【Review】2021年J1第36節 セレッソ大阪VS.川崎フロンターレ「狙いが共有できていた4得点」
はじめに
2021年J1第36節の川崎フロンターレは、4-1でセレッソ大阪に勝ちました。鳥栖に完敗した前節から約2週間相手の試合。ジェジエウ不在の不安もあるなかで、攻撃陣が爆発して勝利を収めて連敗を避けました。
セレッソ大阪は大久保の引退発表直後の試合を勝利で飾れませんでした。後半から出場した大久保はチャンスに絡むもゴールには至らず。天皇杯に向けてチームコンディションを上げていきたいところです。
戦い方を共有できた川崎
両チームの一つのポイントが「戦い方をチーム全体で共有できたか」でした。戦い方のイメージのズレはポジションや力の入れどころのズレに繋がります。そうしたズレを最小限にする事前準備として戦術があり、微調整するために戦術眼と呼ばれるものがあるのでしょう。
さてこの日の川崎は幸先よく先制できたこともあり、90分通して戦い方を共有して戦うことができていました。攻撃面では、主にサイドに作ったスペースからボールを運び、相手最終ラインの背後を狙ってPA内に進入するプランでした。鬼木監督としては物足りない部分もあったようですが、少なくともイメージの共有はできていたと思います。
鬼木監督「もっと大胆に背後を狙う、サイドを変えることを狙っても良かったのかなと思います。ただ得点シーンもそうですが、そこは積極的に狙ってくれたという思いもあります。」
(引用元:川崎フロンターレ「ゲーム記録:2021 J1リーグ 第36節 vs.セレッソ大阪」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2021/j_league1/36.html>)
また戦い方を共有できていた上で、相手の状況を見て判断できていました。たとえば、脇坂のコメントにあるように、相手を中央に寄せてスペースを作ってからサイドにボールを運ぶなどは、試合中何度も見られた光景です。この辺りの意思疎通がメンバー間でできていたことが伺えます。
脇坂「まずは中を見るというところと、一回、相手を締めさせてからサイドに展開する。そういうゲームメークはチームで共有できていた。」
(引用元:同上)
試合の流れを共有できず
一方のセレッソとしては、序盤に失点したこともあってか、チームとしての戦い方が共有しにくかったように見えます。やはり立ち上がりでプランから外れてしまうと、軌道修正が難しいのでしょう。
もちろん右サイドの坂本、松田の攻撃を軸に組み立てているのは感じ取れたものの、そのためにどのような状況を作っていくのかが明確ではなかったように見えます。おそらく理想的だったのは前半17分、清武が右サイドで4人目の動きで崩した場面。ああいったサイドチェンジから数的有利な状況でPA内に進入するのが主な狙いだったのではないでしょうか。
当然ながら事前にスカウティングをした上で、川崎対策も含めて戦術の共有はされています。となると試合中の舵取りが上手くいかなかったのでしょう。事前のインプットと、実際の対戦相手の状況とのギャップを埋める作業で戸惑っていた印象です。
特に川崎の3センターへの対応で後手を踏んだ印象です。おそらくセレッソの狙いは、川崎の2CBに2トップでプレッシャーをかけることで、直接サイドにボールを運ばせる展開にしたかったのだと思います。実際に川崎は前節鳥栖戦で、2CBのパスコースを阻害されてビルドアップに苦しんでいます。
しかしこの日の川崎はプレスにも引かず、3センター経由でボールを運ぶチャレンジが多かったです。これによってセレッソは中盤の主導権を握れません。ダブルボランチを採用しているため、3センターに対して中央で数的不利になるためです。それを避けるためにサイドに誘導する狙いを持っていましたが、結果的には不発に終わります。
こうしたギャップに対して、理想的なのはピッチ内の選手がポジション変更などで対応することでしょう。ただこの日は流れの中で調整することは難しかったようです。この点に対して、小菊監督はチームとしての試合の流れを読む力に差を感じています。これはピッチレベルだからこそ見える部分なのかもしれません。
小菊監督「川崎はチームとしてしっかりと守る時間帯、逆に攻撃のパワーを強く出していく時間帯。チームとしての試合の流れを読む力が共有されているなとグラウンドで感じました。そこは私たちも、チームとして共有することが、今後は必要だと感じました。」
(引用元:同上)
実際、試合の大きな流れとして、どこで攻勢に出るかが共有されていないように感じました。大久保を投入した後半頭からギアを入れるかと思いきや、スローペースで川崎の攻撃を受ける展開で始まります。そのためマルシーニョに3失点目を許し、厳しい試合になってしまいました。
また試合終盤には瀬古の攻撃参加を増やすなど、攻勢に出ようとする意図は見えるものの、チーム全体として共有されていないために、ポジショニングが噛み合っていませんでした。ああいったオプションを今後戦術としてチームに浸透させていく必要があるでしょう。
もう恐れない橘田
プロ1年目を終えようとしている橘田ですが、球際の強さに自信を付けているように感じます。それはフィジカルに限らず、ボールの持ち方も含まれます。もうシーズン序盤の控えめな感じはありません。
ボールの持ち方でいうと、引き技を使っても奪われないようになりました。シーズン序盤は足裏で引くプレーやダブルタッチが相手に引っかかることが多かったのですが、最近ではあまり見られません。きっとJリーグに慣れて、ギリギリでかわせる距離感を掴んだのでしょう。
これによって余計な接触を減らせますし、相手の矢印の逆を突くことで一気に前を向ける回数が増えました。今後、攻撃面での活躍を予感する理由もここにあります。実際、この日の2得点目のように相手を至近距離でかわして前向きにボールを運べるようになってきているのは、良い兆しだと思います。
他方で、どれだけかわせるようになっても、相手との接触を避けられないこともあります。しかし、そういった場面でも当たり負けしないような強さも身につけてきています。
むしろ最近は相手の寄せを一旦背中で受け止めるプレーも試しているように見えます。相手の勢いを背中で殺すことで、追撃を防ぐ狙いがあります。もしくは相手に矢印を強く出させて、その逆を突く狙いもあるでしょうか。こちらは大島の得意なプレーですね。
いずれにせよ、相手の寄せを良く見えてきているのだと思います。寄せに対する判断は試合ごとに良くなっています。その上で各判断後のプレーの精度が上がってきているのが現状です。
次のステップとしてはそれを90分通して保つことでしょう。連戦が続くと90分維持することがまだ難しいので、スタミナの向上や省エネなどの対応が必要になってくるでしょう。
おわりに
ダミアンはこの日の2得点で得点王争いに踏みとどまりました。個人的にニアを撃ち抜いて決めた2点目は、ダミアンのシュートテクニックの高さを非常に感じました。声出ましたね。。
あとは大久保が引退するため、後半は大久保の動きに目が行きました。「まだまだやれるだろ」という思いを感じつつ、谷口とポジション争いをしていることにワクワクしていました。無邪気に谷口に仕掛けているようにも感じられ、微笑ましく見えました。
大久保選手、本当にお疲れ様でした。3年連続得点王の記録は、川崎サポーターとして今でも誇らしいです。ありがとうございました!
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