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名探偵津田がパニクった理由を真面目に考えてたら面白かった

はじめに(ネタバレなし)


二週に渡り、見事完結編を迎えた
水曜日のダウンタウンの
ドッキリミステリーシリーズこと
名探偵津田第二弾を
ご覧になりましたでしょうか。

第一弾で寄せられた高い期待に
裏切ることなく、
完成度の高いミステリードラマと
名探偵津田による予測不可能な爆笑の渦に
多くのお茶の間が引き込まれていた
のではないかと存じます。

斯くいう私も例に漏れず、
子ども時代に還ったように
夜にあらゆることを急いで済まして
放送時刻を迎える五分前から
家族を集めてワクワクして
テレビの前で待機するほど
放送を楽しみにしていました。

さて、番組中名探偵津田さんは
とある気づきにより、
番組側も視聴者側も予想していない
大混乱に陥り、深刻なパニックを
起こしたことが話題となりました。

あまりに笑ってしまい、
なぜか放送終了後もしばらく
ぼーっとそれについて考えている
自分に気づいたので、

「あれって実際どういう勘違いによる混乱なの?」
「本人目線ではいったい何が起こった??」

などについて
敢えて真面目に考察を行い、
記念に残したいと思います。

以下、番組内容についての
ネタバレが含まれますので
視聴の楽しみを損なわれないよう、
未視聴の方はご理解の上
閲覧をご遠慮いただけますと幸いです。

考察開始(以降ネタバレあり)

はじめに、今回の考察テーマについての
事実と用語を改めて整理、定義しておく

用語

番組/水曜日のダウンタウン:
本稿においてこれらの呼称は
TBSバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』における
「ドッキリミステリー企画・名探偵津田シリーズ」のことを指す。

ドッキリミステリードラマ:
ドッキリを仕掛けるターゲットを取り囲むようにして
用意された舞台と大人数の演者たちによる
「ミステリードラマ」のような展開が繰り広げられる
水曜日のダウンタウン発ドッキリ企画のこと。

ミソは
ターゲットによる真相解明と犯人特定が行わない限り、
ターゲットは番組から解放されない点である。

ターゲットがドッキリ
番組から脱出したいがため
嘘と分かっているミステリーのお話に
最後まで付き合わなければいけない作りが
津田さんのこれまで知られていない
ミステリーとの好相性を十二分に活かし、
話題を博した。

公式企画名は
「犯人を見つけるまで
 ミステリードラマの世界から抜け出せない
 ドッキリめっちゃしんどい説」となっている。



ドッキリ:
一般的なドッキリという語の意味、
またはそのイメージを指す。

ドッキリの原型に近い
最基本パターンは
シンプルにターゲットを
「びっくりさせること」であると考える。

例えばターゲットが道を歩いていたら
ピエロが側溝飛び出してきてビックリ!
というような仕掛けなどが該当する。

ビックリしたターゲットによる
瞬間的、本能的、身体的反応を引き出ことが
期待されている。

そこから発展した基本応用パターンが
ターゲットを「騙すこと」と考える。
すなわち、
事実でない、偽りの 
言葉/環境/出来事/人物……などを用意し
ターゲットを取り囲み、騙されたターゲットの
リアクションを見る、という形である。

原型と比較し、
騙すドッキリの特徴は
・区切られた比較的長い時間の中で(瞬間的ではない)
・出来事や関係性の文脈の中における心理的反応を引き出す
(社会的文脈で共有される先入観を必要とする。
 本能的で身体的な単純反応ではない)

と見ることができる。


そして、ドッキリはフェイクであるため
その終了条件は通常
ターゲットに知らされることはない。

短いドッキリの場合は時間経過/事態展開で
必要なリアクションが収集できるため、
他の終了条件はなく、そのまま終了する。

特殊な終了条件が設定されているものも多い。
分かりやすい終了条件として
たとえば
「ドッキリであるとターゲットが
 気づくことで終了となる」が
挙げられる。


津田さん:
ここではお笑い芸人、
ダイアン津田ご本人のことを指す。

ドッキリミステリーの
ターゲットになるのは今回で二回目。


名探偵津田:
ドッキリミステリードラマに
拘束された状態になり
無理やり名探偵役をやらされる状態の
津田さんのこと。
いわば
「津田さんが無理やり
 演じさせられているキャラクター」

