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1年ほどの映画雑記①

 ここ最近読んでばっかり(仕事)なので書きたい欲求がすさまじく、しかし考えているあれこれを並べて整理して編む余裕がないので雑文で心を宥める。

『マリッジ・ストーリー』
 どんなに怒っていたとしても絶対に言っちゃいけないことを口にしてしまった時の、言葉が口からすべり落ちたその瞬間から後悔する感じが脳天に来た。自分すらその言葉の被害者に思えるような、空々しい他人ごと感。自分や相手の感情とは離れたところでの、容赦ない「取り返しがつかない」感覚がめちゃくちゃリアル。長くもない人生がフラッシュバックしてしんどい。
 お互いに本心で言っていないのがわかっていても、許せない言葉というのはあり、結果は決裂でしかありえない。それでも「本心で言ったわけじゃないんだ」という釈明や「愛だったもの」を汲んで、正しい/善い対応をしようとする理性には、せめても報いがあってほしい。なんだか救われた。

『パラサイト』
 途中から狂気が加速する感じ、圧倒的ポンジュノ節なんだけど、序盤をコミカルにしてこっちの倫理観をゆるめてくるところが洗練されてて好き。楽しいなー、可笑しいなーって笑いながら見ていて、あるタイミングでふと、「あれ、これとっくに倫理の一線越えているわ」となる瞬間が怖い。そこからはずっともう、あーーーーあかん、あーーーーー、だめ、ほらーーーーって心の中で叫びつづけていた。 
 多分気のせいだとは思うんだけど(気のせいであってほしい)大事な場面のインターホンの、ピンポンの「ピン」の方、ちょっと音低い気がしてきもちわる怖かった。本当に低かったら天才的演出、ポンジュノに一生ついて行きます、なので抽出して確かめたい。
 会社の同僚が『パラサイト』にはまりすぎて、社内の移動書棚で「パラサイトごっこ」をしているという話を聞いて、一気に好きになった。お返しに私が時々ひとりでしている「三体ごっこ」の話をした。友達ができました。
※以下、パラサイトに触発されてポンジュノを3本ネトフリで観た。

※『殺人の追憶』
 露悪的で辟易してしまった。

※『母なる証明』
 元々好きな映画だったけど、パラサイト後にもう一度見て、あーーーーーこれが創作の軌跡!!!! となって(自己)満足です。途中から狂気が加速する感じ、とても似ているが、パラサイトの方がエンタメとして洗練されていてキャッチーでコミカルで段差がすごい。
 いちばん好きなのは、終盤でウォンビンが「なんで犯人は死体を屋上に引っ張ってったんだろうねぇ」って考えて、「きっと誰かに気がついてほしくて高いとこに引っ張ってったんだね」って言うところ。
 彼にはきっと本当に殺した記憶が無い。でも、小さい頃母に殺されかけたことを急に思い出したように、抑圧されてた記憶がポンっと繋がる時がいつか来るかもしれない。お母さんは一生それを恐れながら生きるんだろう。だからせっせと太ももに鍼をうつ。ラストシーン怖すぎて泣いてしまう。

※『スノーピアサー』
 序盤の車両ぶちぬいて行くあたりの勢いはすごく好きだけど、「考えさせられる……」っていう感じの終わり方でシュンとなった。ディストピア物語に、何はなくともエンタメ性! を求めてしまうのは悪い癖かもしれない。

『エクストリーム・ジョブ』
 『パラサイト』とこれを2連続で観たので、韓国映画最高!! もう韓国映画しか見ない!!! という気分(言葉の綾)です。ヤンニョムチキン食べたくなりすぎて買いに行った。なんだろう、もうほんっとにギリギリのところでありえない、絶妙なフィクション。

『1917』
 全編ワンカット/驚愕のワンカット映像!! と予告などで大々的に煽っていたので、ワンカット映画だと思わされて観ており、内容よりも、えっどうやって・・・・・・? に頭を持って行かれていた。公式HP最後まで(しかもTOPページではない)読むと『全編を通してワンカットに見える映像』ってちゃんと書いてあるオチ。ハッタリもここまでくると清々しくて良い。ワンカットには見えなかったけど面白かった。
 一緒に見に行った人も同じ心境だったらしく、「終盤(めちゃくちゃシリアスで大事な場面)ベネディクト・カンバーバッチが出てきたとき、2時間ここで待ってたのかなって思っちゃった」と言っていて、可愛かった。

『天気の子』
 もはやこれで誰かを敵に回しても構わないほどに、近年最大値のストレスフル映画。映画館であまりのストレスに頭を抱えたものの、『ストーリーオブマイライフ』→『ナウシカ』からの3本目だったので対戦相手が悪すぎた可能性を鑑み、地上波でも観た。結果再び頭を抱えた。何これ……?
 選択肢を間違い続けて2回も銃をぶっぱなす破滅型主人公が、マッチポンプ活動で(彼女の)ヒーローになる話? 賛否両論と言われるラストにはそこまで否定的な感想は持たなかったが(流されただけで何も選択してないじゃんとは思ったけど)もはやそこまで気持ちは辿り着かない。

『ジョーカー』
 本当は話題になっていた時に映画館で観たかったんだけど、生真面目が災いして、「ダークナイトとバットマンを履修してからでないと……」と思いこんでしまったのでだいぶ時間がかかって家で観た。いつもそうだ。マーベルの最新作(話題沸騰だったエンドゲーム)を劇場で観たいばかりに、他21作を半年で観たと言ったら、私の妄執が過不足なく伝わるだろうか。
 全部おもしろかったけど、特にちっちゃなピエロを逃がすとこが好き。八つ墓村のモチーフになった津山事件のwikiを思い出した。「お前はわしの悪口を言わんじゃったから、堪えてやるけんの」ってやつ。現実を引き合いに出すのはあまり良くない気もしつつ、ストーリー性のある悪役というのはつまりそういうことだな……とスッと結びついた。 
※以下、ジョーカー視聴準備のために家で観た2作。

※『ダークナイト』
 総員もうすこしよく考えて……! ドラマの起伏にはミステイクが必要なのは分かっていてもしんどい。ジョーカーの人間性にブレを感じたけどそれが意図的なのかわからない。私はバットマンのジョーカーの方が好き。

※『バットマン』
 要所要所に、ティム・バートンすぎるファニーな可愛さ。悪役もカラフルだとチャーミングに見える。

『CATS』
 いつも家の猫の動きをみて、優雅だな可愛いなと思っている分、同じ動きを人間がするとこんなにグロテスク? という感想に。せっかく歌える役者揃いにも関わらず、曲の盛り上がりをBGMの音量で強制メイキングされるとモヤモヤしてしまう。
 会社の同僚と、研修帰りに集団を抜けて、そのまま映画館で当日券を買うえっもい流れに免じてかろうじて耐えられた3時間。

『TENNET』
 ループもの好きマンとしてはだな……と思って観たんですけど、そういう楽しみ方をするには理解がしっかり追いつかなかったので悲しいマンです。
きっともう一回観たらもっと面白いんだろうなという確信がありつつ、それでも観なおす気力はしばらく出ないよぉ……というくらい情報過密だった。

『君の名前でぼくを呼んで』
 シャラメ愛好家としては観ないわけはないが、そして当然のように好きだったが、『サスペリア』と同じ監督なのはどうしても信じられない。どっちも「美しい……」って思って撮ってたらめちゃくちゃ怖いな。ひとりオールナイト上映デビューを果たして満足。

以上! ほんとうは『ストーリーオブマイライフ』について、いちばん文章にしたかったんだけど、考えるうちに、映画自体の話ではなくなってしまったのでいつか。

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