見出し画像

壊れた炊飯器と、おにぎりを食べる息子。

最近ね、鍋でお米炊いてる。
めっちゃていねいな暮らし、夏の日の2022。

以前に何度かマジで料理がきらいって記事も書いたし、年に一度つくる息子のお弁当も前日眠れなくなるほどプレッシャーだって言ってたんだけど。
どんな心境の変化かな?って。
あんなに「この生活からすべての料理の手間暇を駆逐しろ!山本ゆりこそが唯一神!」って最前線で抵抗してた過激派ダラ奥のわたしが、早朝からコトコト鍋でお米を炊いている。

うん。

炊飯器、壊れた。

炊けるには炊けるんだけど、稼働しながらなんかすげーガタガタ言うし、炊飯後に必ずエラーが出るっていうね。壊れてんなーって感じだった。どう贔屓目に見ても壊れてんなーって。
それでも3日間くらいはね、ウルセー!四の五の言わずに働けー!つって、わたしもブラック企業戦士として育ってきてるから、うちの炊飯器にもモラハラぶちかまして限界までがんばらせてやろうって。おまえが抜けたらその仕事はだれがするんだ!?、おまえを雇うのにいくら払ったと思ってんだ!?、おまえに責任感はないのか!?って。書いてるだけで気分わるくなるな。でも、そんな感じで。炊飯器も満身創痍でがんばってくれてた。
だけど、なんかもう炊くたびにガタガタ言うの怖くなってきて。これいきなりパーンって爆発したりしない?みたいな。内釜が黒ひげ危機一発よろしく飛び出して、ほっかほかごはんごと頭にスコーンってヒットしない?って。
自分の想像力の豊かさで肝を冷やした。セルフビビリで、いよいよ修理に出すことを決断。

でもさー、この炊飯器買ってまだ5年経ってないのよ。5年経ってないのに、こんなぶっ壊れ方あんの?って。メーカーはどう思ってるのよ。6万出して買った炊飯器が5年以内に壊れて、保証期間過ぎてるから修理に2万5000円かかりますって。悪徳すぎない?不親切だよ、マジで。
夫にそうやって愚痴ったら「いまの時代、家電は精密機械だからねー。壊れるものよ」って、は?いくら四十路近いからって不惑すぎない?って感じで寛大で。ソニータイマーの存在にともに憤ったあの頃の彼はもういないんだなって。そんなことを思いつつ。

イライラしながら、念のためにって、保証書探してみたらね、あった!
あったのよ!購入店の「5年間保証」!!
ギリッギリ。あと2ヶ月で5年経つ炊飯器。なんとコジマ電気が無料で修理してくれるって!!
あのロゴの太陽、笑いすぎてて怖いとか悪口言ってたの猛省するわ。いま(この瞬間)は、あの太陽ロゴを額に入れて飾りたいくらいだいすき。

こうなってくると、むしろ5年以内に壊れてくれてありがとね!つって。あと3ヶ月遅かったら詰んでたわーって。メーカーさんも逆にナイス仕事!つって。さっきまでの憤懣が嘘のように、くしゃみ一発で金髪のランチさんが青髪のランチさんになったくらいの変化っぷりで、そりゃもう意気揚揚と、コジマ電気に炊飯器持ってった。

修理、2週間かかるって。…代替機ないって。

え?2週間?長くない?
合宿だったら免許取れちゃうし、蝉だったら死んじゃわない?