当然ながら、名探偵津田は津田さんとは
肉体や人格(性格)などが共通する。

ただ、津田さんがドッキリに巻き込まれ、
名探偵津田となった以上、
津田さんの脱出のためにも
事件解決を放棄できず、
最優先任務として進めざるを得ない。

名探偵津田はドラマの中でも
自由に言葉を発し、行動することが
許されている。

しかしドラマは真相解明へ
向かう展開と結末しか用意されておらず
ドラマにいる間、
事件解決以外の自由はないとも言える。

面白い状態である。

探偵みなみかわ:
名探偵津田さんと
同じくドッキリに巻き込まれた出演者、
芸人・みなみかわさんの役回り。

事件の途中から参加する第二の探偵役。
ご本人を指す時は「みなみかわさん」と表記。


村:
今回のドッキリミステリードラマの
舞台である「戸隠上祖山村」を指す。

村長:
今回のドッキリミステリードラマの
第一被害者のこと。

YouTube:
動画共有サイト。
ミステリードラマ劇中に登場した
村長チャンネルの村紹介動画は
3ヶ月前に実際にアップロードされている。

事実整理

表題の「名探偵津田がパニクった理由」を
考察するため
前後の流れを簡単に整理しておく。

名探偵津田は
いくつかの手がかりを手に入れた。
そこには村長YouTubeチャンネルが
確認できる端末も含まれている。


村長遺体の司法解剖の結果で
推定された死亡時刻と死因が
警察から共有された。

死亡時刻と死因の特定により
最初に村長の吊るし死体を発見したとき、
村長はまだ生存していたと知る。


なぜ村長は自身の死を自作自演したのかと、
名探偵津田らは入手した手がかりにある
村長YouTube動画を視聴することにした。

動画の中で村長が
「死んだフリドッキリを芸人さんに
 仕掛けるつもりだ」とはっきり
 語っているところを名探偵津田らが見る。


津田さんは「ドッキリ」というワードを
繰り返しながら考え込み、
やがて混乱に至り、大パニックを起こす。

その時の津田さんが発した心の叫びを
下記にて抜粋する。

「キーッ!」

「これ(村長の死んだフリ)
 ドッキリしてたっていうことやんか」

「俺最初この村に来たんが、
 この町のやつ(ロケ番組)はドッキリで……
 この殺人事件(もドッキリで)」

「これのドッキリが
 この殺人の中のドッキリ……
 う゛……う゛う゛ー! 訳分からん!」
 (呻きながら頭を掻きむしる)」

「最初のこの村を紹介するのはTBSの番組で
 ウソのドッキリやった訳でしょう?」

「それはドッキリで、
 この水曜日のダウンタウンの
 この殺人事件のやつでしょう?
 ……の中で村長が撮ってた村長が……」

「え、ドッキリの中のドッキリ?」

「(村長は)このドッキリの
 水曜日のダウンタウンの世界で
 生きてる人やろ?」

「俺は……どこの人?? 
 俺も水曜日のダウンタウンの人??
 俺は何の人なん、じゃあ?? 俺は
 どの世界で生きてんの今……
 俺は……なんや……
 俺はどこの世界に
 生きてんねん今(´;ω;`)??」

このように、津田さんは
誰にも予想できなかったところで
泥沼を見いだし、
ズブズブと沈んでいったのであった。


考察

さて、津田さんは
どこで
どのようにして
なぜ
こんがらがることができたのだろうか。

流れをおさらいしてきたところで、
順を追って詳しく見ていこうと思う。

正解の確認


まず、津田さん以外の人、
すなわち視聴者、番組側、NPC俳優陣、
もう一人の探偵役出演者みなみかわさんが
暗黙のうちに共有された理解は
外と内のふたつのみで
構成されたシンプルな入れ子構造である。
こちらが正解である。

