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『9segs®︎』のフレームワークを活用して鍼灸院の「成長戦略」を考える(1)

 鍼灸業界はさまざまな情報に溢れていますが、考え方や押さえておくべきフレームワークなどの情報となると何故か一気に少なくなります。
 今回は、鍼灸院経営のうち顧客分析をどのように行うと成果が得られるのか、「9segs®︎」というフレームワークを例に、フレームワークの導入の重要なポイント、セグメント分析、PDCAサイクルの手順を解説します。
 このフレームワークを使用することで、成長させるべき顧客セグメントを特定し、患者さんが求める鍼灸師像、そしてその価値、具体化するアイディアを考慮し、施策の実行後の顧客動態を検証することが重要となります。


9segs(ナインセグズ)

9segs®︎とは?

 顧客を9つのセグメントに分けるフレームワークのことです。顧客起点マーケティングの提唱者である西口一希氏がこの9segsフレームワークを開発しました。
 鍼灸院の経営を考えていくにあたって、このフレームワークに則って、戦略を考え、施策を実行し、売上が向上していくことを目的としています。

 鍼灸院に来院した患者さんを「その日に来院したら終わり」ではなく、戦略、実行、効果測定を実施することで、中長期にわたる持続的な成長戦略を図ることができます。
 9segs®を活用することで、この「戦略➝実行➝効果測定」をフレームワーク上で管理でき、それらすべてが体系立ってアプローチすることができます。

9segs®︎の成長戦略

 9segs®︎とは、顧客を9つのセグメントに分けるフレームワークと先に述べましたが、この戦略は、「誰に(Who)、何を(What)提供するのか」というマーケティングの本質的な部分のことを指します。

 9segs®︎では最初に、セグメントをシンプルな分類として5つに分けます(図1)。


  • ロイヤル顧客:頻度高く通院している顧客

  • 一般顧客:今も通院している顧客

  • 離反顧客:以前通院していたが通院を辞めてしまった顧客

  • 認知・未来院顧客:知ってはいるが、まだ来院したことのない顧客

  • 未認知顧客:当院のことを知らない顧客

図1

 この中でロイヤル顧客と一般顧客は違いは、その利用頻度やリピート率、継続期間を基に定義されます。そして、これらの定量的なデータに加えて顧客が自院に対してどれほどの熱量を持っているのかも考慮されます。
 例えば、当院におけるロイヤル顧客とは、6ヶ月以上にわたり基本的に週に1回以上の頻度で通院している患者さんと定量的に定義づけをしています。また、ここには記載されていませんが、ロイヤル顧客よりもさらに上位の超ロイヤル顧客は、上記の定義に加えて知人や関係者を10人以上紹介してくれるインフルエンサーの役割を果たしてくれる患者さんを言います。


 続いて、「未認知顧客」を除いた、各セグメントで「積極顧客」と「消極顧客」に分けていきます。当院へ通院したいと検討している患者さんを「積極顧客」、他院への通院を検討している患者さんを「消極顧客」と定義し、4つのセグメントで適応させ、9つに分類します(図2)。

図2

 各セグメントに「積極顧客」と「消極顧客」に分ける理由は、例えばロイヤル顧客であっても次の2つの状態の顧客が含まれているからです。


  1. 自宅や通勤時に利用しやすいため頻繁に通院している患者さん(消極顧客

  2. 通いたい理由がある、自身が抱えている問題点を解決してくれそうな鍼灸師が在籍しいるなど理由は様々だが、次回も通いたいと思って頻繁に通院している患者さん(積極顧客


 消極顧客の場合であれば、積極顧客になってもらうための施策が必要となってきます。また、通いたい理由がある、患者さんが抱えている問題点を解決してくれそうな鍼灸師が在籍しているのにも関わらず、売上が伸び悩んでいる場合には通院頻度を上げるような施策が必要になってくると言えます。

 このように分類を5つに分けて「未認知顧客➝認知・未来院顧客➝離反顧客➝一般顧客➝ロイヤル顧客」へと引き上げることと、「消極顧客➝積極顧客」に変えていく施策と活動は、それぞれ分けたほうがよいと考えることができます。この9つのセグメントごとに分析を行い、最適なアプローチを考えることが鍼灸院経営に求められる”成長戦略”だと考えられます(図3)。

図3

パレートの法則

 9segs®︎に基づいて、顧客起点のアプローチをしていく前に「パレートの法則」を説明します。「パレートの法則」という言葉を知っていますか?
 パレートの法則は、全体の数値の8割は、全体を構成する2割が作り出しているという法則です。これを鍼灸院経営に当てはめると、全体の売上の8割は、2割の患者さんによって作り出されているということになります。すなわち、この2割の患者さんをとにかく大切にする施策や活動が鍼灸院経営を左右すると言っても過言ではありません。つまり、「一般顧客➝ロイヤル顧客」、「消極ロイヤル顧客➝積極ロイヤル顧客」になってもらう施策や活動こそが最も重要な戦略であると考えています。繁盛している鍼灸院には、必ずと言っていいほど熱心に通院してくれる患者さん(ロイヤル顧客)がいます。このような患者さんを1人でも増やすことが安定した鍼灸院経営を実現し、中長期にわたる鍼灸院成長の実現には必要不可欠な存在です。

次回について

次回は以下のアプローチを説明するとともに、当院の取り組みについてもご紹介させていただきます。

  1. 自院の成長には、どのような顧客を伸ばすべきなのか?

  2. データをもとにして、どのような顧客像をターゲットにするのか?

  3. その顧客にはどのような価値を提供すればいいのか?

  4. その価値はどのようなアイデアで具現化すればいいのか?

  5. 施策実行後に顧客動態はどう変化したのか?


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