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【研修レポート】プロの「生きもの屋」の生態系調査に同行したらめちゃくちゃ面白かった@山梨県・平林地区

みなさんこんにちは。愛媛在住のファシリテーター・いわし〜です。先日、人と生きものをつなぐ仕事をされている「環境指標生物」の社内研修にサポート役として同行させていただきました。動植物の知識が全くない私にとって、見聞きするすべてが新鮮で、めちゃくちゃ面白かった。(楽しさのあまり3,000字超え!純度高めのレポートをどうぞおたのしみください)

山梨県富士川町の平林地区にて。一泊二日の社内研修

環境指標生物(以下、BIO)さんは生物調査・生態系調査・自然環境調査を得意とするコンサルタント会社。哺乳類、両生類・爬虫類、鳥類、昆虫類、植物、魚類などのプロの方々がいらっしゃいます。通称、「生きもの屋」と呼ぶそうな。

今回、ファシリテーター仲間のもんちに「専門外の人にぜひ入ってもらって、関心を持ってどんどん聞いてほしい!」と声をかけていただき、ご一緒させていただくことに。

左がもんち(と娘さん)。昨年、高知県に遊びに行った時の写真

もんちは樹木医(樹木の診断・治療・保護に関する指導を行う専門家)で、元BIOのスタッフ。研修のテーマ、タイムスケジュールについては、もんちががっつり組み立ててくれ、当日は二人でファシリテーションを行いました。生態系や動植物に詳しくない私にとって、大変心強い存在でした。

普通が特別?自分にとっての「当たり前」に気づく

さて、朝の9時になると研修メンバーが各々の車で山梨に集ります。はじめに、地元の方から平林での暮らしや棚田のオーナー制度などのお話をお伺いしました。
今回の研修の大きな目的は、調査員の皆さんが専門外の人に対して分かりやすく説明できるようになること。調査結果の「報告」ではなく、多様な視点を地元の人に「伝える」ことを意識しながら3班に分かれて地域を歩きます。

今回の研修のテーマ、ババン!と発表

事前に地図を見て「この辺りだと人家と林が近いので、色々見れそうですね」など自然環境や高低差などの地理情報をメンバー内で共有してから、調査場所をざっくり決めて、外に出る。話し合いの観点も、自分にはない視点。
私が一番驚いたのは、調査をするときの格好。カメラ、網、長靴、捕獲用のアレコレ(小さい虫を捕まえるために自作したグッズなど)。リュックから、ポケットから…ドラえもんの四次元ポケット並みに出てくる出てくる!

観察用グッズの一つ。小学生の時に理科の授業で見たやつだ!

観察・調査のために着替えること、細かなグッズを持ち歩くことは普通だそうで(そりゃそうだ)、「その道具、一体何に使うんですか!?」「その上着なんでも入りますね、便利!」と子供心に聞きまくっていました。

1時間歩いて見つけた植物リストを見せてもらう(まだこれでも少ない方らしい)

BIOの皆さんにとっては、これが当たり前の光景。でも私にとっては、全てが特別で初体験。感動したことは素直に「すごい!」と口に出し、わからないことはその都度尋ねるように心がける———。「皆さんにとっての普通や当たり前が、私にはこう見えているよ」という視点を大切にして、調査に同行させていただきました。

植物、爬虫類、水生、鳥類、昆虫…それぞれの専門分野で見る視点も違う

ライトトラップ!夜のおたのしみ

辺りが真っ暗になった頃、「おーい、みんなー!コガタガムシがきたぞー!」と裏庭から声が響く。白い布を立て、虫たちが光に寄せられてくるトラップを仕掛けてあり、珍しい昆虫がきた模様。BBQ中にも関わらず、食べ物そっちのけで駆け足でみんなが集まる。

光に集まる私たちも虫のよう。この光景も生きもの屋ならでは?

