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1-3*ご飯に行こう

何日もかけてようやくLINEを交換できたものの、続かない。
はじめの10日間こそ、毎日1回くらいのペースで返信が来ていたが、その頻度は毎日が2、3日に1回、3、4日に1回と緩やかに落ちていった。
ありがたいことにすぐに泊まりがけの実習が始まり、LINEを気にする余裕は少なくなった。とはいえ、休憩時間に返信来てるか否かで胸を高鳴らせてLINEをひらいていたのは言うまでもないけれど。

『3月後半から4月で空いてる日ありませんか?』
実習とはすごいもので、終わったらああしよう、これしよう、と欲がたまってくる。私のバイト先はシフトが15日締め。
ゆっくり続けているLINEで思いきってたずねてみた。
『空いてるよ。飯でも食べに行く?』
しばらくして返信が来た。胸が高鳴った。にやけた顔で一緒に実習をしていたTにLINEを見せる。
「彼からご飯に行こうって、誘ってきたも同然じゃない?」
なんてTに言われて嬉しさは最高潮。実習中の欲に感謝。勇気を出して良かった。

そうやって、必死に掴んだはじめての二人でご飯。
同じスーパーで働いているだけあって、地元は一緒。けれど、最寄りの駅は一駅違った。電車の中で待ち合わせて、街にあるイオンモールにいくことに。
待ち合わせは街に16:00頃。夜ご飯には少し早い。
イオンモール内のゲームセンターに立ち寄って、よそよそしくも初々しくメダルゲームを少々。ゲーム音痴な私は初めての体験に、横に座る彼にドキドキ。最後のメダルを私に渡して
「どうぞ」
って。結果は、見事に外れてしまって。そんな私をIは「そんなもんだよ」って笑うから私も嬉しくなって笑ってしまう。
ご飯はテナントのレストラン...ではなく、お手頃価格のフードコートの海鮮丼にした。価格も場所もレストランだと気が引けたし、大学のクラスメートがバイトしていたから八合わせたくもなかったし。一番は、隣を歩くことが精一杯で、幸せで、もう無理だった。

中学生の頃はクラスの男子と話していたりまんが借りたりガチャガチャを代行したりしていた。けれど、それをする度に周りの女の子から聞かれるのが嫌で徐々に男子と関わらないようにしてきた。
そうやって数年生きてしまったから、何を話したらよいかわからない。普段はよく話す私が口を噤んだまま口角だけ上がっているんだから彼も戸惑ったでしょう。
自分から話すことが少ない彼から学校のことやいままでのこと、ポロポロと質問してくれた。うれしい反面、すごく気を使ってくれてるんだろうなぁと感じた。

その感覚は合っていたようで、ご飯に行った次の日からLINEはパタリと来なくなった。