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【小説】フラッシュバックデイズ 24話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

24話 インド編④ バングラッシーとハシシ

バラナシで最初に泊まった朝。安宿の屋上には安宿には珍しくレストランがあった。テラス席からはガンジス川が見え、風も心地よく、飯も美味かった。この宿に宿泊する人はもれなくこのレストランを利用するのでだいたいの宿泊客とは顔を合わせる。
この宿は日本人宿ではないが、地球の歩き方にも掲載された宿のためか、日本人も多く宿泊していた。
大学生やバックパッカーとの話も楽しかったが、俺のようなドラッグ目的のジャンキーは見当たらなかった。
大学生やバックパッカーは観光に出かけ、一人になった俺はネタでも調達しに行こうかなとレストランでボーとしているとお団子頭の日本人のヒデという男に声を掛けられた。しばらくお互いの自己紹介の話をした後、俺のオランダのアムステルダムの話でジャンキーだと確認すると、「バングラッシー(大麻入りラッシー)でも飲みに行きません?」と言い出した。
「いいね、行こうか」
早速バラナシの巨大迷路へと出かけた。

ヒデについていくとチャイやラッシーを売っているような普通の屋台だった。強さを選べるというので調子にのって最強のマハラジャのバングラッシーと伝えると、普通の白いラッシーを持って店の奥へと消え、おそらく大麻を混ぜ、ラッシーは緑色になって再び戻ってきた。
バラナシ名物バングラッシーに2日目でありつけた。
まずいと聞いていたが、本当に大麻が入っているのか分からない程、ヨーグルトの味が強く美味だった。
ヒデは一週間程バラナシに滞在しており、バラナシ2日目の俺にバラナシの迷路の攻略方法を伝授してくれた。おかげで大体の土地勘がついた。
お互いバングラッシーが効いてきたせいもあり、日本食が食べれるという店へリキシャで向かった。
バングラッシーはアムステルダムのスペースケーキ程ではないが、動くのが億劫になる重みがありつつも、一旦動き出せば気にならない丁度よい効きだった。
日本食の店内は珍しくエアコンが有り、冷房が効いていた。
それだけでも天国だったが、メニュー表にうどんとおにぎりを見つけた時は笑顔を隠せなかった。しばらくしてテーブルに運ばれてきたのはうどんとおにぎりは間違いなく「日本の」それだった。異国の地で食べる日本食は格別だった。
食事を終えると、ヒデが面白い提案をしてきた。
このレストランで別れ、お互い今から何かしらのネタを手に入れ宿に戻り、夜にそれぞれのネタを楽しもうというものだ。
勿論この提案に乗り、エアコンの効いた天国から下界に下りた。

日本人が一人で歩き出せば、間髪入れずに、インドの男達は頼みもしないのに声を掛けてくる。
子供達は相変わらず、小銭をせびりに来る。
ヒデとの約束があったため、ガンジャはいらないか?、マリワナ~と声を掛けてくる男には足を止め、話を聞いた。
まず、大体の値段を聞き、実物を見せてくれるか?試す事はできるか?といった手順を踏んでおくと、無駄足やカスネタを掴ませられる可能性はぐっと減る事をニューデリーで習得していた。

俺はハシシがあるという魅力的な誘惑に負け、ある男の後ろについて歩いていた。
すぐ着くいいながら、かれこれ数十分歩いている。どんどんと人気のない路地の迷路の奥へと来てしまった。なんだか急に不安になってきたが、ここまで来たら引き返すわけにもいかない。
すると、この男の住居なのだろう普通の民家に男は入っていった。入るのを躊躇していた俺に、入れという男のジェスチャーで中に入ると、薄い布で囲まれラグが敷かれた部屋に通された。ここで待っているように言われ、俺は数分前に出会ったばかりの男の家で一人という状況に不安を覚えた。
インド人は良いヤツか悪いヤツかがぱっと見で分からず、俺を連れてきた男は無表情で何を考えているかわからない怖さがあった。
不安が増していった時、男は水の入ったコップを持って戻ってきた。
何か盛られていたら俺は身ぐるみ剥がされるだろうが、断ると逆に不信感を与えるので、ありがたく頂く事にした。金属製のコップにまで伝わる程冷えた水だった。疑って悪かったと謝りたくなるほど美味い水だった。
男はエスニックな柄のガーゼで包んだ包みを床のラグに置き、丁寧にガーゼをめくると、油性マジック程の大きさの茶色い塊のハシシが現れた。
こんなに大きいハシシを見るのは初めてだが、平静を装い、試し吸いをした。
「GOOD?」と聞かれ、俺が親指を上げると無表情の男の顔が少し緩んだ。
ストーンしてしまう前に金を渡して帰ろうとすると、男は他に欲しいものはないか?と聞いてきた。他になにがあるのかと聞き返すと「ブラウンシュガー」はいらないか?。一瞬何の事かわからなかったが、ヘロインの別名であると思い出した。まさかここでヘロインに出会うと思わなかったので驚いた。一応値段を聞いたが、ヘロイン=ポンプ(注射器)のイメージだった俺はヘロインはさすがにヤバいと思い、少し考えさせてくれてとやんわりと断った。
男は少し残念そうだったが、俺が帰ると立ち上がると、送って行ってやると宿泊しているゲストハウスの名前を聞いてきた。
ハシシが効いた状態でゲストハウスまで戻るのに不安があった俺は男の親切心に感謝したが、後にこの男に付きまとわれるとはこの時予想だにしなかった。
ハシシが予想以上に効き、俺は千鳥足でふらふらと歩き、男についていくので精いっぱいだった。
日も暮れかかった帰り道の途中、出合頭に牛とぶつかりそうになった俺を男は引っ張って阻止してくれた。この男がいなければ俺の身体のどこかに牛の角が刺さっていた。
実際、男の案内なしに無事ゲストハウスに戻れなかったのは間違いない。

ゲストハウスの前には帰りの遅い俺を心配してヒデが待ってくれていた。
「長旅やったっすね~」
俺は苦笑いで返すことしかできなかった。

つづく

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