遠い思い出

高3のクリスマス、に近い某日。学校での事。女子高ならではのお楽しみ(?)。家庭科の授業で、クリスマスケーキの飾りつけをした。

既にスポンジケーキはある。1人に1個、配られる。そこからのお楽しみ。ナイフを入れて半分に切る。半分に切ったケーキの断面に、ホイップ・クリームを薄く伸ばす。残りを絞り口つきの袋に入れ、絞り口からホイップ・クリームを絞り出す。後はおのおの自由に、飾りつけ。

いかにも女子高.女の子ちゃん達の夢。大好きなのに決まっている。きゃぴきゃぴしながら弾むように作業を進める姿が思い浮んで来よう。が、特にわたしは喜ばない。きゃぴきゃぴ=無縁であって、我、関せず。ケーキは好きだが、こういう作業はご免である。出来れば他人に任せたい。(あ~っ)一人暗澹となった。人の五倍は、不器用だ。

モロに気持ちが、初っ端から出た。スポンジを半分に切る行程からして、ダメダメ。ちょーダメダメ。どうにしたって斜めになる。ちゃんと切れない。平行にゆかない。真っ直ぐに!心意気はにこちゃんであるが、歩く道のり、こまったちゃん。酷い傾斜に知らずとなった。通りすがった担当教師も呆れている。

イヤになった。抜け出したい。恥をかくだけ、恥の大塗り、天子盛り。と、「何じゃい!」ふと見た。某さんだ。余りのダメダメさに怒り狂ったらしい。「貸しんしゃいッ!」ぼーっとしているわたしから、サッとナイフをぶん取り、更に激怒。

「こうすんのよッ!何なのあなたはッ!どこまで不器用なのッ!可哀想だわッ、スポンジちゃまがッ!わたしが全て引き受けますッ!」傾斜をどうにか平面にしてくれ、断面に薄くホイップ。クリームも縫ってくれた。コイツは無理だと悟った故か、曲面側にも完璧に美しく塗ってくれる。(・・・・)ボーっと見ているそばから、サッサ、サッサとしてくれる某さん。何と飾りつけまでをしてくれたのだ。

某さんは、美術系の学校目指し、毎週、デッサン塾にも通っていた。才能がここでも発揮されたのだ。

「お姉ちゃんがしたの?この飾りつけを?嘘だぁ~っ!」某さん作の飾りつけを帰宅後、わたしがしたと家族を誤魔化すのに、どれだけ苦労したか。

遠い昔の思い出だ。持つべきものは、友ですなァ。黙っていても助けてくれる、完璧に代行(?)してくれる友です。ありがとう、友よ。






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