職場で怖い目にあった話

ミーティングで、私はパワハラで有名な職員の標的にされ吊し上げにあっていたが、放屁に耐えていた為それどころではなかった。


話は耳に入ってこないが、尻に力は入っている状況が続いた。
相手の吊し上げに区切りがついたようなので、一旦トイレに行こうと決意し
「少し失礼」
と、申して席を立ったが、迫り来る放屁を全神経を集中させ抑えつけていた事により、いつになく真剣な表情となった為か、周りの者達が「涙を流す為の離席ではないか」と、心配そうに私を見つめた。

申し訳ないのでトイレに行く旨を
「お花を摘みに行きます」の要領で控えめな表現でお伝えする事にした。
しかし、尻に意識が集結していた為か
「尻の音を鳴らしてきます」
と、わりとダイレクトな宣言となってしまった。

あいつ絶対反省してないだろ、という空気が漂った。
とりあえず、涙を流しに行く訳ではないという事は伝わったが、その代わりに従業員としての態度的なものが犠牲となった。

ドアの前に移動し、気を取り直し一声かけてから行こうと
「諸事情により、一時離席を……」
まで申したところで我慢が決壊し、会議室に私の高音の尻の音が響いた。

諸事情が出てしまった。
表情だけは真顔を保ち平静を装おったが
「あ、もう大丈夫です」
と、述べて再び席に戻った為、明らかに放屁の為に離席しようとしていた事がバレてしまった。

パワハラ職員は、私の尻の音を前に言葉を失ったのか、その後何も言ってこなかった。

数日後、私のもとに
「前回のミーティングをスマホで録音していたので、パワハラの証拠として提出したい」
という、衝撃的な電話が入った。

私の放屁が、パワハラの証拠と共に提出されようとしている。
しかしながら、鈴虫の音は電話を通すと聞こえないというので、私の放屁が鈴虫と同等の周波数であれば録音に入っていないと推測される。

希望の光が差したかのように思われたが、電話口の者が録音の話になったあたりから声が震え始めた事を考えると、やはり高確率で放屁の音は録音されている。

私の放屁にヘルツが足りなかった為に大惨事である。
そのうえ、離席しようと手を上げた際に
「はい、やーこさん」
と、議長に名前を呼ばれた後に、尻の音を鳴らす発言をしていた為、明らかに私である事が周知される。

私の勤務態度が危ぶまれる事態である。

パワハラであるか否かを判断する者たちが、集中して音声に耳を傾ける中、突然尻の音を鳴らそうとする者が現れる事を思うと恐怖すら感じる。

パワハラは何も生まない。
身を滅ぼすだけである。
残るのは己の身から出た錆による制裁と、私の尻の音だけである。


【追記はこちら】
その後について書いてあります。






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