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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年4月の記事一覧

【第2部18章】ある旅路の終わり (16/16)【継承】

【第2部18章】ある旅路の終わり (16/16)【継承】

【目次】

【大樹】←

「死ぬ気か!? 『伯爵』ッ!!」

「はは……ようやく、そのふたつ名で呼んでくれたかね……これで、思い残すことは……ない……」

「この程度で、貸しを返したつもりかッ!?」

 穏やかに人生の幕を引こうとする満身創痍の伊達男に対して、アサイラは必死に声をかける。

 黒髪の青年はかつて、どこにあるかも知れない故郷を探して、あてのない探索行を続けていた。手がかりは『蒼い星』

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【第2部18章】ある旅路の終わり (15/16)【大樹】

【第2部18章】ある旅路の終わり (15/16)【大樹】

【目次】

【再誕】←

「これは……?」

 双眸を見開いたアサイラは、自分の目を疑った。幻影の続きを見ているのかと思った。

 先刻まで自分が立っていた、闇に沈む次元世界<パラダイム>の残骸とは似ても似つかぬ光景が広がっている。

 風にそよぐ木の葉のヴェール越しに、青く澄んだ空が見え、のどかに白い雲が浮かんでいる。

 たわむれあう純白の生き物の群れが、空を駆けていく。鳥かと思ったが、違う。

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【第2部18章】ある旅路の終わり (14/16)【再誕】

【第2部18章】ある旅路の終わり (14/16)【再誕】

【目次】

【帰還】←

「ヒゲ貴族……おまえは一体、なにをしようとしているのか……?」

 アサイラは、『伯爵』に問う。害意のたぐいは、感じない。しかし、ただならぬことを為そうとしていることだけは、わかる。

「なにをするか……それを、これから、お見せするのだよ……おそらく、再演はない。興味があるならば、しっかりと目に焼きつけておきたまえ……」

 満身創痍の伊達男は背筋を正し、大きく深呼吸する

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【第2部18章】ある旅路の終わり (13/16)【帰還】

【第2部18章】ある旅路の終わり (13/16)【帰還】

【目次】

【血潮】←

「グヌ……ッ」

 アサイラは、額に浮いた汗を手の甲でぬぐう。

 どれくらいの時間、どれほどの距離を歩いただろうか。太陽も月も失われた次元世界<パラダイム>の残骸では、時間感覚もあいまいになる。

「ふむ……だいじょうぶかね……?」

 黒髪の青年に身をあずけ、ほとんど引きずられるような状態の『伯爵』が言葉を発する。ぜえぜえ、と荒く浅い呼吸音が聞こえる。アサイラは、声の

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【第2部18章】ある旅路の終わり (12/16)【血潮】

【第2部18章】ある旅路の終わり (12/16)【血潮】

【目次】

【足音】←

「どうせ追いかけても、足止めされる……それなら、ここからしとめる、か!」

 自分の身長の3倍近い長さはある石柱を抱えたまま、その場でアサイラはハンマー投げの選手のごとく回転を始める。

 突然、眼前に現れた質量体の竜巻を『伯爵』は唖然として見あげつつも、黒髪の青年の思惑を理解する。重力波測定ゴーグルを、精密観測モードに切り替える。

 ぐんぐんと回転速度を増していくアサ

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【第2部18章】ある旅路の終わり (11/16)【足音】

【第2部18章】ある旅路の終わり (11/16)【足音】

【目次】

【誤断】←

「こんな地獄の底までやってくる物好きは、どこのどいつだ!? こっちは取りこみ中だ、これがな!!」

 トゥッチは悪態をつくと、銃をかまえようとして弾切れしたのを思いだし、両の拳を身構える。コーンロウヘアの征騎士の狼狽を見るだに、グラトニアの関係者が来たわけではなさそうだ。

──カツ、カツ、カツ。

 片手で崖からぶら下がった状態ながら『伯爵』が耳を澄ますと、ゆっくりとこ

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【第2部18章】ある旅路の終わり (10/16)【誤断】

【第2部18章】ある旅路の終わり (10/16)【誤断】

【目次】

【殴打】←

(いまのトゥッチの拳……銃弾は見あたらなかった……ッ!)

