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暗黒労働おとぎ話 『ワンオペ 座敷わらし』

3連休の最終日に「日雇い派遣 底辺カルタ」を更新するのは忍びないので、ワンオペの達人だった妹にインスパイアされて書いた、暗黒労働おとぎ話をアップします。

※暗黒労働おとぎ話とは:あまりに酷いため、ブラック企業の実態をありのままに書けず、メタファーにして伝える試み

暗黒労働おとぎ話 『ワンオペ 座敷わらし』

むかし ある県道沿いの牛丼屋に座敷わらしがやってきました。

お店や店員のふんいきが気に入った座敷わらしは、まるで住み込みのように朝早くから夜おそくまで、そのお店で働くようになりました。

なかなか店員があつまらない牛丼屋は、そんな座敷わらしにすっかり頼っておりました。

そのくせ、座敷わらしに残業代をあげようともしませんでした。

でも座敷わらしは、とてもが人がよいので、
数十万円分もたまった残業代をもらわなくても平気でしたし、他の店員のシフトをこころよく代わってあげたりして、ひと一倍、その牛丼屋につくしておりました。

だんだんと仕事になれてきた座敷わらしは、
お昼にたったひとりで20人のお客をまわすことも、ドライブスルーの対応も、あますところなく こなせるようになっていきました。

座敷わらしが一生けん命はたらいてくれるので、エリアマネージャーは安心して「別に店員を増やさなくてもいいかな」と、すっかり気をぬいておりました。

しかし、いくら座敷わらしでも、そんな修業の日々が続くと疲れがたまってしまいます。

あるとき、物思はしき様子にてタウンワークをながめていた座敷わらしは、ふと自分の変化に気がつきました。

座敷わらしはすでに、”接客の神様”になっていたのです!

接客の神様になった座敷わらしは、もうここにいなくてもいい、と思いいたりました。

世は人手不足の様相。
ちまたのあまたのお店では、座敷わらしのような者が来てくれないかと待ちわびているのです。

ひと月ののち、座敷わらしはこの牛丼屋から、ふぃっと出ていってしまいました。

それより久しからずして、座敷わらしがいなくなった牛丼屋は「売れる商品があるのに売る人がいない」という状態におちいりました。

そして半年もすると閉店して、跡形もなくなってしまいました。

時を同じくして同じ牛丼チェーンの他のお店からも、ことごとく座敷わらしが出ていったため、会社の社運全体が少しずつ傾いてゆきました。

この兇変の前には、いろいろの前兆がありましたが、人々がくちぐちに語れども、上層部には実(まこと)と思う者がなかったのでした。

一方、座敷わらしがやってきた店はというと、もちろん商売繁盛して、こんにちまで栄えているということです。

どんとはれ。


不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。