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動物病院の種類

動物病院に種類なんてあるの?って感じかもしれませんが意外にもかなり細かく分かれています。動物病院がどんな風に分かれているのかを知れば病院選びに役立つかもしれません。
動物病院は大きく分類すると、その役割によって0.5次病院1次病院1.5次病院2次病院専門病院に分類できます。今日は各病院がどんな役割を果たしているかをお話ししたいと思います。

0.5次病院

予防医療に特化した病院で、「○○予防クリニック」という名前だったりペットショップに併設されていてお迎えして間もない子の健康診断などを担っています。病院の規模も小さく獣医さん1人の場合や決まった曜日や時間だけという場合も少なくありません。薬もワクチンなどの予防薬や最低限の抗生剤や整腸剤しか準備されていない場合が多く、本格的な治療は受け入れてもらえません。本格的な治療はしてもらえませんが、ペットショップのワンちゃんやネコちゃんが新しい家族として暮らせるように健康管理をしてくれたり、家族としてお迎えしたばかりのワンちゃんやネコちゃんが病気にならないように日々のケアや健康チェックをしてくれています。
基本的には健康な子が行くための病院で、人間でいうところ保健センターに近い役割をしています。

1次病院

動物病院でもっとも数が多く、ほとんどの人がお世話になるのが1次病院で、いわゆる「町の獣医さん」です。病院の規模は様々ですが獣医さん1~5,6人が在籍している場合が多く、ワクチンやフィラリア予防などの0.5次病院としての役割と避妊手術や去勢手術などの対応、ワンちゃんやネコちゃんの体調が悪いときに診断と治療をしてもらう1次病院としての役割を兼ねている場合がほとんどです。ワンちゃんネコちゃんをお迎えしたら、この1次病院の中からかかりつけの獣医さんを決めましょう。

1.5次病院

ものすごく中途半端に聞こえますが、首都圏や地方都市を中心にこのタイプの病院も最近は多くなっています。病院の規模は中程度~大規模が多く、獣医さんも7,8~20人くらい在籍しています。基本的には前述の1次病院としての役割を担っていてかかりつけ医になっていることが多いですが、各分野に専門的な知識を持った獣医さんが在籍していて、地域の他の1次病院から治療を依頼されることもあります。人の病院でも町の小さな病院から近くの大きな病院を紹介してもらうことがありますが、それと同じで、地域の中核病院となっていることが多いです。
1.5次病院にはCTやMRIなどの高度な検査機器を持っていたり、認定医の先生がいたり、難しい病気にも対応してもらえます。ワクチンから難しい治療まで対応してもらえるので、1次病院と次に紹介する2次病院の両方の役割を合わせもった病院ですね。

2次病院

動物病院最後の砦です。町の病院=1次病院やともすれば地域の中核病院=1.5次病院では対応できない病気や大けがになってしまったワンちゃんやネコちゃんが紹介される病院で人でいうところ大学病院に当たります。基本的にはワクチンなどの予防関連やトリミングなどの日常のケアは取り扱っていません。筆者が主に働いているところもこのタイプの病院になり、受診するには紹介状が必要で近所の1~1.5次病院から受診の予約を取ってもらいます。このタイプの病院はとても数が少なく、大学病院と民間の病院を合わせても日本で30病院もないと思います。しかもそのほとんどが大都市の周囲に集中しているため、遠方から来院される場合も少なくありません。基本的にはかかりつけ医から紹介が必須ですが、地方の大学病院の中には近所の人限定で町の病院からの紹介なしで診察を受け入れているところもあります。この手の病院はたいていの病気に対応できますが、特に民間の病院では診療費が高額になる傾向があります。人なら国民保険などで患者さんの負担は少ないですが動物は原則として自由診療のため全額負担です。特殊な検査機器を使っての検査や難しい手術となる場合も多く、検査と治療で100万円以上かかることも珍しくありません。

専門病院

1次病院や2次病院とは分類の仕方が異なりますが、最近は専門病院も増えてきました。特に眼科専門病院や皮膚科専門病院が都市部を中心に増えています。専門病院には紹介を必要としない病院もありますが、紹介を必要とする病院も少なくないので、2次病院としての性質を持った病院が多いかもしれません。また救急診療を専門にしている病院や日中は1次や2次病院として、夜間は救急病院として営業しているところもあります。各専門病院についても機会があればお話ししたいと思います。

その他の動物病院

ワンちゃんネコちゃんだけでなく、鳥・イタチ・サル・カメ・イグアナなどなど珍しい動物=エキゾチックアニマルをペットにする人も多いため、エキゾチックアニマルを専門にしている病院やエキゾチックアニマルを専門している獣医さんもいます。しかしまだまだ、エキゾチックアニマルを診察できる獣医さんは少ないので、珍しい動物を飼う際は、その動物を診てくれる獣医さんがいる病院を必ずチェックするようにしましょう。
あと獣医さんはペットの診療が主な仕事と思われ勝ちですが、そもそも獣医師免許は牛や豚、鶏、馬などの家畜診療のために創設された国家資格で、ペット診療はあくまで副次的に発生した仕事です。このことについては改めてお話ししたいと思いますが、牧場や競馬場にいる動物のための動物病院も存在します。

いかがだったでしょうか。動物病院にもいろいろな種類があります。おそらくほとんどの人は1~1.5次病院以外には縁がないと思いますが、万が一のこともあるので、2次病院や専門病院についても知っておいて損はないですね。これを機に地域の中核病院や専門病院を探してみるのも良いと思います。意外と近所に有名な獣医さんがいることもあるのでセカンドオピニオンをお願いしてもいいですし、万が一のときの2次病院が近くない場合もあるのでそうなったらどこを紹介してもらうかをあらかじめ考えておくのも大事かなと、獣医としても1人の飼い主としても思います。

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