【旅行記】関西・人形劇旅行⑩(終)〜なにわ人形芝居フェスティバルその7〜
こんにちは。おおかみの人です。
今回のトップ画像は、なにわ人形芝居フェスティバルで最後に訪れた、光傳寺でパシャリ。
今回の記事は、なにわ人形芝居フェスティバルの観劇レビューの7つ目、そして、それ以前から続いている関西人形劇旅行記の10本目の記事となっています。
前回の記事はこちら。
⚠この記事には、人形劇のネタバレが含まれます⚠
イマイアキさんの【サーカスの夜】が終わり、そのままお隣の光傳寺へ向かう。今回のフェスでは隣り合った演目の会場同士がやたら離れていて、歩き疲れてくたくたへとへとになっていたので、もう次の演目を観るために長旅をしなくていい…と思うとホッとしたきもちになった。
受付を済ませ、会場入口から見て奥、上手側の一番端の一番前に座って、開演を待つ。
ここからは、人形劇団くりきんとんさんの【バルバルさん】について振り返りたい。
今までこのフェスで観てきた演目は、ほとんどが一人芝居だったのでこぢんまりしたセットだったが、今から観る人形劇団くりきんとんさんはメンバー数人で劇を演じるとあって、ケコミ(人形劇で人形がその上でお芝居をする舞台のこと。人形劇をやるときは演者がケコミに隠れてお芝居することが多い)の幅も広いし、立派な袖幕にホリゾント幕(舞台背景の幕)までかかっていて、目の前はどどん!!と真っ黒な舞台それだけが広がっていた。
わたしのほとんど目の前に、キーボードと、譜面台に置かれたたくさんの譜面があって、その脇に女性劇団員さんがひとり座っていた。
どうやら、弾き語りスタイルの人形劇らしい。
最初に観たよろず劇場とんがらしさんも弾き語りだったし、あんな感じなのかな??と想像しながら、開演を待った。
定刻の14:45になり、人形劇が始まった。
おそらく弾き語りをするであろうその女性劇団員さんが、元気よく観客にご挨拶。うんうん。よく見かける、人形劇のオープニングの光景だ。
おや?かわいらしいうさぎちゃんがやってきた!
うさぎのうーちゃんは、ごあいさつしようとするけれど、「こ」で始まるお昼のあいさつがなかなか出てこない。劇団員さんと、とんちんかんで愉快なやり取りをして、さようなら〜、と、うーちゃんは去っていった。
さあ、いよいよ【バルバルさん】の始まりだ!
愉快で軽快なリズムと、元気いっぱいの声の弾き語りで、バルバルさんは始まった。
そして、始まってすぐ、わたしは思い出した。
【モーリー】の劇団だ!!
はて、モーリーとは?
以下の記事でも少しだけ触れているのだが、わたしはかつてP新人賞2015を、現地まで観に行った。
【人形劇団サバラン】という、地元金沢の金沢美術工芸大学発の人形劇団を応援するために観に行ったのだが、その時サバランさんと並んで上演されていたのが、このくりきんとんさんだったのだ。劇団の名前はすっかり頭から抜け落ちていた。
【モーリー】とは、その時くりきんとんさんが上演していた劇の主人公の名前である。イモリだったか、ヤモリだったか…細かいことは覚えていないのだが、とにかくインパクトがすごかったのを今でも覚えている。
まず、弾き語りのクオリティ(?)がえげつない。
弾き語りの女性は最初から最後までずっとキーボードを弾いていて、ナレーションも、登場する人形たちの声も、何もかもの音を自分ひとりでこなしているので、ずっと喋りっぱなし、弾きっぱなしなのだ。それなのに、長い演目の最後の方になっても息切れするどころか、最後の最後までずっと元気。ダ○ソンの掃除機もびっくりの持続力。
語りは語り、演技は演技、と別々の、いわば文楽スタイルの人形劇は、語りのクセがだいぶ強めで、その語りや、キーボードの音に合わせて、ぴったりと演技が「ハマる」。これがなかなか気持ちいいのだが、いったいどう練習したらそこまでぴったりと音と芝居を合わせられるのか、当時から不思議だった。あの辛口のP新人賞の審査員たちも、音と演技のズレのなさには舌を巻いていた記憶がある。
…一瞬で、まるでタイムスリップしたかのように、この記憶を思い出していた。
たしか、くりきんとんさんは大阪発の劇団だったはず。大阪のお姉様のパワーが為せる技か…?と思いつつ、パワフルな語りと演奏に惹き込まれながら舞台を観た。
パンフレットを見るまで知らなかったのだが、【バルバルさん】には原作の絵本がある。それがこちら。
登場したバルバルさんの人形は、まるで絵本から飛び出してきたかのよう。絵本の絵のまま立体になっていて、ちょっとおとぼけた表情がなんとも言えずかわいらしい。
「バルンバ バルンバ バルバルさんは〜♪」
陽気な語り。
腕利きの床屋のバルバルさん、お店の看板にいたずら書きをされてしまい、その結果いろんな動物のお客さんたちがお店にやってくるようになってしまって…?