簡単な図式に起こすとこうである。

津田さんが混乱したということは、
上記図式とは異なる理解を持っていたということになる。
本稿の目的は、津田さんの頭にある
図式のほうの解明である。

次に、津田さんがパニックに陥った際の
一連のセリフの最初に戻り
津田さん目線における理解の解明に
着手しよう。

津田さんの訴えを読解する


1.内容の確認

津田さんの思考を理解するため
その訴えに耳を傾けることが
大切と思われる。

訴えの意味を読み取るため、
セリフから奇声や発狂挙動を抜き、
意味内容のみ抽出したものを
順に番号を振って並べることにした。


①村長は死んだフリドッキリを仕掛けた。

②俺(津田さん)は最初
 村紹介ロケ番組で呼ばれて
 村にやって来た。
 しかし村紹介ロケ番組自体が
水曜日のダウンタウンという
 番組によるウソのドッキリだった。

水曜日のダウンタウンという番組に
 仕掛けられたドッキリの世界の中で
 さらに村長から、村長が死んだという
ドッキリを仕掛けられようとした。
 これは意味不明である。

④なぜなら殺人事件は
水曜日のダウンタウンが作った
ドッキリの中のものであるのに、
ドッキリドラマの中の村長がさらに
ドッキリを仕掛けてきた。

 このようにドッキリの中のドッキリ
 理解困難である。

⑤死んだフリドッキリを仕掛けた村長は
ドッキリの世界の登場人物であるとして、
 俺も水曜日のダウンタウンの人となれば……
 いよいよ自分が本当はどの世界を
 生きている人物かが分からなくなった。


……何度見ても腹が捩れるほど
隠しきれぬ天才性が光り輝く
味わい深い語りであることは間違いないが、
今はその意味を解くことに集中しよう。

最初に目を引くのは、やはり
「ドッキリ」という語を
高頻度で連発されたことである。
文字に起こして並べると
地味にゲシュタルト崩壊を起こされて
見づらいである。

ほとんどのセリフの中で、
「ドッキリ(の世界)」と
「水曜日のダウンタウン(の世界)」は
同義のものとして用いられ、
嘘である」という意味合いとして
読むことができる。
しかし、そこはかとなく違和感を覚えさせる
言い方もいくつかあった。

違和感を特定するため
「ドッキリ」が意味する「嘘」の内訳を
補完、展開してみるとしよう。

①村長の死んだフリはドッキリであると
 俺(津田さん)は分かった。
→「ドッキリ」=村長の最初の死亡は嘘である

②俺(津田さん)は最初
 村紹介ロケ番組で呼ばれて
 村にやって来た。
 しかしそれは水曜日のダウンタウンという
 番組によるウソのドッキリだった。

→「ドッキリ」=村紹介ロケ。
 村紹介ロケ番組は嘘であり、実在していない。
 それはミステリードラマドッキリの一部である。

水曜日のダウンタウンという番組に
 仕掛けられたドッキリの世界の中で
 さらに村長から、村長殺人事件という
ドッキリを仕掛けられた。
 これは意味不明である。

→意味不明と結論づける理由が難解であるため、
 混乱を引き起こす核心に迫る鍵として
 注目すべきと考える。

④なぜなら殺人事件は
水曜日のダウンタウンが作った
ドッキリの中のものであるのに、
ドッキリドラマの中の村長がさらに
ドッキリを仕掛けてきた。

→③の「意味不明と感じた理由」の
 本人による言語化である。
 やはりロジックが難解のため
 ③と共に突破口になることを期待できる。

⑤死んだフリドッキリを仕掛けた村長は
ドッキリの世界の登場人物であるとして、
 俺も水曜日のダウンタウンの人となれば……
 いよいよ自分が本当はどの世界を
 生きている人物かが分からなくなった。

→前半の意味はそのままで分かりやすいが
 後半の「俺も~」から
 急速に意味不明の次元へ突入する。

 意味不明であるほど
 そこに真相へ至る突破口があると
 なぜか思う。

というわけで③と④の意味を解く
手がかりがあると期待して
⑤の「『俺』が水曜日のダウンタウンの人」、
という表現について詳しく見ていこう。

2.意味不明箇所の追求

さて、⑤→③&④をさらに掘り下げいこう。

まずは⑤の 
「『俺』が水曜日のダウンタウンの人」を扱う。

 この言葉は、ほんの数秒前に津田さんが
 「村長は水曜日のダウンタウンと思っていないなら、
 誰がこの世界を水曜日のダウンタウンと思っているのか?」
 との疑問を口にしたところ、
 みなみかわさんから
「水曜日のダウンタウンと思っているのは
 俺と津田さんだけですよ」との指摘を受けた影響が
 確認できる。

