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六人の嘘つきな大学生 感想 頭の回転が速い作者が書いた表向きは爽快サスペンス・中身は人間の本質を描いている

読む本までもSNSで調べる時代。

ども~647です。夏最高だよね!テンションMAX。
最近土日に1回は外出する予定を入れることを目標にして、かなり充実しています!マッチングアプリもやって意識高いやろ!でも彼氏はできん!なんでや!(知るか)
今週は飲み会だけだったので、本でも読んで文化人しよ~っとおもってツイッターやインスタグラムで結構おすすめされていた本、読んでみたよ。

最近は行くご飯のお店、ネイルサロン、美容室、読む本や漫画、アニメ、映画までも検索エンジンではなくインスタグラムで調べる時代。うーん便利すぎて困っちゃう!そんな平成生まれですわ。

この作品、刺さりまくった!

めっちゃ面白いので是非読んでください!

私の印象は作者の頭の回転の速さが垣間見えるテンポの良い作品。
無駄がなく一気に読めます。

印刷会社の営業マンから作家になったようですが、うーんだからか、要約されていて理路整然としている文体でしたね。無駄がない!私は大好き!

文学的な作品が好きな人はあまり好みではないかもしれませんね。ま、文学作品が好きな人はミステリを読まないと思うから大丈夫だろうけど。

しかしさすがは物語書きですよね。人間に対する考察の深さがうかがえます。

ミステリベースにして読者をひきつけ、人間の本質を突くメッセージとなってます。

概要と感想

まぁいってみればインスタグラムみたいなベンチャーITへのリクルート活動を通して人間の本質を描いています。なんと初任給50万円!の就職が決まれば人生花道の就活生にとって一大事の試験です。
最終選考に残った6人が描かれていますが、最終選考はグループディスカッション。問題なければ全員内定がもらえるという話で、6人で仲を深めて最終選考に備えていたにもかかわらず直前で内容変更。合格者は1名のみ。しかもディスカッションで6人で決定しなくてはならない。

この本、ミステリになっていて、この、最終選考で「事件」が起こります。
それはグループディスカッション中に6人の「悪事」を描いたファイルが見つかるというもの。

この作品が面白いのは本を読み進めていくうちに6人の印象がコロコロ変わっていくところ。

人間の本質を描いています。

人間とは必ず表があれば裏がある。
リクルート活動なんて一番わかりやすい、「表」をいくら美しく見せるか活動ですよね。
着飾って着飾って着飾って。
馬子にも衣裳。

一番美しい自分だけを見せて、一番美しく見える企業に就職する活動なのです。

この本はざっくり言えば、それ(就活)ってどーなん?ってアンチテーゼする作品って感じですね。

ながれはざっくり↓のようになっています。

6人の印象の変化

①数千人の中から選ばれた6人です。みんな優秀で、非の打ちどころのない優秀な学生。みんな協力し最終選考に備えます。
②が、暴露ファイルにより「いじめで自殺に追い込んだ」「彼女を妊娠させ、中絶させ、捨てた」「実はキャバ嬢」「詐欺アルバイトに加担」「未成年飲酒」「兄が最近麻薬逮捕されたミュージシャン」が暴かれます。
③時を経て、当時のことを6人にインタビューされるシーンが挟まるのですが、その中での6人は②で暴露されたような素を見せており、悪い印象を受ける人物に描かれています。
④最後、実は「自殺したのはいじめていた加害者だった」「中絶は合意の上で彼女は恨んでいなかった」「元キャバ嬢だったのは海外旅行に行くため。今は貧困国のNPO的活動をしている」「詐欺アルバイトに気づいて2回だけでやめた。しかもおかしいと気づいて指摘し、友人にも退職を促した」「麻薬をやったのは事情があり今は更生しミュージシャンとして再ブレイクしている」という逆暴露があります。※未成年飲酒をした波多野は逆暴露をした本人のため、なし

ミステリ部分

すごいのが、ミステリーに関してもちゃんと盛り上がりを作ってあるので、飽きる間もなく読み終えられますよ!

①ファイルを会議室に置いた犯人→真犯人に指示され、会議中にバレる
②犯人を脅しファイルを置かせ、他のメンバーも脅して偽装工作した真犯人→物語の最後に明かされる
③濡れ衣を自ら被った犯人→会議中に真犯人を突き止めるが、好きな人を合格させるため濡れ衣をかぶって、会議中に「犯人」とされてしまった(物語前半の”語りて”)
④濡れ衣は明らかで、真犯人と疑われた人物→③はあっさり罪を認めすぎていて真犯人ではないのではと疑われた。そして読者も④が真犯人だと思うようにかなり後半までミスリードされている。が、実際はもう一回どんでん返しがあり、②が真犯人だとこの本の中で突き止める。ちなみに試験の合格者は④のみ(物語後半の”語りて”)

このミスリード数は素晴らしい。伏線もしっかり回収されますよ!

ミステリ部分だけでもかなり評価できるのに、人間心理まで考察されちゃあ敵いません。

就職できた④は兄が薬物ミュージシャンなだけで、自分自身に罪はありません。真面目で優秀な学生でした。しかし自分がまじめだから、人を信じすぎた。社会人は嘘をつく。それこそ息をするように。
就活生も嘘をつきますが、社会人はその比なんかじゃない。
就活生が「バイトリーダー」で「慈善活動サークルのリーダー」であると同時に、大企業は「ダーツのある会議室」なんてCM(宣伝)する。
人間も会社も美しい表があれば、裏がある。

では、一つでも欠点があれば、その人は悪い人なのか?

人の一側面だけ見て、判断するのは早計ではないか?

この作品は、

そんな就職活動に何の意味がある?

と、問うてくる作者の愚痴のような作品でした。

そして私はこの問いに対し、こう思います。

結局就活って「運」なんだとこの本でも書かれている。
でもさ人生も運じゃないですか?

私は、たたき上げの田舎出身の上京OLだけど、天皇陛下の子供に生まれていたら、こんなNoteなんて絶対書いていなかったと思いません?

じゃあ希望して天皇陛下の子供に生まれる努力ができたかと言われれば、無理じゃない?

人生の岐路はすべて運なんですよ。

でもじゃあ努力や就活が無駄って私は思いません。
なぜか?

その企業に入るために自分をとりつくろえないような、そんな簡単な作業すらしないような怠惰な人間は、社会に必要とされていないからです。

齢30年(くらい)。社会人として10年(くらい)。

確かに運要素もある。
でも100%運じゃない。
60%は、努力である。
では、努力しなければならないのではないか?

人間は100%善人は存在しない。
私側から見たら嫌味~なやつが、裏側で誰かを助けてあげているかもしれない。

色々な側面があるから、数学みたいに答えは一つじゃない。

だから人間社会って、人間関係って、複雑で面倒で、あきらめたくなる。

でも0か1か、みたいな判断基準じゃないからこそ成り立っている、この繊細なバランスが美しいから、私たちは人間関係を築くのだし、人間関係を築くからこそ、繁栄してきたのです。

つまり就活が善か悪か、『フェア』か、と言われれば『アンフェア』かもしれない。

しかし、私たちってさ、生まれたその時から『アンフェア』じゃん?
自然の摂理がフェアじゃないのに、私たちが作ったルールをフェアにできるわけないじゃん?

社会人歴10年(くらい)。
ソサエティにそまったら、こんなに角が取れて丸くなりましたよ。

見てるか―?20歳の私。頼むから失望しないでくれよ。
こんな考えでも、相変わらず人生楽しいぜ。

角が立っている方が洗練されていてかっこよく見えるけど、丸いのも悪くないってわかるよ。


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