マガジンのカバー画像

埴輪紹介所

183
はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
運営しているクリエイター

2020年5月の記事一覧

シルエットと顔【埴輪紹介所その56】

長い首は美しい曲線。 体は失われているけれど、 残された顔が埋め合わせて余りある。 美しいだけではないのが埴輪。 伝・大阪府羽曳野市の誉田御廟山古墳(応神天皇陵古墳)出土の鳥形埴輪。 全身が出土した鳥もあります。 同じ古墳から出土した(らしい)のに、顔、特に目が違うのが不思議。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は『発掘された日本列島2014』(江戸東京博物館)にて。 またね。

当時おまるはなかった【埴輪紹介所その55】

たぶん。 鳥形埴輪は概しておまる感がつよい。 円筒台との境目の突帯(とったい)のせいかなあ。 水面を表しているつもりなのかな。あるいは地面。 この鳥は目が線刻。 鼻の穴が縦長。 お尻の孔が大きすぎる。 欠けたのか、空気孔としてわざと大きくあけたか。 尾羽がいちおう線刻されている。 全体が白っぽいこともあって、白鳥っぽい。 伝・大阪府羽曳野市の誉田御廟山古墳(応神天皇陵古墳)出土の鳥形埴輪。高さ61.8㎝。 同じ古墳から出土した(らしい)鳥形埴輪がほかにもあります。

鳥の足跡?【埴輪紹介所その54】

どこについているかというと、 このがっちりした円筒です。 割れ目と区別がつきにくいですが、よく観察すると見えてくる。 鳥の足跡っぽい三本線。 鳥の足を図案化すると、埴輪の時代からこうなるのか。 それを円筒に描いた? だとして、なぜ描いた? それとも、鳥の足とは関係のない図なのか? 内外にハケ目。 しっかり突き出す太めの突帯(とったい)。円い透孔(すかしあな)。 そこまでは典型的な円筒埴輪だが、線刻がある点は注目に値する。 この線刻は「ヘラ記号」と呼ばれるものかもし

その瞳にくぎづけ【埴輪紹介所その53】

実際にこんな目の鳥がいるだろうか? 長い首、平べったいくちばし、体型などから推測するに白鳥か。 白鳥だとして、この目はどうなのか。 くぼみの周りに円を描く目。独特の表情が生まれている。 ちなみに、鳥形埴輪の目の標準型は、円い線刻かくぼみのどちらか一方のみ。 脚を見てみよう。 右足、線刻。ラフ。直しにしてもラフ。 左足。この粗さがまたたまらない。 この埴輪は粘土の色合いや質感などもいい。 ちなみに、おまる形の鳥形埴輪の脚は、立体的なものと線刻とがある。 ちなみ

性別不明のスーパープリンス国宝くん【埴輪紹介所その52】

なぜこの埴輪が国宝か。 埴輪をたくさん見ていれば、すぐ見当がつく。 装備の充実。 全身に甲をまとう。 上半身には挂甲(けいこう)、腰からは草摺(くさずり)が続く。 肩甲、前腕を覆う籠手(こて)、太ももを覆う膝甲(ひざよろい)、膝からくるぶしを覆う臑当(すねあて)など。 右手に大刀、左手に弓。 左手首には弦の跳ね返り防止の鞆を巻く。 背面も抜かりない。 矢入れのユギを背負う。ただし、実物に比べかなり小さい。 ここまで完全武装している埴輪はほかにない。重そう。 そして、

お猿ですね【埴輪紹介所その51】

分かりやすいって大事。 ちょっと顔が赤い。 目が寄っている。 鼻の下が長い、というか、口の位置が低い。 鼻は長い。ちょっと欠けている。 おそらくニホンザル。 その顔の右に C字の剥離痕。 左には逆さのC。 痕だけでも猿らしい耳だったことがわかるよ。 聞こえないか… 背中にも、何かが剥がれたあと。 子猿であろうと皆が言う。私もそう思う。 だとすると、この猿は母猿。雌猿ということになる。 猿の性別は見分けにくそう。しかも埴輪の猿。全身像は未発掘。 性別はともかくとして

鵜と魚と鈴の関係【埴輪紹介所その50】

掲げた魚は何の魚だろう。 長い首をのばして、精いっぱい高く掲げている。 長い首に紐が巻かれている。鵜飼いの鵜でしょう。 その紐にまるい鈴がついている。これは埴輪だからかな? 実際つけていたら、潜るのに邪魔そう。 水の中では音が鳴らないし。いや鳴るのか? 鳴ったとして、うるさいだけか。魚に逃げられそう。 鳥形埴輪には珍しく、頭部が空洞。 孔は、くちばしに近いほうから、鼻、目、耳。たぶん。 尾が長い。 筒状。 左右の翼と足は線刻。 ほかでも鵜形埴輪は出土しているが