つまり、
「水曜日のダウンタウンの人」とは
「水曜日のダウンタウンと思っている人」
すなわち、「一連の事件をドッキリと思っている人」

という意味である。

したがって⑤は、下記のように翻訳できる。

⑤死んだフリドッキリを仕掛けた村長は
ドッキリの世界の登場人物であるとして、
俺も水曜日のダウンタウンの人となれば……
          ↓
俺もこの世界をドッキリと思っている人ならば……
 いよいよ自分が本当はどの世界を
 生きている人物かが分からなくなった。

このように置き換えみると、
津田さん目線では
理解不能を引き起こした
内訳がどのようなものかが
だんだんと浮かんでくる。

どうやら津田さんにとって、
「ドッキリだと見破った/気づいた側の人間」

「ドッキリを仕掛けた人間」
は、

同じ世界を共有していなければならず、
同じ世界を生きている
ことを意味するのだ。

分かりやすくするため、
以降、この
ドッキリを仕掛けた人間と、
ドッキリを見破った人間の間で
共有される現実世界のことを、
外側の世界>と呼び、
そうではない、ドッキリドラマの中の世界は
<内側の世界>と呼ぶ。

さて、外側の世界の論理を念頭において
③と④を当てはめてみると、
さらに下記の考えが読み取れる。

・村長殺人事件から始まった連続殺人事件は
 水曜日のダウンタウンという番組のドッキリである

・村長はドッキリミステリードラマの
 中の登場人物である

・最初の村長殺人事件は
 もともとは村長が仕掛けた
 ドッキリのつもりだった

・これらの事実が相互に矛盾していると感じる

何が矛盾しているように感じたのだろうか。

ここで、これまで見てきたように、
「ドッキリ」という語を
津田さんがこれまで基本的には
基本的に「嘘である」という意味で
用いてきたことに注目したい。

「ドッキリ=嘘である」だと
さらに津田さんの中の
下記2つの大前提が読み取れる。

・<内側の世界>=ドッキリ=嘘

ドッキリは(水曜日のダウンタウンという番組による)
 嘘の作り物のため、嘘を嘘だと思っている人たちが生きる
 ドッキリに組み込まれていない<外側の世界>がある

3.論理の発見

ようやく、津田さんの脳内で展開される
互いに矛盾し自家撞着する情報と認識が
展開できそうだ。下記の通りに整理する。

認識1
 自分(=津田さん)はドッキリに気づいた側の人間

 →結論1:自分(=津田さん)は
      <外側の世界>を生きている

認識2
 一連の殺人事件はすべてドッキリである

 →結論2:一連の殺人事件は
      <内側の世界>の出来事である

認識3
 村長はドッキリミステリードラマの中の人物

 →結論3:村長が生きる世界は<内側の世界>

前提としての認識
 ドッキリと気づいた側の人間と
 ドッキリを仕掛けた人間は同じ<外側の世界>を生きる

手がかり
 村長はドッキリを自分(=津田さん)に仕掛けた

前提と手がかりから導かれる結論:
 村長は<外側の世界>を生きている


矛盾
 村長は<外側の世界>と<内側の世界>の両方に居る。
 しかしそれは理解不能である。

 →矛盾から生じた混乱1
 もし村長が<外側の世界>の人間ならば、
 自分(津田さん)と水曜日のダウンタウンとは
 同じ世界を生きていることになる。

 しかし村長が居る村の全体が架空のものである。
 (ロケ番組からのすべてがドッキリであるとの認識に至ったため)
 でなければ、
 死者が出ることや、自分が探偵であることなる
 あり得ないことが事実に反転する。


 →矛盾から生じた混乱2
 もし村長が<内側の世界>の人間ならば、
 自分(=津田さん)にドッキリを仕掛けることができない。

 なぜならドッキリを仕掛ける人間は<外側の世界>にいる。
 しかし自分(=津田さん)もドッキリに気づけたため
 <外側の世界>を生きている者である。

 すると混乱1に戻ってしまうため、
 自分(=津田さん)が実は<内側の世界>に居る可能性を
 検討しなければならない。

 →パニックの推定内訳
  もしも自分(=津田さん)が
  <内側の世界>にいるとしたら、
  今まで<外側の世界>と思っていることや
  記憶はどこからが嘘か?

