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虫の見る夢

読書に没頭する人の事を、本の虫という。私はがつがつと読むときもあれば全く読まない時もあるが、基本的にゆるゆると読み進めるタイプだと思います。そんな私でも、あまり読まない方たちから見ると本の虫の端くれなのでしょう。


読み始めたのは3~4歳からだったと母は言います。字を書けはしないものの、読むことはできたらしい。運のよいことに、母方の祖母の家には母が小さい頃に読んでいた多くの童話集や絵本、小説や漫画などがそのままになっていたため、読むものに困りませんでした。私が本の虫の一端を担うのは、生まれる前から環境的に決まっていたことなのかもしれません。

高校の時に無頼派作家たち、とくに坂口安吾の魅力に取りつかれてしまった。きっかけはと言うと、実は文豪ストレイドッグス、漫画からでした。当時私や周りの友達の間で大いにこの作品が流行った。漫画の布教主がこっそりと学校に漫画を持ち込んでは魅力を広め続けた結果、皆が推しキャラのグッズを集め始めるのは勿論、実際の作家たちの作品を読み進め、好きな作品を独自に開拓し始める現象が起こった。私はとくにキャラデザインがどストレートでしたが、彼自身の作品にも深くはまり、安吾のことをもっと知りたくて文学部に入りました。

ここまで読むと、7等星は典型的な文系に思われましょう。確かに数学が大の苦手な文系です。しかし、私は理系、とくに植物学にも興味があって本当は理系に進んで植物学を学びたかった。美しい花を咲かせるのも不思議だし、声も発さずただその土地で一生を全うしていく彼らの事をもっと知りたいと思っていました。実際にはそれはかないませんでしたが、読書体験を通じて研究の末端に触れることはできるようになった。

この三浦しをんさんの「愛なき世界」は読書をしつつも植物研究の姿勢を身近に感じることのできる名著だ。ストーリーや設定も勿論好きだが、研究の仕方がみっちりと書かれているのがたまらない。三浦さんはどれほど取材を重ねてここまでの長編を書き上げたのだろうか。恩恵に授かりつつ、私も作中のわからない専門用語を調べながら読みました。
確かに植物は人間とは違って愛のない生き物だ。それと人間の愛に振り回されつつも何とか生きていく様子を比べると、人間は何て非合理的で不器用なんだろうなと思ってしまう。そんな私も日々、色んなことに振り回されながら生きているのですが…

本当のことを言うと、実は農業にも興味があります。プリプリとした作物を届けてくださる農家さんの日常、工夫、生き様をもっと近くで見てみたい。できれば1年くらい泊まり込んでみたい。しかし、ここには大きな問題があって踏みとどまっている。
私は虫が苦手なのだ。

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