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友人の言葉

 先日まで、大学の気のおける友人と旅行をしていた。何度目かの卒業旅行だ。

 彼は自らの経験を踏まえて、僕にこう語ってくれた。

「もし、君が彼女のことを本気で愛しているならば、彼女も僕のことを同じくらいに愛していると信じなければならない」
「君が彼女のことを考えて切なくなったり、不安になったりするのと同じように、彼女もそんな状態にあると想像する。結果的にそうではなかったとしても、妄想だったとしても、その妄想で誰も悲しむことはない。そう考えたときに、君が彼女に対して、そして日常の些細な場面で、どう振る舞うべきかが見えてくるはずだ」

 エゴな生き物だ。いつの間にか、苦しんでいるのは自分だけなんだと錯覚してしまう。時に、彼女の言葉を心の底から信じきれなくなったり、愛の熱りが冷めてしまう予感に恐怖を感じたり、そんな苦悩の最中にいるのは自分だけなんだと。

 そんな中で、僕は彼女の存在が見えなくなっていた。友人の言葉は、僕にとって救いであると同時に、過ちを指摘するような鋭さがあった。

 自分がやられたら嫌なことは、人にしない。そんな当たり前で、思いやりの基本とも言えるようなことが、支配欲などの濁った感情でできなくなる。人を愛することの恐ろしさを感じる今日この頃だ。

 いずれにせよ、自らの過去を明かしながら、僕に寄り添い、話をしてくれたその友人に心の底から感謝をした。大学に入学して良かったと、改めて思う、そんな旅行だった。

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