私と父と野球観戦
私にとってスポーツ観戦といえばやはり野球である。他のスポーツを観戦するのも好きだが、野球はなんとなく別格な感じが私の中にはある。
それはなぜかというと、野球を観戦してきた私の中の歴史が圧倒的に長いということがあるように思う。私の父は1950年代生まれであり、王・長嶋が大好きな世代である。私の父の世代の人にとっては二人は大スターだったようだ。
愛知県出身の父だが、特に長嶋茂雄さんの大ファンだった父は巨人が好きだった。
長嶋茂雄さんが引退してからも父は巨人ファンであり続けたので、私も自然に巨人の試合を見ることになった。小学生の低学年の頃に意識的に野球を観るようになり、その頃の野手は松本さん、篠塚さん、吉村さん、駒田さん、原さん、岡崎さん、山倉さん、クロマティさんなどが活躍していた。強くてかっこいいイメージが今でもある。
投手はなんといっても斎藤さん、槙原さん、桑田さんの3人の印象が強い。
私は自然と巨人ファンになり、父と一緒にテレビで巨人戦を観て応援していた。
そのころは全国ネットで、巨人の試合はおそらく毎試合放映してたのではないだろうか。
私がはじめて買ってもらったグローブは長嶋茂雄さん好きの父の影響で、長嶋一茂モデルだった。みんなと違う青いグローブがちょっとした自慢であった。買ってもらった当時はヤクルトのルーキーで大いに活躍が期待されていたものだ。
ただその数年後から始まった、巨人のなりふり構わない戦力補強に父は嫌気がさしたようで全く巨人に興味をなくしていった。
そんな父に合わせるように私も野球から離れていき、小学校高学年から大学卒業までまったく野球を観なかった。
例外的に松坂大輔さんが大活躍した年の夏の甲子園はテレビ観戦して興奮していたが、プロ野球は見ようとも思わなかった。
しかし野球との再会は突然であった。
大学院に入学して同じゼミの友達二人が広島カープファンだった。二人とも関東出身なのだが、なぜかカープが好きでカープを熱烈に応援していた。
それに影響されるように、私もだんだんカープファンになり球場に足を運ぶようになった。
当時のカープは弱かった。
打てない、守れないチームで感覚的には球場に観戦に行くと毎試合負けていたような気さえする。
私はその頃、よく神宮球場にカープの試合を観に行ったのだが、まだカープの人気がで始める前だったので席はガラガラだった。
試合開始後に球場に到着しても、外野自由席の券が買えて気楽に球場で観戦することができたのを懐かしく思う。
このように友達からの影響ではあるが、すぐにカープファンになれたのは小さい頃、野球を父と観戦していたからだと思う。
野球はなかなかルールが難しいスポーツのうちの一つではあると思うが、小さい頃の野球観戦の経験からルールをすぐに思い出すことができた。
それがあってこそ、カープの試合観戦がすぐに楽しめたのだと思う。
人生ってどんなことが役に立つのが分からない。
そのおかげで、2016年からのカープ3連覇という大きな喜びを味わうことができた。
弱いカープを応援することも決して嫌なことではないが、やっぱり勝てれば嬉しい。
夢見心地の3年間であった。(3回とも日本シリーズはあっさり負けたが)
その後少し低迷しているものの、今はこれからブレイクしそうな若手がたくさんいるので希望がもてる。
まるで3連覇する前の数年間のようだ。
むしろその頃よりも将来有望な選手が多そうなほどである。
去年もそうだったが、今年もルーキーが何人かいきなり一軍で活躍しているのも嬉しい。
さすがカープのスカウト陣である。ドラフト戦略がうまいカープが戻ってきた。
今日からセパ交流戦も始まり、今後もカープの選手たちの活躍から目が離せない。
このような私の野球観戦好きのきっかけを作った長嶋茂雄好きの父はといえば、巨人はおろか野球にさえ、もうまったく興味を失っている。
プロ野球選手の名前は、きっと大谷選手くらいしか知らないんじゃないかというくらい無関心だ。
その代わり50歳を過ぎて転勤で川崎に住むようになってから、なぜかそれまでほとんど興味のなかったサッカーに強い関心を示し、川崎フロンターレのサポーターとなった。
ユニフォームを何着も書い、年間シートまで購入するほどの熱の入りようだった。うちの父は基本的に自分の娯楽にお金を使わず、娯楽にお金をかけることを罪悪とすら思っているようなふしさえある。
そんな父が決して安くないレプリカユニフォームをたくさん買い、年間シートまで購入していることに驚いた。
ほんと人生って分からないものだなとつくづく思う。
私も50歳、60歳と年を重ねていくうちに、今は興味のないスポーツに夢中になっているかもしれないなんて考えると、ちょっと楽しいような不思議な気分になってくる。
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