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BAMBOO GIRL Ⅱ

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文芸社に今は時期じゃないね〜とつっぱねられてしまった、かわいそうな原稿たち。 SFジュブナイル『BAMBOO GIRL』の続編として書き始めた作品です。 本当に数えるほどですが実…
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#連作小説

第二夜【鬼の子】scene4

☆☆☆☆

 転校二日目。
 教室へ戻る男子の流れに紛れて、理科の授業をふけっていた火継と、教室まで着替えを取りに行っていた京子はばったり出くわした。
 何かを話しかけようとして硬直する京子を火継は睨みつけたが、無論敵意を感じなかったためか手を上げることはなかった。
 やっとのことで話す内容を見つけた京子が言った。
「あの、火継さん、次の授業、体育なんだけど」
 火継は、幼子の戯れに付き合う大人の

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第二夜【鬼の子】scene3

☆☆☆

 ホームルームが終わるとすぐに京子は、黒板を経由してチョークを一本取ってソラの机の前まで飛んできて、
「なにあれ、見た?」
 と目を輝かせながら言った。
 遠くで京子の親友の知恵が、悔しそうな顔をするのがソラの目に入った。京子が真っ先にこちらへ来たせいだろう。その旨を京子に伝えようとしたが、彼女の爛々とした目に気圧され、結局、見なかったふりを決め込んだ。
「すごい。あの子すごいよ。私びっ

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第二夜【鬼の子】scene2

☆☆

 教室に行くと、京子と目が合った。出会ってからずっと彼女の方から挨拶し、ソラが応答していた。今日はソラからおはよう、と言ってみる。すると京子も嬉しそうにはにかんでおはよう、と返す。
 座って鞄を机に掛けると、筆箱を取り出して天体観測部のノートを開いた。こうした朝の隙間時間なんかに仕事を進めておくと、後がずっと楽になる。
 スケジュールと費用を計算していた時だ。京子がぱたぱたと歩いてきて、ソ

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