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きのう何食べた?season2

2019年のシーズン1からSPや映画も見ており、シーズン2の放送が決定した時は「そうかそうか、またやってくれるのね」と穏やかな喜びを感じた。

弁護士のシロさんとその恋人で美容師のケンジの二人暮らしを中心に、それぞれの職場や両親、友人たちとのあたたかな日常が描かれている。
よしながふみ原作は読んでいないのだが、ドラマ単体でもその物語の良さが十分に伝わってくる。


シーズン2では今までよりも、シロさんがケンジへ向けた想いが丁寧に描かれている感じがする。
50代になったシロさんがこれまでのケンジとの生活や将来の姿を考え、悩みつつも共に歩んでいく様子が各話で少しずつ紡がれる。

自分が印象に残った場面は第5話、シロさんが元カレのことをケンジに話した後、晩ごはんに使う予定だった玉ねぎをケンジが急いで買いに行くシーン。

ああ...そうか。俺、いま幸せなんだ。

水漏れ用のホースを買ってきてくれたり洗濯物をたたんでくれたり、日常の何気ないケンジの気遣いに改めて気づいたシロさん。幸せは大きな喜びよりも小さな積み重ね。
涙で目を潤ませながらの西島さんの演技が本当に素晴らしい。

それからこれはどの話でもそうなのだが、シロさんの料理へのケンジの反応や感想がいつも満点。「うわ〜楽しみ!」「美味しい〜!」などちゃんと言葉にしているのが、(ちょっと口数多い気もするけど)見ていて嬉しくなる。こうやって言ってもらえるならシロさんも料理作りたくなるだろうなと思った。作ってくれた人への感謝や感想、思ってても言わないことってあるよなと少し自分に反省もした。

さらに今回は何度か登場した田渕くんと千波ちゃんのシーン。料理の味付けが微妙に美味しくなくて自信をなくしている千波ちゃんへ、田渕くんがお菓子作りをしてみたらと提案する。

いいじゃん、やってみようよ。
千波の性格ぜったい向いてると思うよ。

落ち込む彼女を励ますのでなく、向いてそうなことを一緒にやろうと言ってみる。この言葉も相手をよく見ていて想っていないと出ないなと思う。
挑戦したフィナンシェはとても美味しくできて、喜んで食べてくれる田渕くんを見る千波ちゃんがすごく嬉しそうで安心した。

登場人物それぞれが大切な人をどう想っているのか、その気持ちをしっかり言葉として表現してくれる。現実世界では大切な人にこそ自分の気持ちを伝えられずすれ違ってしまうことが往々にしてあるが、この物語を見て言葉にして相手へ届けることの大事さをとても感じた。


この物語はゲイやLGBTQについて触れる場面も何度かあり、その度にパートナーとは何か、結婚とは何なのかと考えさせられる。
特に最終回でケンジが言った一言は胸に刺さった。

だいたい俺、家族って言ったてシロさんと親子になりたいんじゃないもん。

一般に同性のパートナーに遺産を相続させるには養子縁組が有効な手段として提示されているが、当事者の気持ちは「パートナーとして公にも認められたい」ということ。それが今の日本では不可能である。パートナーシップ制度ができた現在でも、それはやはり結婚とは違う。
そういう実情を物語の中に散りばめているのは、ドキュメンタリーやノンフィクションよりも接しやすくでもちゃんと伝わると思った。


この物語は人を想い伝えること、関係を繋ぐこと、そんな生きていれば必ず誰かと接する日々にありふれた大切なことをシリーズを通して伝えている。
シロさんやケンジのような気持ちを自分も大切な人に対してもち続け、ちゃんと言葉にしたい。

それになんといっても料理がどれも美味しそうだ。作って食べて喜びを分かち合う、その小さな尊さを教えてくれた。

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