映画「オフィサー・アンド・スパイ」は、現代に通じる19世紀末の実話
私の憧れの19世紀末。イギリス、オーストリアの世紀末ファッションや芸術も好きだけど、フランスの世紀末芸術、文化も好きです。実はあまり詳しいとは言えないけど、雰囲気にトキメキます。雰囲気世紀末ファン。ミーハーかしら?いや、ミーハーです(笑)。
さて、この映画の監督はロマン・ポランスキー。その最新作です。ポランスキーは、何かとお騒がせで、どう捉えるか悩ましいところ。芸術性と、その本人のひととなり、社会的倫理をどう考えるか、折り合いをどうつけるか、私にはまだはっきりしたラインがひけません。都度、揺れます。けど、作品は大好きなんです。
何しろ、海のピアニストで号泣した私です。期待しました。そして、これは期待を裏切らない秀作です。久々にフランス映画をみた気分です。
実話を元にした物語です。有名な?ドレフュス事件は、フランス国家を揺るがす大スキャンダルで、主人公のピカール大佐が複雑で魅力的な人物として描かれています。エリートで、どちらかというと反ユダヤだった彼は、終身刑になったユダヤ人大尉ドレフュスの証拠の品が怪しいと気が付き、、、。
文書偽造、証拠隠滅、メディア操作。日本の現代的な問題にも照らし、ピカールの正義感はグッと胸に刺さります。でも、ピカール大佐は公明正大で清潔、隙のない真面目一筋という人物ではありません。あれだけ、大きな組織の中で、自分の何の得にもならない、命さえ危険にさらす正義感かわありながら、一方ではまことに人間的な面のある男なのです。魅力的な、スケールの大きな人ではありますね。一言では言い表せない人物です。しかも、イケメン。って、これは映画だから当然ですが(笑)。
また、映画という意味ではフランス映画らしい、色彩の美しさに魅了されます。特にフランス映画は、赤い色を生かすのが上手いんですよね。ハリウッド映画は満遍なく明るい天然色。または、作り上げた汚ない色が、それなりに満遍なく。
でも、フランス映画の色合いは、意図的に色をつかう気がします。気のせいかしら?
また、皆さまの軍服姿の凛々しいこと。軍人らしい鍛えた体にボタンが並ぶカッコいい紺色メインの軍服。ボタンは金色。そして、問題の赤が効果的に入っているデザインです。本当に、こういう軍服なのでしょうね。また、夏服がカッコいい。たくさん軍服姿が楽しめます。
そして、それぞれに似合うお髭。女性たちのドレス、石畳を走る二頭立ての馬車やガス燈、、、、。カフェのフレンチカンカン、石造りの建物、壁紙や部屋のしつらえ。もう、この辺りは言うことありません。堪能しました。
決闘の場面まであり、気持ちがヒリヒリします。まだ19世紀には決闘がゆるされていたのでしょうか。ゆるされてなくてもするのか?
日本でも、昨今、行政や民間でも大きな組織における文書改竄、証拠隠滅が問題になっています。司法でも行われ、国民の信頼感を失う情けない時代です。
現代は知りませんが、当時のフランスの巨大な組織ぐるみの行いを表に出す勇気に感動しました。しかも、それが特別に聖人みたいな人ではないことに、気持ちを捕まれました。自分を犠牲にしてまで、信実を貫こうとする生き方。投獄までされながらも自分を曲げない一貫性。味方になってくれる人をしっかり掴める実力もあるのでしょう。結末は、実話だからわかっているとはいえ、歴史サスペンスとして傑作で、見ごたえあります。
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