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金木犀は嫌い

いい匂いだよね、この匂い大好き

金木犀、いいよね、私金木犀の香水買ったんだ

見た目もさ、濃い緑色の葉っぱに小さいオレンジの花がついていて

私も、金木犀好き

今年もこんな言葉を何度聞いただろうか

そしてその度に何度うんざりしただろうか

私は金木犀が嫌いだ

小学生の頃、友達がいなかった私の昼休みは毎日が冒険だった

今日は池の方に行ってみようかな

今日は杏子の実が落ちているか見にいこうかな

「今日は、秋のこの匂いの正体をみつけよう」

私はこの匂いが大好きだった

この匂い、いい匂い、大好き

みんなは知ってるのかな、この匂い

私だけかな、気付いてるの

この匂いはなんの匂いなんだろう、秋の匂いかな

でも、テニスコートの裏は秋の匂いが濃いから

そこにあるかもしれない

秋の匂いがそこにあったら、明日も行こう

毎日行こう

そして、本当に毎日行った。

こんなに素敵な秋の匂い、こんなに可愛かったんだ。

私だけの、秋の居場所。

大好きだった。

それなのに、みんな、知ってたんだね。

簡単に言わないでよ、金木犀好きだなんて。

あれは、秋の匂いだよ。

簡単に言わないでよ、見た目が好きだなんて。

私が最初に見つけたんだよ。

みんなが知ってる金木犀、私は嫌い。

少しずつ乾燥してきた気持ちいい空気と、秋の匂いを吸い込んで、あぁ、やっぱり大好きだと思う。

秋の匂い、大好き。