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『シン・ウルトラマン』みた正直な感想-若旦さんの単純な散文#10

公開初日に見にいった映画は、私の人生でこの映画が初めてだと思う。
別に映画レビューでご飯を食べてる訳でもないし、何より混み合うのが嫌だから。
ただ、ウルトラマンを観て育った一人の男の子として、いち早くこの目で観たい。もし観なければ、当分モヤモヤを抱えたまま過ごすことになるという一種の強迫観念ともいうべき思考が一気に首をもたげてきて、どうにもこうにも、どうにもならないくらいガマンができなかったのだ。

スティーブ・ジョブズの遺した言葉に「明日死ぬとしたらなにがしたいか」というのがあるが、昨日の私にとってそれは『シン・ウルトラマン』を観るだった。
これには、情報を可能な限り秘匿する『シン・ゴジラ』と同様の広報戦略の賜物であると同時に、『シン・ゴジラ』の作品としての完成度の高さからの期待感が根底あるということは、多くの方の共感が得られることだろう。

そして『シン・ウルトラマン』はその期待にかなり応えてくれた作品であったことはまず申し上げておきたい。
正直、思っていたよりも良かった。

一方で、『シン・ゴジラ』と同様に人を選ぶ作品であることもまた真なりである。
そもそも、厳密に人を選ばない作品なぞこの世に存在しないのだが、『シン・ゴジラ』並みには人を選ぶ作品であるように私は感じた。

ただ、作品全体に、ちゃんとメッセージ性もあるし、オリジナリティもある、そこをクリアにしながらちゃんと「ウルトラマン」の映画として成立していることには感服する他ない。
コレだけでも、一度は劇場に足を運ぶ価値はあると断言できる。

以下に感想を書いていくのだが、多少なりともネタバレを含むことをお断りしておきたい。それくらい秘匿情報に本作の肝となる部分が含まれているからだ。
本作は『シン・ゴジラ』同様ぜひ、ピュアな状態で観て頂くことを強くオススメする。

*1「ウルトラマン」タイトルバック

さて、まずは作品全体の評価としては5段階で[★★★★☆]である。
参考までに「シン・ゴジラ」の評価を申し述べておくならば、
[★★★★★]個人的には非常に満足のいく作品であった。

次に個人的に「良かった点」を三つあげたい。
・冒頭の『ウルトラQ』や『ウルトラマン』へのオマージュが神
・怪獣の造形かっこえええええええええええええええええええ。
・異星人としてのウルトラマンの描き方

まず冒頭、タイトルが、あの印象的なドロドロから始まる(*写真1)。
ご存じの方はパッとイメージが付くだろうが一応下に画像を貼っておく。

これが、原作なら「ウルトラQ」なのだが、今作では「シン・ゴジラ」と出てくる。これは、原作が企画上「ウルトラQ」の延長上の作品として作られたオマージュであることは明白なのだが、もう、コレだけで
「うぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉお」となる。

またタイトルのみでなくストーリーにおいても、ふんだんにオマージュが散りばめられている。
個人的に印象に残ったオマージュシーンを上げると、
「ザラブ星人にチョップして痛がるウルトラマン」
「巨大・長澤まさみ」
「異星人の科学力に挫折する隊員」
この3点。

一つ目と二つ目に関しては、作品にメフィラス星人とザラブ星人が出ると判明した時点でこのシーンが出るか出ないかは、特撮マニア界隈でかなり論争になっていたが、やっぱりあった。
ちゃんと「にせウルトラマン」が出てくる。
そして、割と似ている。
この辺は、原作を見ておくとより楽しめるのではなかろうか。
特に、「チョップ」のシーンは原作の撮影でスーツアクター(着ぐるみに入って演じる人)の方が、星人の着ぐるみの硬いところに当たってしまって、本当に痛がってると言うので結構有名なシーン。
ちなみにそのアクターの方は結果的に骨が折れていたのだとか。

