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デモ、新型コロナウイルスも香港で営業を続ける 大丸ラーメンさん

アジアのみならず欧州や米国でも急激に感染が広がる新型コロナウイルス。いっぽう新たな感染者数が下降傾向となりつつある中国。震源地である武漢から900キロ以上(東京と福岡間程度)離れている香港にて2018年7月から「大丸ラーメン」を営む村上さんに現在の状況についてお話をお伺いしました。(インタビュー実施日2020年3月16日)

でん票くん:いつもでん票くんをご利用いただきましてありがとうございます。今日は香港の現在について、お店の状況などお話を聞かせてください。まず、村上さんのこと、お店のことについて教えてください。

村上さん:私、香港に住んで7年半になります。お店をオープンしたのは2018年7月です。開店から1年半くらいになります。もともとは10年くらい高級ホテルの内装設計をやっていました。香港で日本の食の需要があるかと思って、やってみたくて大丸ラーメンを開くことにしました。

でん票くん:日本でもともとラーメン屋さんをやっていたわけではなく、しかも設計のお仕事から、いきなり香港でラーメン屋さんをはじめられたんですね。

村上さん:はい。

でん票くん:面白いですね。私はてっきり、日本でラーメン店を複数展開した後に、これからはアジアだ!という感じで香港に出店されたのかと考えていました。香港には日本式のラーメン屋さんはどれくらいあるのでしょうか?

村上さん:結構あります。大手の例えば一風堂さんや最近だと東京のAFURIさんが開店したばかりです。ほかには香港の企業が日本の有名なラーメン店を誘致して展開しているようなお店もあります。僕のような個人でやっているラーメン屋さんは少ないですね。

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でん票くん:そうなんですね。村上さんのお店は席数が12席だったかと思いますが、スタッフさんは何名いらっしゃるんですか?

村上さん:スタッフは5人です。基本的には3人でシフトを組んでいます。

でん票くん:村上さんも現場で調理をされているのですか?

村上さん:はい。

でん票くん:今日村上さんにお話をお伺いする前に、在香港日本国総領事館のウエブで香港の状況について確認していました。1月末の春節休暇以降、今日現在も公務員や一部の会社員の方の自宅勤務、小中学校等の休校が続いているようです。現在はどのような感じですか?

村上さん:今もそのような状況は続いています。公務員だけでなく銀行員など多くの方が自宅勤務になっていて、通勤する人も圧倒的に少なくなっています。

付け加えると、今回の肺炎の前に、昨年の6月からのデモンストレーションがありましたよね。あのデモで飲食店は大きな影響を受け、お店もたくさん潰れたりもしていました。観光地でデモが起こっていたので、観光客の多いエリアのお店は、そもそもお店すら開けれないような状況でした。

香港はそういう意味で混乱が長期化していて踏んだり蹴ったりという感じです。

でん票くん:村上さんのお店はデモの影響はあったんですか?デモのニュースを日本で見ていた時は、観光客だけでなく市民生活も影響がありそうでした。お店をはじめて1年ほどでいきなり想定外の事態ですよね。

Mさん:うちがラッキーだったのは、お店の場所が観光地ではかったので、直接的な影響は受けませんでした。お店の前に大手銀行の支店があったり、高級住宅街なども近く、オフィスワーカーや近隣住民など基本的にローカルなお客さんが多かったので。

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でん票くん:観光地で観光客相手ではなく、香港のローカルの方を対象にされているんですね。それでは現在の香港の様子はいかがでしょうか。

働く方の多くがリモートワークを強いられ、子供たちの学校もまだ休校中とのことですが、そうしますと1月下旬の春節からほぼ2か月ずっとそのような状況が続いているということですか?

村上さん:そうです。ここ2週間くらいは、みんな少し慣れてきたのか、退屈してきたのかわからないですが、外にでる人が増えてきています。ちょっと活気がでてきたかなと感じます。

でん票くん:1月の春節以降も、村上さんのお店はずっと営業されていたんですか?売上の状況などいかがですか?

村上さん:はい、ずっと開けていました。売上はよい時と比べる週末で20%、平日だと30から40%ほど落ちている感じです。

でん票くん:だいぶ影響が出ていますね。

村上さん:スタッフ数は減らず、みなで均等に休みを増やすなどして対応しています。何とか赤字にはならず営業しています。

でん票くん:それだけ売上に影響があると、同じやり方では厳しいですものね。世界的に見ても飲食店などの営業禁止措置なども出ています。香港では飲食店の営業は継続できていますが、売上的にはかなり打撃を受けている。その点、政府などからのサポートや支援などはあるのでしょうか

村上さん:デモの際は一か月で300店舗閉鎖に追い込まれた事もあり、経済に大きな影響を与えてました。そんな状況を憂慮して香港一の大富豪 李嘉誠氏が何百億と寄付して、香港中の中小企業(飲食、リテール)に1店舗当たり3万香港ドル(50万円程)支給してくださいました。海外のお金持ちは心意気が違いますよね。

今回の新型肺炎でも経済に大打撃を与えているので、香港政府が中小企業に1店舗当たり8万香港ドル(100万円程)の支援を行うと発表して、今応募を受け付けている所です。

現在は飲食店の営業停止はありません。映画館とゴルフ場は一時期閉鎖しておりましたが、現在では営業再開しています。

でん票くん:ありがたい支援ですね。確かに日本だと大富豪が個人的にそれほどの寄付をして直接支援は今までないですし、これからも・・・ですね。新型コロナウイルスに関連して、お店のほうで気をつけていることはありますか?