「おーこれはこれは!」「この蛾、ナイト(騎士)みたい」「蝶より蛾の方がかっこいいね」とみんな興味津々。目を爛々にして語りだす調査員の皆さん。「このカメムシね、ハイチュウの香りがするんですよ」「(嗅いでみて)…ほんとだ、りんご味!」と私。

私のお気に入りの虫。黄金に見えるボディがかっこいい
後日、「あの虫、名前なんでしたっけ?」と聞いたら素晴らしい回答が返ってきた

今感じていることを話したい、自分の好きなことを聞いてもらいたい。相手の話したい気持ちに耳を傾けて、その人の気持ちを聞く。聞けば聞くほど、話し手がどんどんイキイキしてくる。説明上手になろう、伝え方上手になろう、ではなく、そこに「関心を持って聞いてくれる相手がいるかどうか」。聞き手の存在で、話し手の伝え方が変わるのかもしれない。そう思った夜のおたのしみ時間でした。

夜遅く、ムササビ探しに神社へ出かけると、珍しい「シロマダラ」を発見!
ここでも大盛り上がり

カタリストさんの存在

今回の研修で欠かせなかったのが、カタリストの存在。調査員ではない方々に「カタリスト」という立場でご参加いただきました。これは特定の役職ではなく、場に刺激を与えてくれる方々のこと。今回は、経理や事務を担当しているBIOスタッフ、BIOと一緒にお仕事をしている建設コンサルタント会社・復建エンジニアリングの若手スタッフにも入っていただきました。

各班にカタリストさんが入り素朴な疑問や感じたことを投げかけていく

「私が普段入力している調査データってここからきているのか!」「事務所では静かなのに調査に出かけるとみんなイキイキしててびっくり…」「この生物がいることで、環境的にこういうことが考えられるかも。どう思います?」と全く違う視点のフィードバックをいただくことで、皆の視野がさらに広がる。全く異なる分野の人たちが、同じ体験を通して、中にぐっと入り込む。そして交わりの中での気づくこと。社内研修を行う際、多様な人々との交流は、学びをより深めるための大切な要素の一つと言えるかもしれませんね。

まとめの作業。カタリストさんが書いていると、「色塗り手伝うよ!」「僕も棚田描こうかな」とみんな動き出す

地元の方にお披露目

さて、研修2日目は全体のまとめと発表です。午後3時には地元の方々が公民館に集まってきます。「どういう会場づくりをしたら聞きやすいか・伝わるだろう?」「何をどういう風に誰が発表する?」を全員で考えながら迎える準備を進めます。

想定よりも多くの方に来ていただきびっくり

はじめに、「棚田へのご縁とどうして私たちが平林に来たのか?」をお伝えし、生きもの屋から見た「平林ってこんなところ」「平林のここがすごい!」「平林のここが心配」「こうしたらいいかも!」を発表しました。こんな生きものいたんだ!他の人から見たらこう見えるのねと地元の方々も興味津々。

調査員にとって、地元の方との交流はめったにない経験だそう

発表後は、感想・質問タイム。地元の商店街でばったり旧友に会ったかのような感覚で話してもらえたら、と思い、椅子を退けて立ち話スタイルで行います。ディスプレイ前で鳥の写真を見せながら話したり、生態系をまとめた地図の前で鳥獣害の話をしたり、平林に初めてきた感想を伝えあったり、会場の中で小さな交流の場がいくつも生まれていました。

「人の営み、田畑の手入れがあってこそバランスの良い生態系が生まれている」とBIOスタッフ

【本の紹介】自然や生きものの声をきく

生きものとの共存、あり方。以前、屋久島で購入した本を思い出したので、また読んでみよう。

そして、今回の研修に先立って事前に読んでいたのが、鷲田清一さんの本です。少し難しい内容だけど、ファシリテーターやグラフィックレコーダーの方々におすすめしたい一冊。「きく」という行為について、改めて深く考えるきっかけを与えてくれます。

共に感じる成長の瞬間が私の原動力

人と組織が育つ、芽吹く瞬間。成長を共に見届ける楽しさ。ファシリテーションやグラフィックレコーディングはあくまで手段であり、私にとってはスキルの一つ。こうやってお役に立てれることが嬉しい。やっぱり私、今自分がやっているおしごと、とっても好きだなー。

二日間の振り返りの時間

この二日間、たくさんの方にお世話になりました。声をかけてくれたファシリテーター仲間のもんち、当日には買い出しや会場準備など細やかにサポートしてくださったバクさん。そして「研修は二人にお任せします」と全幅の信頼を寄せてくれたBIO代表の高木さん。平林の棚田に癒されながら、皆さんからたくさんの刺激を受けた時間でした(宿泊先の平林たはたの宿もとてもよかった)。

愛媛から山梨までお呼びいただき、スタッフの皆さんと一緒に学びと成長の場を共有できたことに心から感謝いたします。ありがとうございました。また私と一緒に遊んでください〜!

聞いてくれる人がいるからこそ、伝えたくなる。平林の皆さんと一緒に!


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