目印は、、、、<短歌>


〇目印は 赤いリボンの ドアのノブ
     「わたしのおうち」 少女の認識

    

5歳半ぐらいの時。群馬から千葉に引っ越した。
一軒家から、団地へ。共に社宅である。
越して何日か経った頃、買い物から帰ろうとしたわたしは、困ってしまった。
見上げる団地の窓が、どれもこれも同じで、自分の家が分からない。
ずっと分からず、遂に入口の階段付近、駐輪場で泣いてしまった。
5、6分後。
声が聞こえたか?親のカンか?
「どうしたの?」とある窓から母が姿をあらわした。

「家が分からない。みんな同じだから」
「今、下にゆくから」
笑いながら迎えに来てくれた。
翌日
「じゃあ、ドアに赤いリボンを結んでおこうね。だったら分かるでしょ」
赤くて綺麗。半透明なリボンを器用に巻きつけながら、母がわたしに言う。
少し短い気もしたが、単なる目印だ。
「うん」
わたしは頷いた。

半年ぐらい、だからウチのドアノブだけは、赤いリボンが結ばれていた。
「何だありゃ?」
父の問いに、「だって、お姉ちゃんが」
「何でつけてるの?」
ご近所さんの答えでも、「分んないから。あの子が」

聞かれる度に、母が半分苦笑、半分(はぁ~っ)の表情で答えるのが、
恥ずかしかった。



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