柿話(かきばなし)

閉店してしまったけれど「ストッカー」。すんごく安くて、歩いて7、8分。年柄年中、御用達。町内の御用達店として長い間、君臨していたスーパーである。

真っ直ぐに歩く。角にあるマンションをひょいと曲って、ずっと歩けば、大きな看板が迎えてくれる。途中、何軒かの家を見る。Nさんちで目立つのが、柿の木だ。玄関横に植えられた幹が、二階にまで届いている。太い幹から、段々と枝へ、枝先へ。全ての枝先には毎年、美味しそうに色づいた実が大きい。鈴なりだ。(美味しそうだなぁ)通りすがる度、見上げた。<子規喰いし 柿の種類は 何ぞもし>俳句なんぞを作る。(あ~っ、美味しそ。美味しそ。美味しそう)呪文のように唱えては、見上げる日。時折、部屋の中から見ている人と眼が合ったりして恥ずかしかったが、気にしなかった。

とある日。いつものようにNさんちの柿を見上げ、ストッカーへ。店内をブラブラしていると、柿。パック入りの柿が目に入った。中くらいのが6個。特売だ。(美味しそう)瞬間、欲するものがあってから、(・・・・けど、あそこの家には)自然、繋がる果実がある。後ろ髪を引かれる思いで、いつもの買い物をした。

帰り道、Nさんちに近づいた。駐車場で誰かを待ってる人がいる。ステテコ姿のおじさんだ。目が合う。「柿、喰う?」。橙色に艶めく大きい柿を、3個も下さったのである。(えっ?)びっくりしたが、「ありがとうございます」素直に頂いた。「もっとあるよ」「いいです。これで」嬉しいお土産がついた、帰り道であった。

(毎度、毎度、物欲しそうに見上げる奴がいる)(あっ、今日も!)(確か昨日も見てたよな。どこに住んでいるんだろう?)懐疑的な好奇心から、(しょーがねぇなぁ。恵んでやるか)(悪い事するような奴には見えないし、小心者っぽいから大丈夫だろう)平和的な決断へとなったのだろう。

いやはや、見上げるものですな。少し熟れ過ぎな所もあったが、甘く、美味しく頂きました。昔話に<さるかに合戦>があるけども、柿は何の役割りでしたっけ?

妹にゆきさつを話したら驚愕そして大笑い。柿の役割を聞いたら「さぁ?」わたしも完全、忘れている。忘却姉妹(?)二人揃って忘れているなんて、ねぇ。仕方ないか。なので、宿題。YouTubeで、おさらい。「漫画日本昔話」で探し、もう一度見よう。


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