屈託のない笑顔そのもの?【埴輪紹介所その49】

笑顔の埴輪を作ろうとして、見事に笑顔の埴輪ができた。 作り手が見える気がする。つながる気がする。 大きな耳と不思議な被り物。 笄帽(こうがいぼう)と呼ばれる帽子なのか。 ツノかも。髪型かも。 盾持ち人埴輪とかな? あるいは盾の妖精。 しかし笑いは攻撃手段でもある。 「笑いものにする」という言葉がある。 この埴輪は攻撃しているようには見えないが。 茨城県高萩向原出土の人物埴輪。 所蔵は東京大学。 撮影は2016年、東京大学総合研究博物館の常設展示(UMUTオープンラボ 

泣いてるの? 怒ってるの?【埴輪紹介所その48】

わあわあ言ってるらしいことはわかる。 大きな目と大きな口で、何かを訴える。 現代人には聞き取れない? いや聞こえそう。埴輪はそれぐらい現代日本人にも近しい。 冑と盾が連携するように横に広がる。 盾には線刻と彩色。鋸歯紋×赤は埴輪スタンダード。 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ102cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違う頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 保渡田八幡塚古墳の二重の周壕の内堤には人

みんなを守る大胆なS、粗いT【埴輪紹介所その47】

盾はヒレのようで、体は円筒そのまま。かぶり物も、長いが装飾なし。 顔に注目せざるを得ない。 耳がステキ。 耳と耳環(じかん)が一体的に表現されている。 ここだけがカーブを描く。ひらりと大胆なS字。オシャレ。 そういえば耳たぶの形と柔らかさって面白い。 突き出した眉。眉というより骨か。つながっている。 鼻もつながっている。結果T字形。粗い。 粗いが、埴輪らしくて良い。 ちなみに、人物埴輪はたいてい耳環をつけている。 頸飾りも多いけど、彼はつけていない。 口がひらいてい

へきじゃへきじゃ【埴輪紹介所番外編】

ちょくちょくお世話になっているトーハクのこんな記事を見つけた。 埴輪、とくに鶏形埴輪や武具形埴輪は辟邪(へきじゃ。邪悪な物を退ける)の祈りを込めて作られたという考えが紹介されている。 どこかに怖さのある鶏形埴輪はその可能性を感じなくもない。 矢入れのユギは背負い板が大きく作られているあたり、さえぎるという意思を感じる。 「消火器形埴輪」から改名した埴輪も、辟邪のためというのなら改名せずとも方向性は合っていた。 武具形埴輪に連なるものとして「盾持ち人埴輪」がある。

宇宙こそ彼の頭脳【埴輪紹介所その46】

あごを隠して笑う。 彼のあごを隠しているのは盾。 ギザギザ鋸歯紋が刻まれている。 そして彼の盾は しなる。 こんなにも。 後姿。 盾がまるで振袖。 埴輪は円筒が基本。 一本だけの突帯(とったい)、なぜ巻いたのか。 彼のように前面に盾をつけた埴輪を「盾持ち人埴輪」と呼ぶ。 しかし盾を持つ手はないのだった。 あたま全開。 あるいは宇宙こそ彼の頭脳。 茨城県つくば市下横場字塚原出土の盾持ち人埴輪。高さ61.3㎝。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2018年、トーハ

しぶい、しぶすぎる【埴輪紹介所その45】

この色を何と呼ぼう。 チャコールグレー、とでも言おうか。 断面も同じ色。 そして見るからに硬い。つややか。焼き締まっている。 埴輪の地色は胎土の成分と焼き方に左右される。 たぶん還元焼成されたのでしょう。 多くの埴輪は茶系。 だから、この色は珍しい。一見、埴輪と思えない色なのである。 でも見逃さない。 埴輪であることは、シルエットでわかる。 突帯(とったい)や透孔(すかしあな)が教えてくれる。 さらによく見ると、突帯の中央がへこんでいる。 ハケ目が縦横に走っている

お屋根ぱっかりぎりぎり四角【埴輪紹介所その44】

これなんだと思われます? 家だそうです。お屋根があいてます。ドーム? 閉じられないが。 雨が入り放題でも、埴輪だからいいか。いいか? 全体を見れば、 まあ家か。 下部の縦にのびる突帯(とったい)で、ぎりぎり四角。 何の埴輪にせよ、孔の位置がおかしいけど。 でも ここだけ見ると… 鋲いっぱいのヨロイ? 短甲と草摺っぽい。 くびれがウエストっぽい。 脇の孔が腕を出すところみたい。 甲形埴輪もしくは甲を着た人物埴輪を作ろうとして、 途中で気が変わって入母屋造りの家形