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とても面白い短編

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#恋愛小説

きっと僕らはこのままで

きっと僕らはこのままで

 彼女の首筋にはパズルのタトゥーがある。

正方形の、右側が丸く切り取られて凹んでいる。

「このパズルに当てはまる人を探しているの」

夜の八時頃。街の中心で食事を済ませた後、静かな場所を求め行く先を決めないまま歩いていた時、彼女はそう呟いた。

僕の視線に気が付いたのだろう。その欠けている穴に見惚れていたのが恐らくわかったのだ。それは彼女の白く透き通った肌の上では違和感がある、いびつなデザイン

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骨朽ちるまで 後

骨朽ちるまで 後

翌日、私は機械的に春人君の家へと向かった。
「灯里ちゃん、いらっしゃい」
いつも通り、お母さんが迎えてくれる。
笑顔を作ってくれているのを、ひどく痛く感じた。
お母さんの目元には暗くくまが出来ていて、きっとなかったはずのしわが増えている。
どれだけ眠れていないのかがわかってしまう。
「そのまんまにしてあるから。灯里ちゃんなら、きっと春人も許してくれるかなって。私はなんだか、まだ部屋に入れないのよ」

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