  ドッキリの外と内のどちら
  側に自分がいるのか?

  村長が両方の世界に居ることが
  矛盾ではないとすれば、
  自分が両方の世界にいることを意味する。
  しかし自分が両方の世界に居ることは
  ドッキリに気づいているという
  <外側の世界>の証明と矛盾する。


4.矛盾の原因

誰でも深刻に考えている確固たる現実と
フィクションや夢との境界があやふやになり
立脚する地面がグラグラし出したら、
大パニックになる。

問題はこの節目で別に津田さんは
そのようなドラマチックな
境地に立たされていないことである。

脳内を論理展開をシミュレーションしたことで
矛盾の原因が見えてきた。

どうやらパニックの理由は事実の誤認ではなく、
大前提に据えた認識が悪さをしているようだ。

この
<ドッキリと気づいた側の人間と
 ドッキリを仕掛けた人間は同じ<外側の世界>を生きる>

という認識に不幸にも引っかかってしまったのである。

「同一の」ドッキリであれば、この認識は誤りではない。

しかし津田さん以外の誰もが気づいたことだが、
村長のYouTubeドッキリは、
水曜日のダウンタウンによる
ミステリードラマドッキリとは
同一のものではない。
階層が異なっているのだ。

村長のドッキリは、
ドラマ劇中の「下位世界の出来事」であり、
対して水曜日のダウンタウンによる
ミステリードラマ全体が
「上位世界の出来事」である。

出来事が位置する次元が異なるため、
当然、ドッキリが支配する対象と範囲も異なっている。

下位世界の村長のドッキリにおいて
・ターゲット(内側の人間)は名探偵津田(津田さんではない)
・ドッキリの仕掛け側(外側の人間)は村長と広報の鈴木

上位世界のドッキリにおいて
・ターゲット(内側の人間)は津田さん(名探偵津田ではない)
・ドッキリの仕掛け側(外側の人間)は
 村人や村の関係者を演じる俳優陣、番組スタッフ全員である
 (役である村長は含まれていない)

と書き出せば一目瞭然である。
……書き出さなくても自明であるが。


というわけで、津田さんが思い込む
「ドッキリを仕掛ける」という行為がすなわち
「上位世界存在の証左」という理屈にはならない。

これが「ドッキリ」という言葉だから、
なぜこんなところで引っかかるかと
他の人は首をひねる。

これが仮に、上位世界の人間にしか
知り得ない情報や概念の言葉で混乱した場合、
だいぶ共感はしやすくなると思われる。

そもそも、なぜ「ドッキリ」が上位世界の言葉と
思い込むことができるのか。

5.ドッキリは上位世界のもの、と思い込む理由

これは番組の放送内容から得られる
情報からはハッキリと分からないため、
真実は津田さんの中にしかないが、
いくつかの可能性は考えられる。

疲労状態の津田さんの思考力の限界と言われれば
それまでであるが、
一応それだけではないと仮定して進めることにする。

津田さんと他の者
――水曜日のダウンタウンのスタジオ側出演者、
  オンエアの視聴者、みなみかわさん、
  劇中津田さんを補佐する俳優さん――
との違いを洗い出してみた。

その中でひとつ、
津田さんしか経験していないものが見つかった。

それは
ドッキリと認識する前の
曖昧な状態で経験したドッキリ内容がある
という点である。

人格を取り囲む世界から
人格の定義に意味を持つ情報を
認識、保存、呼出、分析するものが
記憶であり、その集積の延長に人格が生まれる。

津田さんは、
名探偵津田として経験する世界と
津田さんとして経験する世界を持っている。

そのため
パニックが発生したときに
それまでの
記憶のどこからどこまでが、
名探偵津田の世界で
どこからどこまでが
津田さんの世界か


という仕分け作業と見直し作業が
十分に行われていなかったと
考えられる。

ミステリードラマドッキリが始まる前は、
当然津田さんは津田さんであると考え、
その認識を脅かす出来事はまだない。

ミステリードラマドッキリに気づいた後は、
津田さんは第一弾の番組の経験で
リテラシーがあるため、
スムーズにドラマ内の役としての人格が
「名探偵津田」と切り替えられた。
(期待通りに相当嫌がっていたが)