普段のわたしなら、んじゃもう炊飯器帰ってくるまでの間は、外食で。外食に次ぐ外食でお願いしますってなってるところだけど。炊飯器にもゆっくり休養しておいでって快く送り出してやれるところなんだけど。
あのねー、めちゃくちゃタイミングわるい。
絶賛夏休み中の息子、じつは毎日お弁当持って学童保育に通ってるわけ。だから、どうしてもどうしても毎朝弁当づくりをしなきゃいけないわけ。最悪の展開。
モストオブ最悪。

白目むきながら即スマホで検索した。
「米 鍋 炊き方」つって。
不覚!って思いながら。このわたしが朝から鍋で米を炊くことになるなんて!そんなていねいな暮らしの基本みたいなことすることになるなんて!
どうにか楽してその拷問をクリアできないかって検索して。そしたらトップに「20分で炊けます!」って記事出てきて、マジでー!!つって。食いついた。
すげー、鍋のポテンシャルすげー!って、読んでみたら「浸水30分して」「火加減に気をつけつつ(分刻みで調整しててやばかった)20分炊いて」「10分蒸らして完成!」って…ゥオオオオオオィィ!!
1時間かかってるっつーの!!足し算くらいできるわ!全然20分で炊けてないことくらいすーぐわかるわ!って。米を炊くためにどんだけ早起きしなきゃなんないのーーー!!!!

脳内に「さよならの向こう側」が流れてる。
何億光年〜輝く星にも〜寿命があると教えてくれたのは〜あなたでした〜つって。
いつまでもあると思うな、親と炊飯器のある生活。

それでもわたしは料理の手抜きにおいて過激派を自称してる以上、ここでおとなしく1時間かけて鍋で米を炊くわけにはいかなくて。
もういっそのこと新しいの買っちゃう?って一瞬思ったんだけど、それはさすがに過激派がすぎるなって。修理に出した炊飯器帰ってきたら、まさかの炊飯器2台持ちになっちゃうっていうのも意味わからないなって、どうにか理性を保った。

だから、翌朝までに必死で検索しまくってたどり着いた。
わたしにとっての「最適解」。

夜の間に米を浸水させておいて、寝る前に一度水を切って冷蔵庫で保管。翌朝、鍋に米と水を入れて、一度強火で沸騰させる。沸騰したら弱火にして13分。時間になったら火を止める。

なんとこれだけで、ちゃんと炊けた!!
インターネットのある世界線に生まれてよかった!ありがとう、クックパッドとかいろいろ料理の記事アップしてくれてるひとたち!あなたたちが毎日おいしいごはんが食べられるように祈ってる!!

そんなわけで、いまだ炊飯器がメンテナンスという名のバカンス中のため、わたしは毎朝片手間に鍋で米を炊いている。
まー、こういうのも災害時に使える知識になるかもなとか、朝起きて炊飯予約スイッチ押し忘れてたことに気づくっていう絶望味わうこともないから平和かもなとか。毎日、鍋で米を炊きながら少しずつこの現状をポジティブに考えるようにしてなんとか耐えてる。

とは言え、一日でも早く炊飯器には戻ってきてほしい。スイッチひと押しでごはん炊けちゃうなんて素晴らしすぎる。あいつは天才。あいつは神。
そんなことを思っていたら、今日、帰ってきた息子に言われた。

「おかあさん、最近炊飯器じゃなくてお鍋でごはん作ってるでしょ?ぼくね、お鍋のごはんのほうがおいしいと思うよ」

「お鍋のごはんのほうがね、やわらかくなくて、おにぎりがおいしいと思うんだ」

グルメすぎん?一体どこのだれが、こんなに舌の肥えた小学生育てたの?こわ。

そっかそっか。なるほどねーって答えながら、心に決めた。
思わぬ鍋炊飯デビューかましちゃったけど、息子の意外すぎる言葉は、きっとこの事態にならなかったら一生聞けなかったよね。結局、わたしにとっては息子が「絶対」だし、彼が喜んでくれるならそれがいちばんいい。

うん。

炊飯器が帰還したら、今度からは「かため」で炊こう。
スイッチひと押しで、希望を叶えよう。

Last song for you、Last song for you、約束なしのお別れです
Last song for you、Last song for you、今度はいつと言えません

「さよならの向こう側」を、「鍋で米を炊く」に捧げよう。




この記事が参加している募集

夏の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?