 質量体によって真横方向へ身体をはね飛ばされながら、いましがた喰らった一撃について『伯爵』は思案する。

 コーンロウヘアの男の転移律<シフターズ・エフェクト>は、銃弾を石柱に変じるもの……その判断に、瑕疵があったか。

 満身創痍の伊達男の肉体が地面にバウンドし、ごろごろと重力の沼へと向かって転がっていく。踏み

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【第2部18章】ある旅路の終わり (9/16)【殴打】

【第2部18章】ある旅路の終わり (9/16)【殴打】

【目次】

【砕牙】←

「ふむ……我輩も、年をとったということかね。いや……そんなことは、あるまいよ。まだまだ、捨てたものではないぞ……」

 見るからに強がりとわかる軽口をぶつぶつつぶやきながら、『伯爵』は足を動かす。めまいがひどい。気を紛らせなければ、いまにも失神してしまいそうだ。

「く……っ。やはり、我輩には……精神論は、似合わない、かね……」

 三歩、進んだところで満身創痍の伊達男の

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【第2部18章】ある旅路の終わり (8/16)【砕牙】

【第2部18章】ある旅路の終わり (8/16)【砕牙】

【目次】

【伐倒】←

「そろそろ、こちらからチェックメイトをしかけさせてもらおうとするかね……トゥッチ!」

 石柱が倒れ、コーンロウヘアの征騎士が宙を舞うなか、即座に『伯爵』はスプリントを開始する。壮年の紳士を押しつぶそうと落下してきた石柱たちが、背後で地面へ突き刺さる。

「このまま、重力の沼へと落ちてくれれば手間が省けるのだがッ!」

 走りながら、『伯爵』は重力波観測ゴーグルのデータを

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【第2部18章】ある旅路の終わり (7/16)【伐倒】

【第2部18章】ある旅路の終わり (7/16)【伐倒】

【目次】

【抜刀】←

──ズウゥ……ンッ。

 トゥッチが後者から落とした無数の石柱が、土煙を巻き起こしながら、枯死した樹々のごとく地面へと突き刺さる。

「く……ッ!」

 重力波観測ゴーグルからもたらされる情報と、自身の戦闘経験をもとに、『伯爵』は石柱の落下地点を予測し、紙一重のすきまに位置とることでどうにか下敷きをまぬがれる。

 引力の乱気流が土煙を引き裂き、すぐに視界は晴れる。石柱の

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【第2部18章】ある旅路の終わり (6/16)【抜刀】

【第2部18章】ある旅路の終わり (6/16)【抜刀】

【目次】

【軽蔑】←

「どこまでもムカつくおじんだ、これがな……あのときのことを、思い出させやがってッ!!」

「ふむ。貴公にとって、失敗は最良の教師とはなりえないのかね?」

「負け組<ルーザー>に説教されるいわれはねえーッ! そう言うおたくは、どうするつもりだ!? このまま走れば3秒後には滑落死だ、これがなァ!!」

『伯爵』とトゥッチが対峙する足場は細く、幅は10メートルあるかないかだ。

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【第2部18章】ある旅路の終わり (5/16)【軽蔑】

【第2部18章】ある旅路の終わり (5/16)【軽蔑】

【目次】

【悪縁】←

「おじん、というのは我輩のことかね。半年ぶりに再会したセフィロト社の同僚に対する呼び方としては、少々いかがなものか……以前のように『伯爵』と呼んでもらえないか?」

「おたくのような負け組<ルーザー>は、おじんで十分だ、これがな」

「フリーランス、と呼んでくれたまえ。存外、我輩の性にあっているよ」

 けたけたと笑いながらあざけりの表情を隠そうともしないトゥッチに対して

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【第2部18章】ある旅路の終わり (4/16)【悪縁】

【第2部18章】ある旅路の終わり (4/16)【悪縁】

【目次】

【業物】←

 黒い天上には、ガスにかすんだ星々のまたたきが見える。その下には、黒い沼状のよどみに浮かぶように、岩石質の足場が細く長く、頼りなく伸びている。

 闇を引き裂くように緑色の光の円が生じ、やがて輝く粒となって消える。岩石質の足場のうえに、忽然と『伯爵』の姿が現れる。

 パーソナルゲートをくぐって『伯爵』が転移<シフト>した現在地点は、次元世界<パラダイム>ではない。破壊さ

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【第2部18章】ある旅路の終わり (3/16)【業物】

【第2部18章】ある旅路の終わり (3/16)【業物】

【目次】

【棲家】←

「ふむ……これは、なかなかの業物ではないかね?」

 憮然とするリンカを後目に、『伯爵』は鞘から刃を抜き、刀身を確かめる。わずかに田虫色がかった輝きを放つ磨き抜かれた鋼をまえに、思わず目を細める。

「かつてセフィロト社内で、導子工学によってイクサヶ原の『龍剣』を再現しようとしたプロジェクトがあってね。そのときのデータをもとに、リンカくんに鍛造を頼んだ」

 口元で手を組

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