三つ目に関しては、原作「ウルトラマン」においても描かれたテーマで、大きな壁にぶち当たった時に、どう振る舞うべきか。
今作の科特隊(今作では"禍特対")は非常に優秀で、ウルトラマンが飛来するまでに2体の怪獣(今作では"禍威獣")を撃退している。
それなりに自信があるところへ、圧倒的な科学力を持った異星人の登場という無力感。
原作よりもその辺りをより深く表現されていたたように感じた。
その点に関しては、後述する"異星人"ウルトラマンから見た人類の魅力というところに行き着くのではないかと思う。

怪獣の造形に関しては、なにも言うことはない。普通にかっこいい。
「ウルトラQ」に登場する怪獣もでてくのだが、「ゴメス」がちゃんと「シン・ゴジラ」の3Dモデルを流用してたりと、原作裏話的なものも細かく踏襲しながら、リブートされてて、本当にかっこいい。
未公開の情報だが、メフィラスの星人体とゼットンも出てくるので楽しみにしてほしい。
ちなみにゼットンはゼットン星人ではなく、なんとゾフィが連れてくる。
このシナリオも秀逸で、ここは異星人としてのウルトラマンの描かれ方にも関わってくる。

本作で異星人は全て"外星人"と呼称されている。
もちろん、ウルトラマンも光の星を母星とする外星人。そこからちゃんと任務を帯びてやってくる。それは各惑星の知的種族が"正しい進化"をするかどうか監視・管理すること。
ウルトラマン("光の星"での本名は"リピア")は人類の持つ"自己犠牲の精神"に興味を持ち、母星では御法度とされている原住知的生命体(この場合、地球人)と融合し、周囲の仲間たちとの交流を通じて、地球人への理解を深めていく。

今作において特筆すべきは、実にこの点で、ウルトラマンが地球人に対して愛着を深めていく過程が、原作より丁寧かつ最低限の説得力を持つ形で描かれている。
なぜ、ウルトラマンは地球人にそこまで肩入れするのか。
私たち人類が持つ"美しさ"、"強さ"の根源とは何なのか。
ウルトラマンというある意味、"個"として完成された比較対象を置くことで、それを浮き彫りにすることにチャレンジした、そんな作品と言えるのではないかと私は考えている。

本作では「シン・ゴジラ」同様スーパーメカも出なければ、レーザーガンも出てこない。
いわば、主人公を始めとする劇中の登場人物たちは私たちの代表的存在であって、彼らを通じたある種の疑似体験を経て、いろいろな気づきを与えてくれる作品に仕上がっていることは間違いない。

以上が、良かった点と私の感想。
他にも、路地裏の居酒屋で激論を交わすウルトラマンとメフィラスや、モーションキャプチャーのモデルに初代ウルトラマンのスーツアクターを担当した古谷敏さんの後にちゃっかり、庵野秀明が入っていたりと。
語りたいことが山ほどあるのだが、長くなりそうなので、これ以上は2回目に行った後のYoutubeで語ろうと思う。

ただ、総合評価の★ひとつ分のマイナス。
悪かった点というか、こうしておけば満点だったなぁというある種の"個人的なわがまま"を付記して、結びとしたい。

・もう少しメジャーな星人を出してくれ
 
⇨成田さんデザインのバルタンとか観たかった( ;  ; )…!!
・EDにワンフレーズでもいいから「ウルトラマンの歌」入れて!!
 
⇨米津さんが悪い訳ではなく、劇中にBGM使ってるんだからよ!!
・身バレが早すぎる!!
 
⇨今の情報社会を考えると逆にリアル…?
・上映時間を少し長めにとって!!
 ⇨
もう少し人間とウルトラマンの交流を深く掘り下げておけば、
  感動が倍以上になったと思う。


これを読んで気になっていただけたら、ぜひ劇場へ観に行って頂きたい。
そして可能なら、原作「ウルトラマン」視聴してからいくか、
特撮大好き人間をお供につれていくと、より楽しめると思うので、
どちらかをお勧めしておく。

みなさんの感想も聞かせていただけると、嬉しい限りだ。

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