村上さん:一番気を付けるのは衛生面です。もちろんマスクもそうですし、外出した時には手洗い、うがいと目を洗うようにしています。

来店されるお客さんももちろんマスク付けてますし、自分たちで消毒液を持ち歩いて、お店に着いたらまず除菌して、というお客さんが多いです。半分くらい以上の方が消毒液などを持ち歩いています。

でん票くん:ほかに何か気を付けていることはありますか。

村上さん:お店によっては、お店の前で体温測ったりするところも結構ありますが、そこまではしていないです。

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でん票くん:日本だと、まだそこまで想像がつかないです。今後の香港の状況についてどのようにお考えですか?香港では4月20日頃まで学校の休校が決まっているようですが。

村上さん:(そのような状態が)まだ延びるような気がしています。

でん票くん:現在のような落ち着いてきている香港でも、そのように感じますか?自宅勤務ではない方々も多いと思いますし、出歩く方も少し増えているということでした。街の中の様子はどのような感じなのでしょうか。

村上さん:外を歩くときは必ずマスクをしています。99%くらいの方がマスクをしていると思います。マスクをしていないと変な目で見られるくらいです。笑 マスクなしだとバスにも乗れないくらいですから。

でん票くん:へ~!外にいる時は、食事をするとき以外マスクを外さないような感じなんですね。このような状況がこの先4月中旬、下旬ごろまで続くように感じていらっしゃるんでしょうか。

村上さん:そうですね。もしかするともっと延びるような気もしています。香港はSARSも経験していてその時の収束にかかった時間を考えると、今回もいきなり急によくなるように思えないので。

今回の件はピンチですが、逆にこの逆境でどうやったら売り上げを伸ばせるか楽しもうかと思ってます。悲観してても流れる時間は同じなので、どうすれば売り上げアップ出来るか自問自答しております。


お客様を飽きさせない為に何か新しい味を提供出来ないか?
売り上げの大部分に貢献してくださってるのはリピーターの方々。どうやったらその人達を喜ばせる事が出来るか?
今提供してる飲料もこのままで良いのか?少しでも興味を持ってもらえるものは無いだろうか?
お客様目線から見てお店は綺麗か?掃除は行き届いてるか?
入口の暖簾の色。第一印象で入り辛い印象を与えてしまってないか?

このようなことを考え続け、そこで出た答えをこれから実行しようとしている段階です。例えばリピーターの方を増やす為に、オリジナルポイントカードを用意して、思わず集めたくなるようなシールを作って見よう。
ポイントが〇個貯まればラーメン一杯無料にしてみよう。と色々と試せる部分は試そうと思ってます。

ニュースでは暗い話題ばかりなので、如何に楽しく過ごせるかを考えております。従業員達も暗い様なお店には誰も来ても嬉しくないので、明るく過ごして少しでもこの状況を忘れて貰えたらと思ってます。

でん票くん:素晴らしい姿勢ですね。日本でも苦労をされている多くの経営者の方に届けたいメッセージです。

ところで、お店の営業とは直接関係ありませんが、日本ではまだマスクが手に入りにくかったりトイレットペーパーが一時的になくなったり、消毒用のアルコールも買えないよう状況が続いています。香港でのほうはいかがですか?

村上さん:今ではもう普通に買えるようになりました。ただ値段はめちゃくちゃ高いですけど。笑

でん票くん:以前より高くなっているんですねぇ! 今日はお忙しい中、お時間いただきましてありがとうございました。また状況見ながらお話をお伺いさせてください。本日はありがとうございました。


営業の合間をぬって、香港の大丸ラーメンの店主村上さんに30分ほどお話をお伺いいたしました。

香港の人口は739万人。(人口で言えば埼玉県とほぼ同じです。)香港での新型コロナウイルスの感染者は3月15日時点で151人です。

2003年のSARSの経験を活かし、香港区でも積極的な対応を行っている様子がうかがえます。感染経路の把握など含めて調査も徹底し、情報開示に努めているようで、このような取り組みが市民のより積極的な防衛の姿勢(例えばマウスの着用や消毒液の携行など)に繋がっているようにも感じました。

また中国内における最近の感染者数増加もかなり鈍化しており、中国内においての新型コロナウイルスの感染は収束が近いと考えていましたが、武漢から距離もある香港でも、まだまだコロナ以前の普段の生活とは程遠いことがわかりました。

経営者であり現場にも立つ村上さんのお話から、楽観的に短期での収束を考えず、長期的な視点で、臨まれていることをお話から感じました。

日本国内の飲食店様も、より厳しい状況、収束まで長期化を想定し、気を引き締めて経営に臨むことが求められそうです。

インタビューにご協力いただきました村上さんのお店、大丸ラーメンさんはこちらです。コロナ騒動が収束して、香港に気軽に行ける日が戻ったらぜひ足をお運びください!


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