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歳を重ねるということ

お母さんのお腹で十月十日の時間を経て、目一杯大きな産声を上げた瞬間からあなたの体に命の灯火が宿った。
産声はカウントダウンのスタートの合図。

歳を重ねるということ。
それは産まれてきてから暦で365日、もしくは366日経って、皆んながとびきりの笑顔でお祝いしてくれるということ。

歳を重ねるということ。
それは自分の意思で誰かを呼んで、何かをしてもらえるということ。

歳を重ねるということ。
それは自らの足で立つようになり、固形物も食べれるようになっていくこと。

歳を重ねるということ。
それは自力でできることがどんどん増えていくということ。

歳を重ねるということ。
それは新しい知識をどんどん覚えていくということ。

歳を重ねるということ。
それは育ててくれた人に反抗を示すようになること。

歳を重ねるということ。
それは誰かを好きになったり、家族以外の人間に愛情を感じること。

歳を重ねるということ。
それは青かった春を通り過ぎて、社会に入り込むということ。

歳を重ねるということ。
それは新しく家族が増えるということ。

歳を重ねるということ。
それは我が子と一緒に歳を重ねるようになること。

歳を重ねるということ。
それは今まで1人でできたことができなくなっていくこと。

歳を重ねるということ。
それは覚えていた知識が頭から抜けていくということ。

歳を重ねるということ。
それは自力では立てなくなって、固形物すら食べられなくなるということ。

歳を重ねるということ。
それは誰かを呼んで、自分ではできないことをしてもらうようになること。

歳を重ねるということ。
それは大きな産声を上げて生を受けた時とは違って、声も碌に出らず静かに浅い呼吸をしながら、沢山の人が涙を流して祈り、見守ってくれること。

歳を重ねたということ。
暦を何周も周り、命の火種が消えたということ。
つまりカウントダウンを終えたということ。


木を植えて、小さな芽が出て、根気強く水を遣り(やり)、やがて花が咲き、そして少しずつ枯れていくかの如く、人の命は儚くて、そして麗しい。

伸びた芽が立派な"樹"となった時、新たにその樹からまた枝が伸び、実をつけてそれが誰かの為になる。

歳を重ねて、重ねて。
その身がやがて枯れていき、そして朽ち果てるまで歳を重ねきったのなら、天寿を全うした証。

その生涯に残したものは何なのか。

大切な人に想いを遺せたか。

やり遂げることなく終わったことはないか。

今現在生きている人は皆全て命のカウントダウンを進め続けている。

その数字の列に"0"が並ぶのはいつの日か。

ひたすらに、我武者羅に生きて生きて生きて。
必死こいて生きられるだけで生きて。
時にみっともない姿を晒したりもして。

それを恥じることなんぞあるものか。

その果てが灯火の火種の尽きる日なのであれば、

迷いなく受け入れることもできることだろう。

ひろき

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