と、若干怒りながらこちらへ振り向くと、我々越しにスモン先生と隣の教員の視線が交わった。

隣の教員の説教は、その後再開する事はなかった。

【追記はこちら】
その後についての追記があります。
※心配される方がいらっしゃると思うので念の為に記しますが、勿論追記も無料でお読み頂けます。










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