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ランドセルを選ぶ息子を楽しむ

「ピンクのランドセルがほしいよ!」

半年前の息子はそう言った。
だってかわいいんだもん!と立派な理由も教えてくれた。

夫は、さすがにピンクは買ってやれないよなーとぼやく。
わたしは、なんで?ほしいって言ったやつ買ってやればいいじゃんと答えた。

「いや、6年間背負うんだよ?高学年になったら絶対にピンクなんて嫌になるよ」

夫の言いたいこともよくわかる。
だけど、わたしは息子の選択に絶対「ノー」を言いたくない。

「途中でピンクが嫌だって言い出したら買い替えてやればいいんだよ」

わたしの言葉に、夫は呆れたような顔をしたけれど、わたしは「買い替える」という選択肢について、わりと真剣に考えている。

だって、6年間同じランドセルを使わなきゃなんつーのはただの思い込みで。
別に法律で決められているわけでもないし、マナー違反でも何でもない。

わたしだって、これは一生モノになるぜ!なんて言って奮発して買ったバッグを、数回使っただけでクローゼットの肥やしにしたこと、何回だってあるもの。

息子がそのとき選んだものを、認めてやればいいし、気が変わったって、それも同じように認めてやればいい。

それじゃダメなのかな。

なんてことを思いながら。

いよいよ、息子が来週「年長さん」になるのを前に、本格的に「ランドセル選び」に着手することにした。

とりあえず、ネットであれこれ検索して、
いくつかの工房やメーカーのサイトをチェックしてみたのだけれど、

『ナスカンは転倒防止のために外れるよ!』
『大マチに刺繍入ってておしゃれだよ!』
『総内張り仕様だから便利だよ!』
『クラリーノは機能性抜群でおすすめ!』

なんそれ!!!!!!(ZAZY)

ランドセル用語、多すぎてやばい。知らん知らん知らん!!!!

もうさ、ちゃんと開いて、教科書が入ればいいのよ。
それだけ。望んでることはそれだけなのに、各社めっちゃアピってくる。
どれだけ丈夫だとか軽量だとか、便利だとか、おしゃれだとか。

わかった、わかった!!!!
みんながんばってる、みんな違って、みんないい!!!!

もうなにがなんだかわからなくなってしまったので、工房系とかメーカー系とか何のこだわりもなく、かたっぱしからカタログ請求をしまくる。
優柔不断すぎてエントリーシートでだれも落とせなかったから、とにかく全員面接きて!みたいな感じ。


んで、

連日、ポストにカタログが投函されて、それが10冊を超えたあたりで気づいた。

いや、もう絶対に決められねー。

これじゃ選択肢が増えるだけだ。

決め手がわからん。

どのカタログを見ても、と言うか見れば見るほど、「いろんな色があって楽しいと思いました」みたいな何の役にも立たない感想しか頭に浮かばない。

ということで、もう早々に。

社長ー!社長ー!つって。

結局、最終的に判断するのはこの人だから。
わたしは今回面接に来てくれたランドセルさんみんなポテンシャルあると思うし、どのランドセルさんも即戦力になってくれるって思う。だから、どのランドセルさんが採用されてもいいんじゃないかなって。

だからもう丸投げ!社長こと息子に丸投げ!

そしたらねー、

社長、意外なこと言った。
カタログを数冊パラパラとめくって、言った。

「この黄色いの、いいね!」

え、き、きいろ?ぴ、ピンクは?

なんかこの予期しないことを不意に言い出すところ、敏腕ぽい。
身を委ねていいのか不安になるほどの敏腕の社長ぽい。

息子がいいねと言ったのは、爽やかなレモンイエローのランドセル。

きれいだねと感想を言ってから、どうしてこれを選んだのか聞いてみた。

「だってさー、黄色のランドセルってあんまり見たことないでしょ。だれも持ってないからいいなと思ったんだよ」

あ、息子ってそういうタイプのひとなんだ。

みんなとは違う「自分だけ」が好きなひとなんだ。

思いがけず息子の嗜好を知って、すこし得したような気持ちになる。

この春、息子はランドセルを選ぶ。
いまの気持ちに従って、未来のための道具を決める。

かわいいものを身につけたがった半年前の息子、だれとも違う自分を気に入っているいまの息子。そして一年後の息子はきっとまた自分自身に対して違う感情を抱いているだろう。

そのこころ変わりはきっと成長でもあり、どの息子も正しく「息子」自身で、すべてがいとしい。

わたしは、ランドセルを選ぶ息子を楽しんでいる。
そして、次の春を心待ちにしている。


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