『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ— コンテンツ消費の現在形』を読んでの感想

はじめに

 コロナ禍になってしばらく経った頃、「ファスト映画」の違法アップロードがニュースになっていました。第一印象としては「何だか漫画村に似ているなぁ」と思いました。映画は長いですが、長いものが映画だと思っていたので、それを早送りや切り取りで見るのは、いかがなものかと疑問に思ったものです。
 そういう疑問を持ったまま、この本に出会い、するすると読み始めました。このnoteでは、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレー コンテンツ消費の現在形』の感想を書いていきます。

前提として

 私は2000年生まれでして、いわゆる「Z世代」だと思いますが、あまりその自覚がありません。というのも、私は流行に乗らない、友達が少ないタイプだからです。
 ネットフリックスやアマゾンプライムなどには加入しておらず、何か映像作品を見たいと思ったら、レンタルビデオ店に行きます。最近DVDを借りて長編アニメーションを観たのですが、わざわざ店舗まで借りに行きました。そして、急に「はっ!」となり、レシートの返却期限を見て、「あ~よかった、まだだ。明後日までだ。」と安心するような人です。10年くらい生きてる時代が昔のような感じです。
 親も映像作品にそこまで関心がないので、我が家でのネットフリックスやアマゾンプライムは需要度が高くありません。
 そして友達も少ないので、ドラマや映画の話をしません。数少ない私の友達とは、そういう話題にはなりません。ドラマや映画の話を持ち出して、友達を増やしたいとも思いませんし、ドラマや映画の話に付いていきたいから観る、ということもしません。私はそういうタイプです…。その点をご了承ください。

早送りすることについて

早送りすることについて、私自身嫌な視聴方法だなぁと思っています。私は映画やドラマに詳しくないので、制作側の意図がどうこう、というのは書けないのですが、単純に人の動きやBGMが倍速になることの違和感がすごいです。その作品の世界観がおかしくなってしまう。
普段私たちの生活は標準速度で送っているので、倍速の速さや音は馴染みがありません。なので、映画やドラマが倍速になると、その違和感を真っ先に意識してしまいます。

と言いつつ、私も再生速度を上げた(1.2倍~1.5倍)ことがあります。それは、リモート授業です。ズームなどのオンラインの授業ではなく、予め撮影された動画を視聴するタイプの授業がありました。これをオンデマンド授業と呼んでいましたが、そのオンデマンドの時は、速度を上げていました。

例えば数学のような授業は、説明を聞きつつ考えるという工程があるので速度を上げませんが、私は文系の学部だったので、説明系の授業の時は速度を上げていました。速度を上げた方が集中できてしまうんですね。それに、すでにテキストに書かれている文章を、先生が読み上げているときは倍速があって快適だなと思ってしまいました。

そうやって速度を上げていたのは、集中できるという理由以外に、単純に課題を早く終わらせることができる、という理由がありました。小中学生のとき、時計を見つめて「早く授業終わらないかな~」と考えていたことは、多くの方が経験済みかと思いますが、それが実際にできてしまう、自分の手で早く授業を終わらせることができてしまった、それがオンデマンド授業でした。

わかりにくい作品について

この本ではもう一つ、最近は「わかりにくかったから、つまらない」と言われたくないため、わかりやすさを重視する作品が増えてきた、ということも指摘しています。
そこで私が真っ先に思い浮かべた作品ー芥見下々先生の『呪術廻戦』です。この作品は今、「死滅回游」というデスゲームが行われているのですが、そのゲームにはデフォルトで8つのルールが課せられています。そのルールがややこしい、と話題になったのです。それで、YouTubeに解説動画も多く挙げられているのですが、そのルールが難しいと思う人と、そうでない人で少し言い争いが起きているのを見たことがあります。
(ルールが難しい、ややこしい、と言う人に対し、要約力・国語力がないんじゃないの?というものです)

「わかりにくくて面白くない」というので、読者が作品を離れる可能性があるということを知って、今さらながら芥見先生チャレンジしたなぁと思うのです。それでも、作中でルールについてだいぶ丁寧に説明されているように感じます。

また、

主人公がつらい目に遭うとか、好きな子に振られるとか、そういう”ロー”な展開はいらないんです。

映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレー コンテンツ消費の現在形 p204

とありますが、『呪術廻戦』は現在進行形で主人公たちが辛い目に遭っています。呪術を読んでいて、地獄展開というのはもう聞き馴染みのある言葉になりました。ネタバレは伏せますが、もうそろそろ主人公たち輝いてよくね?と思うくらいには、敵が有利です。ずっと手のひらの上です。
また、地獄展開は呪術だけに限った話ではなく、(大変な身内ネタで申し訳ないのですが)「タツキと下々は信じるな」という言葉があります。タツキというのは、『チェンソーマン』の作者の藤本タツキ先生です。このお二人は、味方側に有利な展開・状況から一気に地獄展開(誰かが死亡・怪我・取り返しのつかない事態)になるため、良い状況になっても安易に喜んではいけない、という意味が込められています。

また、週刊少年ジャンプは「友情・努力・勝利」が三大モットーとしてあるそうですが、『呪術廻戦』『チェンソーマン』などの展開から「裏切り・地獄・永眠」などと揶揄されることもしばしばです。

そして、そんな作品を、地獄展開を、ジャンプ本誌の読者は、嫌だ嫌だと思いつつも、待ち望んでしまっています。

なので、上記の引用部分を読んだとき、「あ、そうなの?」と疑問に、意外に思いました。

個人的には、作品は趣味・娯楽として存在しているので、鬱な展開も、よくわからない話もあっていいと思います。いつか、鬱な展開を楽しめるタイプになるかもしれないし、よくわからない話は、わかるようになるのかもしれない。わかりやす作品が多くなると、わかるようになったときの感動も一緒に持っていかれているように感じます。

さいごに

私は倍速視聴することや、わかりやすさを求めることに対して抵抗がありますが、それは、視聴者側が、その作品を理解しようとしていないのに「わからない」だの「つまらない」だのを言っているような気がしてしまうからです。
本文でも触れられていますが、マイナスな体験は共感を得られやすく、拡散されすいため、制作側が「わからない」「つまらない」に配慮しなくてはいけない事態になっています。

そもそも、あまり映像作品に関りがない私が何か言える立場ではありませんが、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレー コンテンツ消費の現在形』の感想を書きました。

まとまりも何もない文章ですので、次からはもっと上手に書けるよう努力します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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