しかしミステリードラマは始まって
津田さんがまだドッキリと気づいていない間は
本来「名探偵津田」世界の情報が
一次仕分けでは「津田さん」人格の世界に
振り分けられる。

比較的に大きい影響が残せた二つのことは

・村に訪れる一週間前に津田さんが乗った
 タクシーの運転手から聞かされた
 「マイタケ毒」の話

・村長と対面した際にコラボを持ちかけられ、
 快く了承したこと

である。

……ただ正直、この説でいくと、
人格の曖昧状態で受け取った情報は
いろいろある中、なぜ世界認識を揺らがす
大打撃になるものとならないものがあるのか、
という問題が説明できない。

それは出来事から受ける衝撃の多寡で
脳の重要性づけバイアスの為業か
なども考えてみたものの、

それでは説明しきれない。

村長と話す前に
村ロケで登場人物の鈴木や
第一村人とも直接対面のやりとりをしたが、
村ロケがそもそも嘘だと知っていても
津田さんはショックを受ける
素振りを全く見せなかった。

その人たちが亡くなっていないため
衝撃が少なく脳が重要でないと解釈できるか?

できない。

なぜなら同じように人が亡くなっていない
タクシー運転手の情報を思い出した際
津田さんは大層動揺した。
しかしそれは
「知らない間にドッキリ仕掛けられた」
という衝撃にこそ見え、
人格に混乱をもたらすものに
発展するものではなかった。

なぜそこは恣意的なのか。
ドッキリに気づくまでに得られた情報で、
村長の件と、運転手やほかのことと
何が違うというのか。
人格の曖昧地帯説は
やはり無理があると言わざるを得ない。

津田さんが見せる反応の違いの
観察に立ち戻ると、
やはり、
村長のみ「ドッキリを仕掛ける」と
「ドッキリ」という語を発したということが
大事だと考えるべきだろうか。

「ドッキリ」とは
上位世界の者にしか成しえない
高度な魔術と思い込んでいるだとすれば、

それを口にしない者たちとのエピソードは
嘘の下位世界の者によるものと
自動的に分類され
人格にとっての重要度が下がる。

一方、「ドッキリ」を口にする者は
ドッキリのターゲットである
自分との結びつきが強いと認識することで
人格に強い脅威を持つようになる。

ということだろうか。
ドッキリのターゲットにされたら、
ドッキリの仕掛け側に支配されるわけで、
人格の生存本能的に重要度を上げてしまい、
「自分にドッキリを仕掛ける奴は強い。脅威だ」と
防衛機制が発動し、
最終的には出来事の階層を見誤った
ということなのだろうか。

これがもし、
二重構造以上の複雑なドッキリで、
どの階層も「ドッキリ」
という言葉があったら、
もう津田さんの人格は
修復不可能に崩壊するのだろうか。

それとも津田さんにとって
「ドッキリ」に植え付けられた恐怖があまりに大きく
親の本名ほどの、圧倒的に上位世界の影響力を
思い知らせる言葉になってしまったのだろうか。

真相は藪の中闇の中津田さんの頭の中、である。

最終結論


今回の考察では
津田さんは「ドッキリ」を口にする者が
脅威を持つ上位世界の者であると
思い込んでいたため、

大パニックに至ったと考えられる
という結論を導くことができたものの、

なぜ「ドッキリ」という言葉だけ
津田さんにとって
そこまでの思考停止に
至らせる威力を持つかは
残念ながら解明しきれなかった。

もし今度、さらに
ややこしいこと極まりない
多重メタ構造になっていたら、
津田さんをより面白く遊べるのだろうか。

期待を寄せるばかりである。









お読みくださりありがとうございました☘️🌈 初めての方、あなたに出会えて嬉しく思います。フォロワーの方、いつも見守ってくださってありがとうございます。 共感できるところや、心の琴線に触れるところがありましたら、ぜひ応援の気持ちを届けてください。心が温まります❤️🌟