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【Review】2020年J1第1節 川崎フロンターレVS.サガン鳥栖「変化を求めたチームの第一歩」

 2020年明治安田生命Jリーグがようやく開幕。今年も川崎フロンターレのレビューを書いていきますので、ご贔屓のほどよろしくお願いします。
 ちなみに今年はちょっとしたスタッツの画像をプレビュー代わりに貼っていこうと思ってますので、そちらもよろしければ。

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それでは、キックオフ!!

はじめに

 2020年J1第1節の川崎フロンターレは、0-0でサガン鳥栖に引き分けました。ルヴァンカップ清水戦で5得点を挙げた攻撃がこの日は不発で、シュート24本が空砲に終わりました。これでホーム等々力開幕戦のは8試合連続引き分けになっています。
 一方DHC撤退に揺れる鳥栖はルヴァンカップ札幌戦に続き無得点。暫定スポンサーの佐賀新聞社に勝利を届けることは出来ませんでした。

システム変更の狙い

 3連覇を逃したり鬼木体制4年目であったりで変化を付けたいチームに対して、鬼木監督が選んだのが「4-3-3」へのシステム変更。序盤のチームを見ていく上では、この変更の目的と結果を丁寧に見ていくことが必要です。
 正直そこまで情報を追えていないのですが、鬼木監督のここ2試合のコメントを見る限り、チームの狙いは①ゴール前に人数をかける②パス&ゴーで相手を上下に揺さぶるあたりでしょう。これらに加えて前線からの守備の強化もあると思いますが、一旦置いておきます。

鬼木監督「去年と違うのはゴール前に人が入って行けるようになっていると思います。そこが今までとはちょっと違うかなとは思っています。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2020 YBCルヴァンカップ 第1節 vs.清水エスパルス」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2020/levain_cup/01.html>)
鬼木監督「ただ、話をされたように途中のところでボールは握りますけど、相手を動かすためにもっともっと背後に走るだとか、当てて入っていくだとか、そういうプレーは減ってしまったかなと思います。後半の最後に盛り返したところは、結局は怖がらずに向かっていけるかというようなところになってくると思います。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2020 明治安田生命J1リーグ 第1節 vs.サガン鳥栖」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2020/j_league1/01.html>)

 実際のプレーを見てもこの狙いは伝わってきました。特に②は縦方向への遊び玉味方を追い越す動きが多く、選択するプレーの割合からもよく分かります。
 一方で①については、ゴール前にスペースを作るために、はっきり最前線の長谷川をタッチライン際に配置して相手最終ラインを横に広げようとしていました。三笘に替えてフレッシュなドリブラーをサイドに置き続けていたのもその狙いを継続するためでしょう。また②の狙いも相手を縦に揺さぶることでゴール前スペースを作ることに繋がっています。
 そうして作ったスペースに中盤3枚だけでなく、SBの選手が侵入していくのが今年の基本スタイルになるのでしょう。登里が深い位置まで上がっていたシーンが印象に残っている方も多いのではないでしょうか。なおこの試合ではPA内進入回数は22回を記録しています(昨年は1試合平均15回)。

登里「もっと崩す回数のところ。ドリブラーがいる中で相手を引きつけてくれるので、自分のランニングも生きてくる。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2020 明治安田生命J1リーグ 第1節 vs.サガン鳥栖」

 一方で進入した後のプレーは各選手に任せられているように見えました。たとえばこの日は登里からダミアンへのクロスは届かず、まだイメージが共有出来ていないようでした。この辺はかつての車屋-大久保ホットラインが未成熟だった頃を思い出しますね。

未成熟な433の守備

 この日433の守備で気になったのが、一列目と二列目それぞれの3人が同じレーンにポジショニングしていたことです。そのため、たとえばダミアン-家長と田中-脇坂のそれぞれの間を1本のパスで通されることが何度かありました。
 今年の川崎は相手最終ラインに対して前線3人がプレスをかける仕様になっているため、中盤は3人で横幅いっぱいを守らなければなりません。そのため前線3人でパスを誘導して守るエリアを限定、そこを中盤3人で埋める必要があります。
 しかしこの試合では連携が曖昧になる時間帯があり、結果的に前線と中盤の2層の守備フィルターが機能しない場面が何度か見られました。鳥栖の高丘や宮がその隙間を狙ってFWにパスを出していましたが、おそらくこうした川崎の構造的な問題を事前にスカウティングしていたからではないでしょうか。
 後半途中にこの問題への対応からか、長谷川が中盤に降りて4枚で守るソーンがありました。ただ各々が人を捕まえる守備で、組織的に整備されているようには見えませんでした。433というと、マリノスやマンチェスターCのように5レーン理論を取り入れたシステムが頭に浮かぶかもしれませんが、川崎の場合は積極的に採用してはいなさそうです。
 2連覇時にチームを支えた前線からの守備を、このシステム変更で取り戻すことが出来るかどうか。ここが今年のポイントになるでしょう。

松岡が前を向けていたら。

 対する鳥栖は試合中選手を識別するのが難しいくらい、だいぶ入れ替わり若返っていました。そんな鳥栖の大きな狙いとしてはボールを保持する時間を増やすことによる失点減少&得点増加でしょう。ただ後ろからのボール保持は不安定で、そこから攻撃に繋げられたシーンは少なかったので、道半ばといったところでしょうか。
 チームの攻撃にスイッチを入れていたのがGKの高丘でした。基本的にGKまで下げるのは最終ラインでのボール回しが厳しくなった時なので、GKは難しい状況でボールを受けるケースが多いです。それでも高丘は広い視野と正確なロングキックを武器に、ピンチをチャンスに裏返そうとプレーしていましたし、川崎は何度かピンチを作られました。 
 また個人に目を向ければ、松岡の展開力や縦に入れるパスは魅力的で、札幌の荒野に近いものを感じました。この日もったいなかったのが前を向く場面が少なかったこと。これは周囲のサポートの問題でもありますが、それだけでなく松岡自身が川崎のプレスを必要以上に感じていたからでしょう。
 松岡はCBのパスから一発で前を向かず攻撃に手数をかける場面が多かったですが、もっとシンプルに趙東建に繋がれた方が川崎としては嫌だったと思います。前線3枚に絡む本田と原川を川崎守備陣が掴み切れていなかったので、そのコンビネーションを使われる機会が多かったらやられていた気がします。

おわりに

 噂に聞いていた433を実は今年初めて見たのですが、まず脳裏によぎったのは「憲剛の帰ってくる場所はあるのか…」という不安でした。昨年までのトップ下はありませんし、中盤3人には最低限の守備での走力が求められる戦術だと思います。憲剛はどのポジションで戻ろうと画策しているのか気になるところです。
 あとは田中が肝の戦術にシフトした印象を受けました。もちろん去年から特に守備での貢献度、依存度は高かったのですが、より拍車がかかってます。この日出ていない選手だと守田、山村、下田が競争相手ですが、いまの田中の役割をそのまま担える人はいなさそうなので、過密日程をどう乗り越えるかは注目です。
 さてリーグ序盤はルヴァンとの連戦があり、来週末の札幌戦以降中2、3日での連戦が続きます。昨年は第5節で掴んだ初勝利。早めにリーグ1勝目をあげて、みんなで喜びたいですね。

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