前述の通り、語りがだいぶ、かなりクセつよなのだが、独特の言い回しとか、セリフの言い方が逆に面白くて、それでクスッと笑ってしまう。
セリフ回しももしかすると、文楽に倣っているのだろうか??もしかすると、原作の絵本に何か特徴的な表現があるのかも??
わたしは原作絵本も読んでいないし、文楽にも疎いのでどちらの疑問も解決はしなかったが、それくらい弾き語りの個性が強い劇だというのがひとつ、くりきんとんさんの特徴である。
…というか、ちょっと待て。
ひとりですべてのキャラクターの声を演じきっていたのに、全部ちゃんと違った声に聞こえたのは、気のせいだっただろうか??
七色の声、声優さんでもびっくりかもしれない。
愉快で軽快な語りと演奏に合わせるように、演技チームの動きもピッタリ息が揃い、人形劇らしい大きな動きでのやり取りが面白い。
お客のライオンのたてがみを、チョキチョキチョキン!と切っていき、あっと言う間に大変身するまでのあの楽しい動きは、まるでテレビの人形劇を見ているかのようだった。
すべての人形・小道具の動きがピッタリ揃っている…すごい…面白いを通り越して感動した。
お客のワニ(いや、ワニに髪の毛ないやろ…と一瞬思ったが)の押しがやたら強いのは、ちょっと大阪らしいと思って笑えてしまった。商品をあれこれ品定めする様子も、歌に乗せてアップなテンポで進んでいくので観ていて楽しかった。
他にも動物のお客さんがやってきて、バルバルさんはその度に、どうしよう…とうろたえるのだが、そこはさすが腕利きの床屋さんというだけあって、手際よくお客の注文に応えていく。
原作の絵本もたぶんこんなふうにテンポよく進んでいくんだろうな、と思い、音楽と語りに乗せた人形劇のスタイルがとても相性よく見えた。
せっかくなので、物語の詳細は絵本かくりきんとんさんの人形劇で是非チェックしてみてほしい。
終演後、弾き語りの方に「もしかして、P新人賞に出てらっしゃいましたか?」と尋ねると、「はい、出てました!」とのこと。やっぱりビンゴだった。
あのときも名古屋まで観に行ったし、今回も金沢から観に来ていますとお伝えすると、ものすごくびっくりされた。
わたし的には、終演後息を切らすこともなく元気いっぱいのままお客さんに応対する皆さんの方にびっくりしまくっていたのだが。
大阪人のバイタリティには、ほんとうに脱帽!
お人形さんたちと写真まで撮らせてもらって大満足のわたし。
わたしが写っている写真は恥ずかしいので、お人形さんだけの写真を載せておく。掲載は許可済みだ。とってもかわいいお人形ばかりで、目がとろける。
劇団の皆さんにご挨拶をして、光傳寺を後にした。
【おまけ】
最後の会場だった光傳寺から歩いて12分くらいのところに、【なんばグランド花月】がある。大阪のお笑いの殿堂だ。
ここに、チェコで活躍されている人形作家・人形劇舞台美術家の林由未さんの人形展示がされていると以前から聞いており、折角の機会なので訪ねてみることにした。
なんばグランド花月に近づくほど、どんどん人が増えていく。そして、到着するとそこにはものすごい数の人・人・人…。
さんざん歩き回った上に人混みにぶち当たって疲労困憊だったが、なんとかエスカレーターで2階に上がり、左側を見ると大きな展示が広がっていた。
林由未さんと言えば、毎年クリスマスのシーズンに阪急うめだ本店のショーウインドウを、オリジナルのマリオネットで飾り付けしていらっしゃるというのはご存じの方も多いかもしれない。昨年はその時期に林さんの個展も同じ大阪で開催されており、その時以来の林さんの作品鑑賞となった。
林さんのお人形は、目に不思議な優しさの宿った表情のものが多い気がする。
今回のこの人形たちの表情も近くで鑑賞させてもらったが、いろんな表情をしている人形たちが揃っているがやはり目元は優しく、ああ、やっぱり林さんの人形だ、とホッとした気持ちになった。
いかんせん人がものすごく多かったので、じっくり鑑賞することはかなわなかったが、それでも人形劇旅行の最後を締めくくるにはぴったりの作品だった。
わたしはホクホク顔でサンダーバードに乗り、大阪を後にした。
バイバイ大阪、また来ます!!
というわけで、なにわ人形芝居フェスティバルの最後の演目、人形劇団くりきんとんさんの【バルバルさん】観劇レビューと、おまけを綴ったところで、長かった関西人形劇旅行記もおしまいです。
ここまで長い長い記事をお読みいただきありがとうございました。
少しでも旅行や観劇の楽しさがお伝えできていればうれしいです。
次回は、市内で現在開催中の【春ららら市】について、ちょこっと綴りたいと思います。
次回もお楽しみに。それでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?